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番外編 甘い春風
②
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「じーじ、おかえりなしゃい」
「おおーっ、はる君ただいま。今日もいい子にしてたか?」
満面の笑みで頷く春久を抱き上げる。高久も満面の笑みだ。高久にとって最愛の孫だ。春久が産まれるまで、孫がこんなに可愛いとは知らなかった。はっきり言って、今は子供より可愛いと思っている。
「お帰りなさい」
春久を抱いたままリビングへ入ると、雪哉と結惟が出迎える。
「パパたちはまだ帰っていないのか?」
「ママ、ポンポンいたいって、パパがなおちゅの」
それで、高久には事情が分かった。蒼の発情期には、二人は部屋にこもるから、春久は母屋で預かるのだ。それは、高久にとって至福の時だ。
本当は毎日でも、母屋に泊まらせたいと思っているが、さすがにそれはかなわない。蒼の発情期が待ち遠しい。三ヶ月ごとでなく、毎月あればいいのにと思ってるくらいなのだ。
「ママはパパがいれば大丈夫だから心配いらないよ。はる君、今日はじーじと一緒にお風呂へ入ろう」
「ダメよパパ! はる君はおねいちゃまと入るんだもんね」
「えーっそうなのか? じーじと一緒がいいだろう」
高久と結惟がお互いに引かない様相を見せる。二人とも春久は、可愛くて仕方がない孫であり、甥っ子なのだ。
春久はつぶらな瞳で二人を見て、ぱっと閃いたように言う。
「しゃんにんではいろ! はっくん、いつもパパとママとしゃんにんではいるよ」
春久の盛大なばらしに、三人は苦笑する。そうか、いつも三人で入っているのか、仲の良いことだ。しかし、高久と結惟と春久の三人で入ることはできない。どう春久を納得させる。高久と結惟は同時に雪哉を見る。こういう時、事を納めるのは雪哉の役目とばかりに。
「はる君、パパとママは男の人だろう。男同士だから大人になっても一緒に入れるんだ。だけど、おねいちゃまは女の人だから、大人になったら男の人と一緒には入らないんだよ」
「はっくん、おとこのこだよ」
「はる君は、まだ子供だからいいんだよ」
「そうだよはる君。はる君も大人になったら、もうおねいちゃまとは入れないんだよ。一緒に入れるのは、今のうちだから一緒に入ろう!」
これで決まり! とばかりの結惟に、高久は苦い顔をするものの、ここは娘に譲ろうと思う。これ以上争って、それこそ雪哉の怒りをかうのは、本意ではない。
「はる君きれいきれいしようね」
結惟は、柔らかい春久の体を、優しく洗っていく。すると、春久はその小さな手で、結惟の胸にそっと触れる。
「おねいちゃまのおっぱい、おおきいね」
「ふふっ、女の人のおっぱいは大きいんだよ」
「そっかー、ママのはおおきくないけど、やわらかなんだよ」
「そうなんだね、はる君はママのおっぱい好きなんだね」
「うん、でもねチューっはバイバイしたよ。はっくん、もうあかちゃんじゃないから」
「えらいなーはる君! 赤ちゃんじゃなくて、男の子だもんね」
「うん! だからパパにかえしたの! ママのおっぱいパパのだから! はっくん、あかちゃんだったから、かちてくれてたの」
春久の爆弾発言に結惟は啞然とする。我が兄は、一体子供に何を言っているのか⁈ 子供にまで独占欲を出しているのか、呆れる思いになる。確かに兄の、蒼に対する独占欲は半端ないと常々思ってはいたが……。
これは、母に言いつけないといけない。きっと母の厳しい小言を食らうことになる。この北畠家で母に勝てる人はいない。それは皆が認めている。
「ふふっ、はる君はえらいなー、男の子だね!」
しかし、ここでは可愛い甥っ子を褒めるにとどまる。そして、話を変える。これ以上、おっぱいの話を続けて、ママ恋しさに火を付けたらいけない。
末っ子で甘えん坊だった結惟も、春久が誕生してからは、随分としっかり者になった。今では雪哉も結惟を頼りにしている。病院での片腕は蒼だが、家では結惟だった。雪哉だけでなく、他の家族にとっても、結惟の存在感は大きい。
結惟も今の生活に満足している。母だけでなく、皆に頼られるのは悪い気がしないし、何より甥っ子の春久は可愛い。蒼の発情期でなくとも、春久との日常には幸せを感じている。今のところ結婚する気もない。当分この生活を楽しむつもりでいる。
