17 / 39
8章
アレクシーの焦燥・ルシアの悩み
しおりを挟む
アレクシーは、王太子宮で静かに過ごしていた。それは、表向きのもので、心の内は焦燥を日々募らせていた。
アレクシーの当たって砕けろの精神は、華々しく砕けたといってよかった。
考えれば、父上の気持ちも分かる。番にして十二年慈しんできたオメガを、息子が運命の相手だから譲ってくれと言って、はいそうですかとはならないだろう。
しかし、諦める気持ちは皆無だった。どうしたらいいのか……。
焦燥を日々募らすアレクシーに、フランソワが新たな情報をもたらす。
「奥の宮から消えた⁈」
「ああ、多分どこかの離宮に隠されたんじゃないかな」
「離宮……どこだ?」
「かなり緘口令が厳しく敷かれているね。母上も知らないようだし」
「伯母上も……」
「母上から俺を通してお前に伝わるのを警戒しているからじゃないかな。母上も下手に関わりたくないと思っているみたいで、ルシア様の事はタブーになっている」
「じゃあ、どこへ行ったのか分からないのだな? 何とかできないか?」
「って、どうしても諦めないのか?」
「ああ、諦めない。忘れられないんだ」
フランソワは嘆息した。もう誰がなんと言えど、アレクシーは諦めないだろう。だったら、最後まで自分も見守るか、そう思った。
「わかったよ、お前の頑固さには負けたよ。簡単にはいかないから、時間はかかるけど、何とか探ってみるよ」
「ああ、お前には感謝するよ」
「お前に感謝されると、なんか気持ち悪いな」
「言ってろよ」
「ふふっ……で、お前はおとなしくしてろよ。その方がいい」
「ああ、俺もそう思っている。周囲には、俺は諦めておとなしくなったと思わせたい」
「それがいいね。母上にも、お前は諦めたと思うように働きかける。お前は、王妃様にもな」
今は闇雲に動いはいけない、時が過ぎるのを待つ、必要な布石を打ちながら。それがアレクシーの考えだったし、フランソワも同意した。
その後アレクシーは、ルシアのことなどなかったかのようにふるまった。
最初の頃は、訝しげに思う者もいたが、次第にそれが普通のことと思われるようになる。まさにアレクシーの狙い通りではあった。
一番安堵したのは、国王の側近達だった。国王と王太子の仲が良好なことは喜ばしい事だからだ。
国王フェリックスは、アレクシーの態度に安堵しつつも警戒は弱めなかった。ルシアは引き続き離宮に住まわせ、その事実も厳重に伏せられた。
やはり、重臣と言えどアレクシーの心の底は見えないが、フェリックスは、父親であるといえた。
ルシアの隠された離宮を突き止めることは難攻を極めた。それだけ国王の定めた緘口令の威力は大きかった。国王の力の大きさともいえた。
これほどの大きな存在に自分は対峙して、そして勝たねば運命の相手を番にできないのか? 慄く気持ちはあっても、引くことはできない。引いたら負けだ。負けることはできない。
アレクシー自身父王のことは、尊敬している。己もあのように立派な王になりたいと思っている。故に謀反とか、反逆することなど、一切考えていない。ただ、ルシアを番にしたい、それだけが望みだった。
ルシアは、今までにない体の奥の熱に悩まされていた。
離宮での生活自体は楽しいものだった。フェリックスも、奥の宮の時よりは間隔は空くが訪れてくれる。ルシアの発情も、把握して収めてくれる。
それなのに、体が熱い、体の奥が火照る。そして思い出すのは、ただ一度出会っただけのアレクシーだった。
最初の頃は、ルシアにとってアレクシーは、フェリックスの子供だった。それが段々とアレクシー単独になっていた。
番がいる身で他の男性を思うことにルシアは、一人慄いた。フェリックスに対する罪悪感は日ごとに高まる。
ルシアの心と体の状態は、運命の相手を求める本能からくるものだった。しかし、ルシアはそれを知らない。アレクシーが運命の相手との認識がなかった。
ルシアの悩みは、フェリックスに対する甘えとして発露された。
「兄上様、もうお帰りになるのですか?」
「ああ、今日は戻らねばならない。また来週は来るからな」
「昨日おいでになられたばかりなのに……」
そう言いながら抱きつくルシアに、フェリックスは嬉しいような困ったような気持ちになる。最近は度々こんなことがある。以前は聞き分けが良いルシアだった。時には我儘を言っても良いと思うくらいに。
何がルシアを変えた? そうすると、思い浮かぶのは運命の相手ということだった。フェリックスにとって、ルシアが運命の相手ではないという事実は弱みともいえた。
「どうした? もう一晩泊まって欲しいのか? よしよし分かった、もう一晩ここで過ごそう、それでよいな」
とびっきり甘い声で言うと、ルシアの抱きつく力も強まる。フェリックスはそのままルシアを抱き上げ寝室に連れて行く。
ルシアの心と体を満たしてやるのは、番たる己の役目。例え運命の相手と言えど、誰にも譲らない。
フェリックスは、圧倒的な力でルシアの体を攻め上げる。以前は優しく抱いていたが、今は激しさが増した。激しくルシアの体を貫くことで、運命と言う言葉を追い払うように……。
ルシアも、フェリックスの激しい攻めに翻弄されると、悩みをひと時忘れられる。自分は、この人の兄上様の者だと感じることで、フェリックスに対しての罪悪感も忘れられる。
アレクシーの当たって砕けろの精神は、華々しく砕けたといってよかった。
考えれば、父上の気持ちも分かる。番にして十二年慈しんできたオメガを、息子が運命の相手だから譲ってくれと言って、はいそうですかとはならないだろう。
