春風の香

梅川 ノン

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番外編 陽だまりの中で

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 その後、蒼の妊娠生活は順調に進んだ。彰久の過保護っぷりは、増すことはあっても弱まることはない。病院でも、時間が空くと蒼の様子を見に行った。
 そのため、看護師たちも蒼の身を気遣った。「蒼先生、休んでください!」そう言われるのはしょっちゅうだ。いやー、大丈夫だと言っても、聞いてもらえない。それも、自分を気遣うためと分かるので、蒼も従うことにするのだった。
 産み月の前月になり、蒼は早めに産休へと入った。ギリギリまで大丈夫だと思ったが、かえって皆に心配をかけることになると、雪哉から言われそれに従った。彰久などは、もっと早めに入ることを願っていたので、待望の産休だった。

「あき君、少し腹が痛い」
 夕食後、離れに戻りソファーでくつろいでいた蒼が、彰久に訴える。
「えっ、陣痛かな⁈」
「かも……強い痛みじゃないけど……」
 予定日までは、一週間ほどあるが、そろそろ時間の問題とは思っていた。彰久は直ぐに母屋へ走った。すぐに雪哉を先頭に三人がやってくる。
「いつから痛い?」
「実は夕食の時も少し。その時はすぐに収まったので。でもまた同じ痛みだから、陣痛かもと」
「ああ、陣痛だな。少しずつ間隔か近くなる。夜だからな、早めに入院したほうがいいな」
 彰久が病院へ連絡を取り、すぐに入院と決まる。予定日が近いため、病院の受け入れ態勢も既に整っている。
 
 彰久の運転で病院へ行った。主治医の高橋も駆けつけてくれていた。すぐに診察をする。結果、初産でもあり、多分生まれるのは明日の朝以降だろうとのことだ。
 高久と結惟は一時帰宅する。彰久は側に付き添い、雪哉は副院長室で仮眠をとりながら、時折様子を見ることにする。どうせ、帰宅しても落ち着かないからと。

 蒼は、病院着に着替えてベッドへ横になる。彰久が付いてくれるのは心強い。陣痛の間隔が少しずつ近く、強くなる。彰久が腰を撫でてくれるのが気持ちいい。時折と言うか、頻繁に雪哉も様子を見に来た。
 空が白む。夜が明けたようだ。痛みは、かなり強くなっている。そろそろかなと、高橋が診察する。その結果、産室へ入ることに決まる。
 産室へ向かう時、丁度到着した高久と、結惟に会う。二人も心配で、早めにやって来たのだった。二人から、それぞれ激励を受けて、蒼は力強く頷く。既に母としての強さが生まれていた。

 妊夫としての頑張りは、ここからだった。激しい陣痛に蒼は懸命に耐えた。彰久がすぐ側で手を握ってくれている。それが救であり、励みだ。雪哉も側にいてくている。心強い。
 激しい痛みに耐える。そして、高橋に言葉に従い、力を振り絞った。高橋と、雪哉二人が、口々に蒼を励ます。蒼は、全身の力を振り絞った。

 生まれた!
 生まれたばかりの赤ちゃんが泣く。元気な泣き声! それは皆に幸せを告げる泣き声だった。
 
 朝日に光り輝く中、蒼と彰久の愛の結晶は生まれた。
 泣き声が力強い、元気な男の子だった。
 蒼は本能的に、この子はアルファだろうと思った。母としての、オメガとしての勘とも言える。
 そして新米両親は、愛の結晶である我が子に『春久』と名付けた。


 番外編 完結しました。お読みいただき心から感謝します。ありがとうございました。
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