51 / 54
番外編 甘い春風
③
しおりを挟む
お風呂から上がった春久は、ゆっくりだが自分で部屋着をきてから、リビングへ行くと、高久が満面の笑みで迎える。
「はる君きれいになったね。さあ、おいで。じーじが絵本を読んであげるよ」
高久が手招きすると、春久は、一番のお気に入りの絵本を持ってくる。
「これがいいのか? はる君はチュー君のお話が好きだね」
「うん! パパもね、ママもね、ちゅきだって」
そうだった。彰久はじめ三人の子供たちも好きで、よく読んでやったな。懐かしい思いになる。
「パパね、ママによんでもらったって」
高久は微苦笑を浮かべる。彰久の一番の思い出はそこなんだろう。思えば、あの二人は今の春久くらいの時に出会った。その時から一筋、時には我が子にさえ対抗心を燃やすほどだ。それくらい、彰久の蒼への思いは強い。
そんな彰久を、蒼もしっかりと受け止めている。蒼には、雪哉のような表面的な強さはないが、大らかな、全てを包み込むような母性愛がある。内面に秘めた強さがあると、高久は思っている。
「そうか、はる君もママに読んでもらうのかな?」
「うん、えほんはママ、パパは、たかいたかいちてくれる」
「今日は、じーじが読んであげるよ。たかいたかいは、明日パパにしてもらおうね」
まだまだ若い者には負けていない思いはあるが、さすがにたかいたかいは出来ない。自分の腰の心配よりも、春久を落とすわけにはいかない。ここは、若い者に任せようと、素直に思う。
高久の膝の上で、大人しくお話を聞いていた春久だったが、次第に船を漕ぎ始める。眠たくなったようだ。そーっと除き見た雪哉に高久は頷いた。今動かすと目を覚ますだろう。もう少しそのままで、完全に眠ったらベッドへ運ぼう。
眠くなって、ママ恋しさに、ぐずることもあるが、今日はうまく眠ってくれた。大人三人安堵する。春久は目に入れても痛くないほど可愛いが、ママ恋しさにぐずられると、おろおろするばかりだからだ。母を求める子供にはお手上げになる。
完全に寝入った春久を、高久は慎重にベッドへ運ぶ。自分たちのベッドの真ん中に寝せる。そして、自分も横になる。小さな春久をつぶさないように、しかし人肌は感じられるように。もし、目覚めても不安がらないように。
雪哉は、宝物を慈しむような夫の姿に、自然と笑みがこぼれる。自分にとっても最愛の孫だが、高久がここまで可愛がるとは、少々意外でもあった。
子供たちのことも可愛がり、良い父ではあった。しかし、どちらかと言えば父としての威厳の方が勝っていた。決して、理不尽な厳しさはなかったが、甘いところはなかった。特に男である上の二人にはそうだった。
結惟に対しては、末っ子で女の子でもあるから、上二人よりは甘かったが……。
それが、孫にはこの激甘ぶり。もう、雪哉は苦笑するばかりだ。だが、これで良いと思っている。厳しくするのは、親の務め。それを邪魔せぬ限り、祖父母は甘くて良いだろうと思うのだ。
春久を起こさないように、雪哉はそーっとベッドに入る。結惟が大きくなってからは、途絶えていた川の字になって寝ること。春久がここで眠る時に復活した。三ヶ月に一度くらいの、たまなことだが、至福の時でもある。
この幸せを与えてくれた、息子夫夫に感謝しつつ雪哉は眠りにつく。
皆が皆、幸せを胸に北畠家の夜は更けていく。
「はる君きれいになったね。さあ、おいで。じーじが絵本を読んであげるよ」
高久が手招きすると、春久は、一番のお気に入りの絵本を持ってくる。
「これがいいのか? はる君はチュー君のお話が好きだね」
「うん! パパもね、ママもね、ちゅきだって」
そうだった。彰久はじめ三人の子供たちも好きで、よく読んでやったな。懐かしい思いになる。
「パパね、ママによんでもらったって」
高久は微苦笑を浮かべる。彰久の一番の思い出はそこなんだろう。思えば、あの二人は今の春久くらいの時に出会った。その時から一筋、時には我が子にさえ対抗心を燃やすほどだ。それくらい、彰久の蒼への思いは強い。