しかし、諦める気持ちは皆無だった。どうしたらいいのか……。
焦燥を日々募らすアレクシーに、フランソワが新たな情報をもたらす。
「奥の宮から消えた⁈」
「ああ、多分どこかの離宮に隠されたんじゃないかな」
「離宮……どこだ?」
「かなり緘口令が厳しく敷かれているね。母上も知らないようだし」
「伯母上も……」
「母上から俺を通してお前に伝わるのを警戒しているからじゃないかな。母上も下手に関わりたくないと思っているみたいで、ルシア様の事はタブーになっている」
「じゃあ、どこへ行ったのか分からないのだな? 何とかできないか?」
「って、どうしても諦めないのか?」
「ああ、諦めない。忘れられないんだ」
フランソワは嘆息した。もう誰がなんと言えど、アレクシーは諦めないだろう。だったら、最後まで自分も見守るか、そう思った。
「わかったよ、お前の頑固さには負けたよ。簡単にはいかないから、時間はかかるけど、何とか探ってみるよ」
「ああ、お前には感謝するよ」
「お前に感謝されると、なんか気持ち悪いな」
「言ってろよ」
「ふふっ……で、お前はおとなしくしてろよ。その方がいい」
「ああ、俺もそう思っている。周囲には、俺は諦めておとなしくなったと思わせたい」
「それがいいね。母上にも、お前は諦めたと思うように働きかける。お前は、王妃様にもな」
今は闇雲に動いはいけない、時が過ぎるのを待つ、必要な布石を打ちながら。それがアレクシーの考えだったし、フランソワも同意した。
その後アレクシーは、ルシアのことなどなかったかのようにふるまった。
最初の頃は、訝しげに思う者もいたが、次第にそれが普通のことと思われるようになる。まさにアレクシーの狙い通りではあった。
一番安堵したのは、国王の側近達だった。国王と王太子の仲が良好なことは喜ばしい事だからだ。
国王フェリックスは、アレクシーの態度に安堵しつつも警戒は弱めなかった。ルシアは引き続き離宮に住まわせ、その事実も厳重に伏せられた。
やはり、重臣と言えどアレクシーの心の底は見えないが、フェリックスは、父親であるといえた。
ルシアの隠された離宮を突き止めることは難攻を極めた。それだけ国王の定めた緘口令の威力は大きかった。国王の力の大きさともいえた。
これほどの大きな存在に自分は対峙して、そして勝たねば運命の相手を番にできないのか? 慄く気持ちはあっても、引くことはできない。引いたら負けだ。負けることはできない。
アレクシー自身父王のことは、尊敬している。己もあのように立派な王になりたいと思っている。故に謀反とか、反逆することなど、一切考えていない。ただ、ルシアを番にしたい、それだけが望みだった。
ルシアは、今までにない体の奥の熱に悩まされていた。
離宮での生活自体は楽しいものだった。フェリックスも、奥の宮の時よりは間隔は空くが訪れてくれる。ルシアの発情も、把握して収めてくれる。
それなのに、体が熱い、体の奥が火照る。そして思い出すのは、ただ一度出会っただけのアレクシーだった。
最初の頃は、ルシアにとってアレクシーは、フェリックスの子供だった。それが段々とアレクシー単独になっていた。
番がいる身で他の男性を思うことにルシアは、一人慄いた。フェリックスに対する罪悪感は日ごとに高まる。
ルシアの心と体の状態は、運命の相手を求める本能からくるものだった。しかし、ルシアはそれを知らない。アレクシーが運命の相手との認識がなかった。
ルシアの悩みは、フェリックスに対する甘えとして発露された。
「兄上様、もうお帰りになるのですか?」
「ああ、今日は戻らねばならない。また来週は来るからな」
「昨日おいでになられたばかりなのに……」
そう言いながら抱きつくルシアに、フェリックスは嬉しいような困ったような気持ちになる。最近は度々こんなことがある。以前は聞き分けが良いルシアだった。時には我儘を言っても良いと思うくらいに。
何がルシアを変えた? そうすると、思い浮かぶのは運命の相手ということだった。フェリックスにとって、ルシアが運命の相手ではないという事実は弱みともいえた。
「どうした? もう一晩泊まって欲しいのか? よしよし分かった、もう一晩ここで過ごそう、それでよいな」
とびっきり甘い声で言うと、ルシアの抱きつく力も強まる。フェリックスはそのままルシアを抱き上げ寝室に連れて行く。
ルシアの心と体を満たしてやるのは、番たる己の役目。例え運命の相手と言えど、誰にも譲らない。
フェリックスは、圧倒的な力でルシアの体を攻め上げる。以前は優しく抱いていたが、今は激しさが増した。激しくルシアの体を貫くことで、運命と言う言葉を追い払うように……。
ルシアも、フェリックスの激しい攻めに翻弄されると、悩みをひと時忘れられる。自分は、この人の兄上様の者だと感じることで、フェリックスに対しての罪悪感も忘れられる。
127
あなたにおすすめの小説
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
カミサンオメガは番運がなさすぎる
ミミナガ
BL
医療の進歩により番関係を解消できるようになってから番解消回数により「噛み1(カミイチ)」「噛み2(カミニ)」と言われるようになった。
「噛み3(カミサン)」の経歴を持つオメガの満(みつる)は人生に疲れていた。
ある日、ふらりと迷い込んだ古びた神社で不思議な体験をすることとなった。
※オメガバースの基本設定の説明は特に入れていません。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる