春風の香

梅川 ノン

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番外編 陽だまりの中で

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「バリで買って来た猫、可愛いな。母さんのとは別に買って来て良かった」
 可愛さに惹かれて、雪哉への土産とは別に自分のも買ったのだ。ベッドのサイドテーブルに置いている。
「うん、母さんへの土産とはまた違って、これも可愛いね。でもあお君には負けるよ。あお君が子猫のように甘えてくると僕はたまらないよ」
 甘えている自覚はあるけど、子猫みたいって……恥ずかしい。そんなふうに甘えているのか……。
「ねえ、にゃーって言ってみて、もっと可愛いと思うよ。どんな可愛いものが束でかかってきても、負けないくらい最強に可愛いと思うんだ」
「なっ! 何言いてるの!」
 何を求めているんだ、いくら何でもそれは無い。
「ねえ、一回でいいから、言ってみて……ねっ」
 彰久が甘い顔で強請る。その瞳は、期待できらきらと光る。蒼はこの瞳で見つめられると弱い。何でも聞いてやりたくなる。彰久が幼い頃からそうだった。雪哉が、蒼は彰久に甘すぎると言う故だ。
「に……にゃ~」
 その瞬間彰久が蒼に抱きつく。
「うわっ! だめっ! やばい!」
「だっ、だめって……」
「いやいやっ、いいんだ、いいんだよ! あんまり可愛いから」
 むしゃぶりつくと言う感じで、ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。なんて可愛いいんだ! この人は! 可愛すぎる、本当にやばい。自分で振っておいて、まさか本当に言ってくれるとは思わなかった。
 言った蒼は、さすがに恥ずかしすぎて、彰久の胸に顔を埋める。その仕種が可愛さを増していることには、無論気付いていない。彰久にはそこがまたたまらない。もっともっと甘えて欲しい。

「なんか、まだたった一週間なのに、僕はあき君に甘えているよね」
「いいじゃない、番になって結婚したんだから、もっと甘えてもいいくらいだよ」
「だめだよ、さすがにシャキッとしないと、病院へ行けなくなる」
「僕的にはそれでもいいけど、あお君のことだから、病院行ったらしっかりした蒼先生になるんだろうなあ」
 実際未だ結婚休暇と言えど、蒼が甘えるのは彰久と二人だけの時だ。両親だけの時は若干気を許すようだが,それでもあからさまに甘えることはない。
 この年上の美しい人が、子猫か小鳥が親に甘えるように、甘えてくるのはたまらない気持ちになる。可愛い! それこそ全身舐めまわしたいほど可愛い。いや、実際ベッドの中では蒼の全身を舐めるように愛撫する。
 その滑らかで白い肌が、徐々に色付き、汗ばむさまは、彰久を至福の居地に導く。世の中にこれほど愛おしい存在があるのだろうか……。正にこれが運命の番なんだろう。

「あお君、愛しているよ。僕のオメガ、僕が守るよ。生涯かけて幸せにするよ」
「うん、ありがと。もう幸せだよ。あき君のオメガになれて良かった。僕は生まれてきて良かったと心から思える。それは、あき君のおかげだよ」
「もっと、もっと幸せにするから。ずっとそばにいて」
 愛し合う二人の甘い睦言は続く。結ばれるまでに長い時を要しただけに、それを埋めるようにお互いに求めあう。それは至極自然なことでもあると、神も祝福しているように、二人を包む空気も甘く温かい。

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