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第28章 勇者が誘う、最後の舞台
第430話 逃げることは許さない
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「なあ……ゼロラ。本当にこの国を出ていくのか……?」
「すまない……イトーさん。ユメのこともあるが、ミライのためにも今はこうするしかない……」
"壁周り"の騒動から逃げ出した俺は、住み慣れた宿場村の宿の自室で、荷物の支度をしていた。
ミライと再会してから久しぶりに戻ってきたが、一通り生活に必要なものは残っている。
俺はそれらを鞄に詰め込み、旅立つ準備をしていた。
――俺の素性がバレてしまった以上、ミライの身が危ない。
ユメが眠るこの国を離れるのは名残惜しいが、俺はミライを連れてこの国を離れるしかない。
そうしなければ、ミライはこれからも虐げられてしまう。
イトーさんも俺を引き留めようとするが、俺にできることなんて、これぐらいしか――
「おやおや。ボクじゃなくて、ゼロラ殿が旅立つ準備をするとはね」
――そんな俺の部屋に、いつもの遠慮のない声が割り込んできた。
「リョウ……。何の用だ?」
「『何の用だ』とは、不愛想だね。こんな旅支度をする前に、投げ出したことをやり終えるのが先じゃないかな?」
『投げ出したこと』だと?
リョウが何を言いたいのか俺には分からなかったが、当のリョウ本人は一人で話を進め始めた。
「イトー殿。すまないけど、ミライちゃんを連れて部屋の外で待っててくれないかな?」
「……分かった。お前さんにも考えがあるようだ。俺も素直に従うとするよ」
「おじいちゃーん……」
リョウに言われた通り、イトーさんは今だに怯えているミライを抱きかかえて、部屋の外へと出て行った。
どうやらリョウは、俺と二人で話をしたいらしい――
「ゼロラ殿。君にはこの国を旅立つ前に、"さっきできなかったこと"をやり終えてもらうよ」
「"さっきできなかったこと"……? 一体、何のことを言ってるんだ?」
「……マカロンへの告白だよ」
リョウの願いは明快だった。
確かにさっきのあの場面、本来俺はマカロンに告白するつもりだった。
『これからも俺とミライの傍にいてほしい』
――その思いを伝えようとした矢先に、俺の正体が【伝説の魔王】だと知れ渡ってしまった。
マカロンにこの思いを告白することはできなかったが、それも今となっては叶わない話だ――
「俺が今更この状況でマカロンに告白しても、あいつを困らせるだけだ。俺は……あいつに迷惑を掛けたくない」
「……逃げるのかな?」
そんな俺の考えに、リョウは顔をしかめながら答えた。
普段のリョウなら絶対に見せない、怒りのこもった表情がよく分かる。
「……ああ、逃げる。それが俺とミライ、そして……マカロンのために――」
パシンッ!
――俺が全て言い終える前に、頬に鋭い痛みが走った。
「見損なったよ、ゼロラ殿。君のその行為は、ボクの一番の親友を傷つけるものだ……!」
痛みの原因となったのは、リョウのビンタだった。
リョウは俺を睨みつけ、明確な怒りを露にしてきた。
「……分かってる。俺だって、本当はマカロンにちゃんとした"答え"を出したい!」
「なら、ちゃんと伝えなよ! こんな中途半端な終わり方……ボクは絶対に許さない!」
「だがな! 俺が【伝説の魔王】だと知れ渡った以上、俺が傍にいてもあいつには迷惑なだけだ! 俺はあいつを愛してる! だからこれ以上、俺はあいつの邪魔になりたくない!」
俺とリョウは激しく口論を重ねた。
こいつとは出会った時からいたずら程度の喧嘩はしていたが、こうやって中身の伴った口喧嘩をするのは初めてだ。
リョウはそれだけマカロンの気持ちを考えている。
その気持ちは俺にも痛いほど分かる。
それでも俺にはできない。
こんな事態に陥ってしまっては、告白どころでは――
「世情を気にしてるのかな!? だったらそれこそ、君自身が"世の中そのものを変えよう"とは、考えないのかな!?」
「無茶なことを言うな! 俺一人に、そんなことができるわけないだろ!」
「随分馬鹿なことを言うものだね! 君にならできるじゃないか――」
俺との口論の最中、リョウは息を吸い込んで大声で主張してきた――
「このルクガイア王国の改革は、君抜きではできなかったんだよ!? 君は実際に、"世の中を変えてきた"じゃないか!!」
――そのリョウの渾身の主張を聞いて、俺は固まってしまった。
「確かにこの国の改革は、君一人の功績じゃない! それでも君は皆と一緒に成しえたんだ! それもこれも心のどこかで、"ミライちゃんのため"を思ってやったことじゃないのかな!? ボクが知ってるゼロラ殿は、"やりもしないで諦める"ような人間じゃない!!」
リョウの言葉は俺に重くのしかかる。
確かに俺は"世の中を変える"ことを、成し遂げてここまで来たのだ。
それはミライのため、ユメの遺志を継ぐため――
記憶を失った俺だったが、それでも心のどこかに残っていたその思いで、俺は改革の道を歩んできた。
やっと再会できたミライを手放すまいと、俺は臆病になってたみたいだな。
こんな風に逃げ続けてたら、俺はあの世でユメに顔向けできない。
「……すまなかった、リョウ。お前のおかげで、俺も目が覚めた」
「気にしないでくれ。ボクも君の事情も知りながら、あえてキツイことを言わせてもらった。それにもう一つ。このことだけは忘れないでほしい――」
リョウは再び息を吸い込み、今度は穏やかな声でその気持ちを伝えてくれた。
「君は一人じゃない。ボクも含めて、頼れる仲間は大勢いる。そのことを忘れないでほしい」
リョウのその一言は、とても暖かかった。
俺には味方してくれる人間が大勢いる。
かつて【伝説の魔王】と呼ばれていた俺が、こうして人の世で生きることを認めてくれる仲間がいる。
――もう一度、マカロンへしっかり伝えよう。
俺とミライとマカロン。
三人で新しい未来を築くという、俺の新たな願いのためにも――
「ありがとうな、リョウ」
「礼には及ばないよ。ボクは先に王宮へ帰るけど、逃げだしたら許さないからね?」
「ああ、分かってる。俺はもう……逃げない」
「クフフフ。それでこそ、ボクのよく知るゼロラ殿だ」
リョウはいつもの個性的な笑い声を出した後、テレポートで俺の前から消えていった。
【伝説の魔王】が、魔王だったことを恐れて逃げ出す……か――
よくよく考えれば、何とも滑稽な話だな。
だが、そんな愚行ももうやめだ。
俺は俺が正しいと思う行いをする。
ユメが望んだ世界の実現。ミライが生きられる世の中を作る。
これからまた一波乱あるだろうが、俺はもう一度戦ってやるさ――
「すまない……イトーさん。ユメのこともあるが、ミライのためにも今はこうするしかない……」
"壁周り"の騒動から逃げ出した俺は、住み慣れた宿場村の宿の自室で、荷物の支度をしていた。
ミライと再会してから久しぶりに戻ってきたが、一通り生活に必要なものは残っている。
俺はそれらを鞄に詰め込み、旅立つ準備をしていた。
――俺の素性がバレてしまった以上、ミライの身が危ない。
ユメが眠るこの国を離れるのは名残惜しいが、俺はミライを連れてこの国を離れるしかない。
そうしなければ、ミライはこれからも虐げられてしまう。
イトーさんも俺を引き留めようとするが、俺にできることなんて、これぐらいしか――
「おやおや。ボクじゃなくて、ゼロラ殿が旅立つ準備をするとはね」
――そんな俺の部屋に、いつもの遠慮のない声が割り込んできた。
「リョウ……。何の用だ?」
「『何の用だ』とは、不愛想だね。こんな旅支度をする前に、投げ出したことをやり終えるのが先じゃないかな?」
『投げ出したこと』だと?
リョウが何を言いたいのか俺には分からなかったが、当のリョウ本人は一人で話を進め始めた。
「イトー殿。すまないけど、ミライちゃんを連れて部屋の外で待っててくれないかな?」
「……分かった。お前さんにも考えがあるようだ。俺も素直に従うとするよ」
「おじいちゃーん……」
リョウに言われた通り、イトーさんは今だに怯えているミライを抱きかかえて、部屋の外へと出て行った。
どうやらリョウは、俺と二人で話をしたいらしい――
「ゼロラ殿。君にはこの国を旅立つ前に、"さっきできなかったこと"をやり終えてもらうよ」
「"さっきできなかったこと"……? 一体、何のことを言ってるんだ?」
「……マカロンへの告白だよ」
リョウの願いは明快だった。
確かにさっきのあの場面、本来俺はマカロンに告白するつもりだった。
『これからも俺とミライの傍にいてほしい』
――その思いを伝えようとした矢先に、俺の正体が【伝説の魔王】だと知れ渡ってしまった。
マカロンにこの思いを告白することはできなかったが、それも今となっては叶わない話だ――
「俺が今更この状況でマカロンに告白しても、あいつを困らせるだけだ。俺は……あいつに迷惑を掛けたくない」
「……逃げるのかな?」
そんな俺の考えに、リョウは顔をしかめながら答えた。
普段のリョウなら絶対に見せない、怒りのこもった表情がよく分かる。
「……ああ、逃げる。それが俺とミライ、そして……マカロンのために――」
パシンッ!
――俺が全て言い終える前に、頬に鋭い痛みが走った。
「見損なったよ、ゼロラ殿。君のその行為は、ボクの一番の親友を傷つけるものだ……!」
痛みの原因となったのは、リョウのビンタだった。
リョウは俺を睨みつけ、明確な怒りを露にしてきた。
「……分かってる。俺だって、本当はマカロンにちゃんとした"答え"を出したい!」
「なら、ちゃんと伝えなよ! こんな中途半端な終わり方……ボクは絶対に許さない!」
「だがな! 俺が【伝説の魔王】だと知れ渡った以上、俺が傍にいてもあいつには迷惑なだけだ! 俺はあいつを愛してる! だからこれ以上、俺はあいつの邪魔になりたくない!」
俺とリョウは激しく口論を重ねた。
こいつとは出会った時からいたずら程度の喧嘩はしていたが、こうやって中身の伴った口喧嘩をするのは初めてだ。
リョウはそれだけマカロンの気持ちを考えている。
その気持ちは俺にも痛いほど分かる。
それでも俺にはできない。
こんな事態に陥ってしまっては、告白どころでは――
「世情を気にしてるのかな!? だったらそれこそ、君自身が"世の中そのものを変えよう"とは、考えないのかな!?」
「無茶なことを言うな! 俺一人に、そんなことができるわけないだろ!」
「随分馬鹿なことを言うものだね! 君にならできるじゃないか――」
俺との口論の最中、リョウは息を吸い込んで大声で主張してきた――
「このルクガイア王国の改革は、君抜きではできなかったんだよ!? 君は実際に、"世の中を変えてきた"じゃないか!!」
――そのリョウの渾身の主張を聞いて、俺は固まってしまった。
「確かにこの国の改革は、君一人の功績じゃない! それでも君は皆と一緒に成しえたんだ! それもこれも心のどこかで、"ミライちゃんのため"を思ってやったことじゃないのかな!? ボクが知ってるゼロラ殿は、"やりもしないで諦める"ような人間じゃない!!」
リョウの言葉は俺に重くのしかかる。
確かに俺は"世の中を変える"ことを、成し遂げてここまで来たのだ。
それはミライのため、ユメの遺志を継ぐため――
記憶を失った俺だったが、それでも心のどこかに残っていたその思いで、俺は改革の道を歩んできた。
やっと再会できたミライを手放すまいと、俺は臆病になってたみたいだな。
こんな風に逃げ続けてたら、俺はあの世でユメに顔向けできない。
「……すまなかった、リョウ。お前のおかげで、俺も目が覚めた」
「気にしないでくれ。ボクも君の事情も知りながら、あえてキツイことを言わせてもらった。それにもう一つ。このことだけは忘れないでほしい――」
リョウは再び息を吸い込み、今度は穏やかな声でその気持ちを伝えてくれた。
「君は一人じゃない。ボクも含めて、頼れる仲間は大勢いる。そのことを忘れないでほしい」
リョウのその一言は、とても暖かかった。
俺には味方してくれる人間が大勢いる。
かつて【伝説の魔王】と呼ばれていた俺が、こうして人の世で生きることを認めてくれる仲間がいる。
――もう一度、マカロンへしっかり伝えよう。
俺とミライとマカロン。
三人で新しい未来を築くという、俺の新たな願いのためにも――
「ありがとうな、リョウ」
「礼には及ばないよ。ボクは先に王宮へ帰るけど、逃げだしたら許さないからね?」
「ああ、分かってる。俺はもう……逃げない」
「クフフフ。それでこそ、ボクのよく知るゼロラ殿だ」
リョウはいつもの個性的な笑い声を出した後、テレポートで俺の前から消えていった。
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だが、そんな愚行ももうやめだ。
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