記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派

文字の大きさ
467 / 476
最終章 それが俺達の絆

第467話 最終決戦・【零限の不死鳥】③

しおりを挟む
「"虎"の力……? 一体何をするつもりだ?」
「見ていれば分かりますよ……!」

 ゼロラにラルフルの意図は読めなかったが、ラルフルは両手両足を広げ、大の字になる構えをとる。
 身に纏われた<緑色のオーラ>は一時的に静かに揺らめき、ラルフル自身も一度闘志を落ち着けるかのように目を閉じる。

 そんなラルフルの姿を、ゼロラは黙って見ていた。
 完全に隙だらけとなったラルフルだが、そこに攻撃をするような野暮な真似はしたくなかった。



 ラルフルが見せてくれる更なる高みのため、ゼロラは次の変化が来るまで待ち続けた。



「ハァアアア……。――ルゥアァアア!!」
「なっ!? ば、馬鹿な……!?」

 ラルフルが目を見開いて雄たけびを上げ、再びオーラを燃え上がらせる。



 だが、そのオーラは先程までの<緑色のオーラ>ではない。
 ラルフルの体から湧き上がるのは――<黄色のオーラ>。
 かつてゼロラがサイバラと戦った時に見たのと、同じものであった。

「スタイルチェンジ――<タイガーズ・イエロー>……とでも、言いましょうか」
「<タイガーズ・イエロー>か……。その技の詳細は、聞くまでもなさそうだ……!」

 ラルフルが<ダイガーズ・イエロー>と名付けた、"オーラの色を変える"技――
 その変化を見ただけで、ゼロラには理解できた。

 ラルフルはサイバラの能力をその身に纏わせている。
 オーラはそれを放つ者の能力により、その色を変える。
 今のラルフルは【虎殺しの暴虎】サイバラが使った、<パンクラチオン>のスタイルを取り込んでいた。

 別のスタイルを取り込み、オーラの色をも変える闘法――
 これもまた、ゼロラでさえできないことであった――



「さあ……行くぞぉおお!!」

 ラルフルの目はサイバラと同じ飢えた虎のような目つきへと変わり、ゼロラへと挑みかかる。
 先程までの<マーシャルアーツ>とは違い、完全な"パワー特化"の能力に変化させたラルフル。

 飛び上がってゼロラの頭上目がけ、組み合わせた両手を振り下ろす――



 バゴォオオン!!



「こ、このパワーは!?」

 ラルフルの攻撃を躱すことには成功したゼロラだったが、ラルフルの拳が直撃した地面を見て、その身を戦慄させる。



 地面には巨大な亀裂が走り、大きなクレーターが出来上がっていた。
 ラルフルのその小さな体からは想像できない、圧倒的なパワーから繰り出される破壊力――

 ゼロラも戦いの中で経験を積み、その経験を活かすことで己の実力を高めてはきた。
 だがラルフルは"経験した相手の力"そのものを、完璧なまでにコピーしていた。
 魔力こそないので、サイバラが使っていた<電撃肉体強化魔法>のような魔法は使えない。



 それでもラルフルは、サイバラの能力を<黄色のオーラ>と共に、ここに再現していた。



「お前は本当にすごい奴だよ。一度は魔力を失って地に落ちたのに、よくここまで舞い上がってきたもんだ……!」
「魔力を失ってなお強くあるのならば、それはゼロラさんだって同じことでしょう……!」

 サイバラと同じように構えるラルフルに、ゼロラは驚きながらも言葉を紡ぐ。
 改めてその目で確認できた、ラルフルという少年の驚異的な潜在能力――
 それに対抗すべき手段を、ゼロラはいくつかの選択肢の中から選びだした――



「オオォラァアアア!!」
「パワー勝負!? 今の自分に……勝てると思ってるのですかぁああ!!?」

 ――ゼロラが選んだ戦法は、ラルフルと同じパワー勝負。
 スピードで隙を突くこともできた。テクニックで捌くこともできた。
 そんな数ある選択肢の中から、ゼロラはあえてラルフルと同じ、"パワー勝負"という土俵を選んだ。

 それは自らとオーラを滾らせるレベルに到達した、ラルフルへの礼儀――
 自身でもできない、スタイルチェンジとオーラの変更を見せてくれた、ラルフルへの敬意――

 ――そんな気持ちを込めながら、ゼロラはラルフルとの力比べに挑む。

「ラルフルゥウウ!!」
「ゼロラァアア!!」


 ドゴンッ!! バゴォオンッ!!


 これまで以上に、一撃に重きを置いた殴り合い――
 ゼロラの纏う<灰色のオーラ>と、ラルフルの纏う<黄色のオーラ>が激しくぶつかり合う。


 ボゴォオ!!


「ゲホッ!? やるなぁああ!!」


 ドゴォオ!!


「カハァ!? 自分だってぇええ!!」

 お互いに拳を相手に叩きつけ合う、ノーガードでの殴り合い――

「ウオォオオ!!」
「ハアァアア!!」

 さらには組みかかった状態からの、力任せの投げ技合戦。
 <黄色のオーラ>に切り替えることでパワー特化に変更したラルフルだったが、ゼロラも負けていなかった。
 純粋なパワーはラルフルが上回っていたが、ゼロラとの体格差が壁となる。


 ズガァアアア!!


「ハァ、ハァ……! 今の自分のパワーでも……ゼロラさんは押し切れませんか……!」
「ハァ、ハァ……! それでも俺との体格差を、ここまで埋めてくるとは思ってなかったぜ……!」

 お互いに組み合ったまま、その体を地面へと叩きつけ合う。
 衝撃に耐えかねた双方が手を離し、立ち上がりながら互いの実力を改めて認め合う。

 パワー勝負は総じて互角。
 それでもラルフルにはまだ更なる攻め手が欲しかった。



「……では、次は"龍"の力をお見せしましょう……!」

 そしてラルフルはその一手を思いついた。
 再び目を瞑ると、大の字の態勢をとって一度<黄色のオーラ>を鎮めさせる――

「"龍"の力……。フッ、成程な。いいぜ……お前の更なる可能性! この俺に見せてくれぇ!!」

 ゼロラはラルフルの次の一手を理解した。
 理解した上で、ラルフルの準備が整うのをゼロラは待った。



 ラルフルが見せてくれる更なる可能性を、ゼロラも見てみたかった――



「ハァアアア……。――アルァアア!!」



 ラルフルが目を見開き雄たけびを上げると、そのオーラに再び変化が起こった。

 これまで纏っていた<黄色のオーラ>から<青色のオーラ>へと――

「スタイルチェンジ――<ドラゴンズ・ブルー>です……!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

処理中です...