そんな彰久を、蒼もしっかりと受け止めている。蒼には、雪哉のような表面的な強さはないが、大らかな、全てを包み込むような母性愛がある。内面に秘めた強さがあると、高久は思っている。
「そうか、はる君もママに読んでもらうのかな?」
「うん、えほんはママ、パパは、たかいたかいちてくれる」
「今日は、じーじが読んであげるよ。たかいたかいは、明日パパにしてもらおうね」
まだまだ若い者には負けていない思いはあるが、さすがにたかいたかいは出来ない。自分の腰の心配よりも、春久を落とすわけにはいかない。ここは、若い者に任せようと、素直に思う。
高久の膝の上で、大人しくお話を聞いていた春久だったが、次第に船を漕ぎ始める。眠たくなったようだ。そーっと除き見た雪哉に高久は頷いた。今動かすと目を覚ますだろう。もう少しそのままで、完全に眠ったらベッドへ運ぼう。
眠くなって、ママ恋しさに、ぐずることもあるが、今日はうまく眠ってくれた。大人三人安堵する。春久は目に入れても痛くないほど可愛いが、ママ恋しさにぐずられると、おろおろするばかりだからだ。母を求める子供にはお手上げになる。
完全に寝入った春久を、高久は慎重にベッドへ運ぶ。自分たちのベッドの真ん中に寝せる。そして、自分も横になる。小さな春久をつぶさないように、しかし人肌は感じられるように。もし、目覚めても不安がらないように。
雪哉は、宝物を慈しむような夫の姿に、自然と笑みがこぼれる。自分にとっても最愛の孫だが、高久がここまで可愛がるとは、少々意外でもあった。
子供たちのことも可愛がり、良い父ではあった。しかし、どちらかと言えば父としての威厳の方が勝っていた。決して、理不尽な厳しさはなかったが、甘いところはなかった。特に男である上の二人にはそうだった。
結惟に対しては、末っ子で女の子でもあるから、上二人よりは甘かったが……。
それが、孫にはこの激甘ぶり。もう、雪哉は苦笑するばかりだ。だが、これで良いと思っている。厳しくするのは、親の務め。それを邪魔せぬ限り、祖父母は甘くて良いだろうと思うのだ。
春久を起こさないように、雪哉はそーっとベッドに入る。結惟が大きくなってからは、途絶えていた川の字になって寝ること。春久がここで眠る時に復活した。三ヶ月に一度くらいの、たまなことだが、至福の時でもある。
この幸せを与えてくれた、息子夫夫に感謝しつつ雪哉は眠りにつく。
皆が皆、幸せを胸に北畠家の夜は更けていく。
132
あなたにおすすめの小説
カミサンオメガは番運がなさすぎる
ミミナガ
BL
医療の進歩により番関係を解消できるようになってから番解消回数により「噛み1(カミイチ)」「噛み2(カミニ)」と言われるようになった。
「噛み3(カミサン)」の経歴を持つオメガの満(みつる)は人生に疲れていた。
ある日、ふらりと迷い込んだ古びた神社で不思議な体験をすることとなった。
※オメガバースの基本設定の説明は特に入れていません。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
愛させてよΩ様
ななな
BL
帝国の王子[α]×公爵家の長男[Ω]
この国の貴族は大体がαかΩ。
商人上がりの貴族はβもいるけど。
でも、αばかりじゃ優秀なαが産まれることはない。
だから、Ωだけの一族が一定数いる。
僕はαの両親の元に生まれ、αだと信じてやまなかったのにΩだった。
長男なのに家を継げないから婿入りしないといけないんだけど、公爵家にΩが生まれること自体滅多にない。
しかも、僕の一家はこの国の三大公爵家。
王族は現在αしかいないため、身分が一番高いΩは僕ということになる。
つまり、自動的に王族の王太子殿下の婚約者になってしまうのだ...。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる