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7章 医師として
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蒼は、雪哉から彰久の首席卒業と、お祝いの宴への招待を告げられた。
「家族だけでする内輪のものなんだ。君は家族も同然だから一緒に祝って欲しい。後期研修で忙しいのは分かってるけど、出来れば来て欲しいんだ」
「あき君頑張ったんですね、あの名門校で首席卒業は凄いです」
蒼も会って直接お祝いを言いたい、しかし……。迷う蒼に雪哉が後押しする。
「君のおかげだよ、本人もそう言ってる。勿論僕ら夫夫の思いも同じだ。だから、是非来て、ねっ」
自分のおかげだなんて、そんなことはないと思ったが、これだけ誘われて断ることはできない、蒼は承諾した。
「今日の彰久は立派だったな、挨拶も堂々としてた。母さん誇らしかったぞ」
「ああ、父さんもだ。この調子でこれからも頑張っていきなさい」
卒業証書と、首席卒業の記念品を広げながら両親が自分を褒めるのを、彰久は誇らしい気持ちで聞いていた。弟と妹からも羨望の眼差しを向けられ、兄として誇らしい。
しかし、一番褒めて欲しい人は、まだここに居ない。両親から来てくれると聞いた。早く来て欲しい。
「あっ!」
声を上げると、突然反応したように、彰久は玄関へと走り戸を開ける。そこには、待ち焦がれた人が立っていた。蒼は、今着いて、インターフォンを鳴らそうとするところだった。
「あお君!」
彰久は蒼に抱きついた。
「あっ、あき君」
蒼は、抱きつく彰久に戸惑いながら、心の底から歓びが沸くのを否定できない。三年ぶりに会う彰久は、もう自分より大きくなっていた。こうして抱きつかれると、彰久の腕の中にすっぽりと入り、自分が抱かれているようだ。こんなに大きくなって……三年の時の長さを改めて感じた。
「あお君来てくれてありがとう。嬉しいよ! 待ってたんだ!」
「うん、直接おめでとうって言いたくて……あき君頑張ったね……おめでとう」
蒼は溢れそうになる涙を、必死に堪えて言うと、高久と雪哉も玄関まで出てきていた。
「蒼君、来てくれてありがとう。さあ、中へ入って。それにしても、彰久は相変わらずインターフォンなる前に分かるんだな」
当たり前だろうというような顔で、彰久は蒼を中へと促した。
三年ぶりに入った北畠家のリビングは、何も変わっていなかった。ただ子供たちがそれぞれ大きくなっていた。自分と変わらない背丈だった彰久が自分より大きくなっている。自分より小さかった尚久が自分と変わらない背丈になっている。幼女だった結惟は可憐な少女になっていた。
「三人とも大きくなってびっくりした。僕は全然変わってないのに」
「あお君はきれいなままだ! 前よりきれいかも」
彰久が定位置とばかりに隣に座る。蒼はドキッとするが、今日は強めの抑制剤を飲んで来た。反応するわけにはいかない。幸いと言うか、尚久も横にぴったりとくっついてくるし、結惟は正面から抱きついて甘えてくるので随分紛れる。彰久だけだったら蒼の胸の高鳴りは抑えられないかもしれない。
「改めて、あき君首席卒業おめでとう! 来月から高校生だね。これは、僕からのお祝い」
「えっ、お祝い! 嬉しいな! ありがとう! あけていい?」
「気に入ってくれるといいけど」
彰久は満面の笑顔で、いそいそとプレゼントの包みを開く。
「うわあーボールペン! あっ、名前が入ってる。なんか凄く大人の感じがするなあ。ありがとう、凄く嬉しい!」
「モンブランじゃないか、僕や高久さんも愛用している。高校生にはもったいないなあ、蒼君ありがとう、気を使わせて悪いね」
「いいえ、とんでもないです。首席卒業なんて、僕もほんとに嬉しかったので」
「彰久、大事にしなさい。それは使うほど手に馴染んで、長く使えるからな」
両親から言われるまでもなく、大切にする。大好きで、一番大切な人からのプレゼント。自分の名前も入っている。父さんや母さんも持っているブランドのボールペン、なんだか少し大人の階段を上ったようで誇らしく、嬉しかった。常に持っていようと、固く心に誓う彰久だった。
「彰久、蒼君に肝心のものを見せないと」
雪哉に言われ、彰久は卒業証書と記念品を見せながら、式典の様子を話して聞かせた。尚久と結惟も相変わらず、ぴったりと側にいる。そのうちに、それぞれが話に割り込んでくる。皆、蒼に話したくてたまらないのだ。
「蒼君久しぶりだけど、やっぱり子供たちに大人気だな。なんかお前たち蒼君の取り合いって感じだな」
雪哉が呆れ気味に言うと、高久も同意するが、子供たちは蒼と話すのに夢中で誰も聞いていない。
彰久は、懐かしい蒼の匂いにうっとりしていた。
この匂い、大好きな人の匂い。自分のオメガはこの人だ。間違いないと確信する。二人っきりになりたい。彰久は、話しながら焦れた。どうにか二人っきりになって自分の思いを伝えたい。
今日は、そうしようと心に決めていた。彰久は、機会を探っていた。
そこへ注文していた寿司が届いたため、雪哉が席を離れた。「わあーい、お寿司だあー」と尚久と結惟も付いていった。高久は先に電話のため席を外している。
彰久はチャンスとばかりに、蒼を庭に誘った。蒼も、部屋で二人っきりになるのは避けたいが、庭ならと付いていく。蒼の手を引く彰久の手を振り解くことはできない。
「家族だけでする内輪のものなんだ。君は家族も同然だから一緒に祝って欲しい。後期研修で忙しいのは分かってるけど、出来れば来て欲しいんだ」
「あき君頑張ったんですね、あの名門校で首席卒業は凄いです」
蒼も会って直接お祝いを言いたい、しかし……。迷う蒼に雪哉が後押しする。
「君のおかげだよ、本人もそう言ってる。勿論僕ら夫夫の思いも同じだ。だから、是非来て、ねっ」
自分のおかげだなんて、そんなことはないと思ったが、これだけ誘われて断ることはできない、蒼は承諾した。
「今日の彰久は立派だったな、挨拶も堂々としてた。母さん誇らしかったぞ」
「ああ、父さんもだ。この調子でこれからも頑張っていきなさい」
卒業証書と、首席卒業の記念品を広げながら両親が自分を褒めるのを、彰久は誇らしい気持ちで聞いていた。弟と妹からも羨望の眼差しを向けられ、兄として誇らしい。
しかし、一番褒めて欲しい人は、まだここに居ない。両親から来てくれると聞いた。早く来て欲しい。
「あっ!」
声を上げると、突然反応したように、彰久は玄関へと走り戸を開ける。そこには、待ち焦がれた人が立っていた。蒼は、今着いて、インターフォンを鳴らそうとするところだった。
「あお君!」
彰久は蒼に抱きついた。
「あっ、あき君」
蒼は、抱きつく彰久に戸惑いながら、心の底から歓びが沸くのを否定できない。三年ぶりに会う彰久は、もう自分より大きくなっていた。こうして抱きつかれると、彰久の腕の中にすっぽりと入り、自分が抱かれているようだ。こんなに大きくなって……三年の時の長さを改めて感じた。
「あお君来てくれてありがとう。嬉しいよ! 待ってたんだ!」
「うん、直接おめでとうって言いたくて……あき君頑張ったね……おめでとう」
蒼は溢れそうになる涙を、必死に堪えて言うと、高久と雪哉も玄関まで出てきていた。
「蒼君、来てくれてありがとう。さあ、中へ入って。それにしても、彰久は相変わらずインターフォンなる前に分かるんだな」
当たり前だろうというような顔で、彰久は蒼を中へと促した。
三年ぶりに入った北畠家のリビングは、何も変わっていなかった。ただ子供たちがそれぞれ大きくなっていた。自分と変わらない背丈だった彰久が自分より大きくなっている。自分より小さかった尚久が自分と変わらない背丈になっている。幼女だった結惟は可憐な少女になっていた。
「三人とも大きくなってびっくりした。僕は全然変わってないのに」
「あお君はきれいなままだ! 前よりきれいかも」
彰久が定位置とばかりに隣に座る。蒼はドキッとするが、今日は強めの抑制剤を飲んで来た。反応するわけにはいかない。幸いと言うか、尚久も横にぴったりとくっついてくるし、結惟は正面から抱きついて甘えてくるので随分紛れる。彰久だけだったら蒼の胸の高鳴りは抑えられないかもしれない。
「改めて、あき君首席卒業おめでとう! 来月から高校生だね。これは、僕からのお祝い」
「えっ、お祝い! 嬉しいな! ありがとう! あけていい?」
「気に入ってくれるといいけど」
彰久は満面の笑顔で、いそいそとプレゼントの包みを開く。
「うわあーボールペン! あっ、名前が入ってる。なんか凄く大人の感じがするなあ。ありがとう、凄く嬉しい!」
「モンブランじゃないか、僕や高久さんも愛用している。高校生にはもったいないなあ、蒼君ありがとう、気を使わせて悪いね」
「いいえ、とんでもないです。首席卒業なんて、僕もほんとに嬉しかったので」
「彰久、大事にしなさい。それは使うほど手に馴染んで、長く使えるからな」
両親から言われるまでもなく、大切にする。大好きで、一番大切な人からのプレゼント。自分の名前も入っている。父さんや母さんも持っているブランドのボールペン、なんだか少し大人の階段を上ったようで誇らしく、嬉しかった。常に持っていようと、固く心に誓う彰久だった。
「彰久、蒼君に肝心のものを見せないと」
雪哉に言われ、彰久は卒業証書と記念品を見せながら、式典の様子を話して聞かせた。尚久と結惟も相変わらず、ぴったりと側にいる。そのうちに、それぞれが話に割り込んでくる。皆、蒼に話したくてたまらないのだ。
「蒼君久しぶりだけど、やっぱり子供たちに大人気だな。なんかお前たち蒼君の取り合いって感じだな」
雪哉が呆れ気味に言うと、高久も同意するが、子供たちは蒼と話すのに夢中で誰も聞いていない。
彰久は、懐かしい蒼の匂いにうっとりしていた。
この匂い、大好きな人の匂い。自分のオメガはこの人だ。間違いないと確信する。二人っきりになりたい。彰久は、話しながら焦れた。どうにか二人っきりになって自分の思いを伝えたい。
今日は、そうしようと心に決めていた。彰久は、機会を探っていた。
そこへ注文していた寿司が届いたため、雪哉が席を離れた。「わあーい、お寿司だあー」と尚久と結惟も付いていった。高久は先に電話のため席を外している。
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