そして、子供より孫が可愛いと言っている高久だって、いざ結惟が嫁に行くとなるば、絶対落ち込むとも思っている。
「おおーっ、はる君ただいま。今日もいい子にしてたか?」
満面の笑みで頷く春久を抱き上げる。高久も満面の笑みだ。高久にとって最愛の孫だ。春久が産まれるまで、孫がこんなに可愛いとは知らなかった。はっきり言って、今は子供より可愛いと思っている。
「お帰りなさい」
春久を抱いたままリビングへ入ると、雪哉と結惟が出迎える。
「パパたちはまだ帰っていないのか?」
「ママ、ポンポンいたいって、パパがなおちゅの」
それで、高久には事情が分かった。蒼の発情期には、二人は部屋にこもるから、春久は母屋で預かるのだ。それは、高久にとって至福の時だ。
本当は毎日でも、母屋に泊まらせたいと思っているが、さすがにそれはかなわない。蒼の発情期が待ち遠しい。三ヶ月ごとでなく、毎月あればいいのにと思ってるくらいなのだ。
「ママはパパがいれば大丈夫だから心配いらないよ。はる君、今日はじーじと一緒にお風呂へ入ろう」
「ダメよパパ! はる君はおねいちゃまと入るんだもんね」
「えーっそうなのか? じーじと一緒がいいだろう」
高久と結惟がお互いに引かない様相を見せる。二人とも春久は、可愛くて仕方がない孫であり、甥っ子なのだ。
春久はつぶらな瞳で二人を見て、ぱっと閃いたように言う。
「しゃんにんではいろ! はっくん、いつもパパとママとしゃんにんではいるよ」
春久の盛大なばらしに、三人は苦笑する。そうか、いつも三人で入っているのか、仲の良いことだ。しかし、高久と結惟と春久の三人で入ることはできない。どう春久を納得させる。高久と結惟は同時に雪哉を見る。こういう時、事を納めるのは雪哉の役目とばかりに。
「はる君、パパとママは男の人だろう。男同士だから大人になっても一緒に入れるんだ。だけど、おねいちゃまは女の人だから、大人になったら男の人と一緒には入らないんだよ」
「はっくん、おとこのこだよ」
「はる君は、まだ子供だからいいんだよ」
「そうだよはる君。はる君も大人になったら、もうおねいちゃまとは入れないんだよ。一緒に入れるのは、今のうちだから一緒に入ろう!」
これで決まり! とばかりの結惟に、高久は苦い顔をするものの、ここは娘に譲ろうと思う。これ以上争って、それこそ雪哉の怒りをかうのは、本意ではない。
「はる君きれいきれいしようね」
結惟は、柔らかい春久の体を、優しく洗っていく。すると、春久はその小さな手で、結惟の胸にそっと触れる。
「おねいちゃまのおっぱい、おおきいね」
「ふふっ、女の人のおっぱいは大きいんだよ」
「そっかー、ママのはおおきくないけど、やわらかなんだよ」
「そうなんだね、はる君はママのおっぱい好きなんだね」
「うん、でもねチューっはバイバイしたよ。はっくん、もうあかちゃんじゃないから」
「えらいなーはる君! 赤ちゃんじゃなくて、男の子だもんね」
「うん! だからパパにかえしたの! ママのおっぱいパパのだから! はっくん、あかちゃんだったから、かちてくれてたの」
春久の爆弾発言に結惟は啞然とする。我が兄は、一体子供に何を言っているのか⁈ 子供にまで独占欲を出しているのか、呆れる思いになる。確かに兄の、蒼に対する独占欲は半端ないと常々思ってはいたが……。
これは、母に言いつけないといけない。きっと母の厳しい小言を食らうことになる。この北畠家で母に勝てる人はいない。それは皆が認めている。
「ふふっ、はる君はえらいなー、男の子だね!」
しかし、ここでは可愛い甥っ子を褒めるにとどまる。そして、話を変える。これ以上、おっぱいの話を続けて、ママ恋しさに火を付けたらいけない。
末っ子で甘えん坊だった結惟も、春久が誕生してからは、随分としっかり者になった。今では雪哉も結惟を頼りにしている。病院での片腕は蒼だが、家では結惟だった。雪哉だけでなく、他の家族にとっても、結惟の存在感は大きい。
結惟も今の生活に満足している。母だけでなく、皆に頼られるのは悪い気がしないし、何より甥っ子の春久は可愛い。蒼の発情期でなくとも、春久との日常には幸せを感じている。今のところ結婚する気もない。当分この生活を楽しむつもりでいる。
そして、子供より孫が可愛いと言っている高久だって、いざ結惟が嫁に行くとなるば、絶対落ち込むとも思っている。
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