老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ミィタソ

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第三章 なぜか生き返りました

17.激キモサイコパス伯爵

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 エンヴィから色々と説明を受けた結果、まだよく分かっていない。
 頭が理解を拒み続けているというのが正しいのかも。
 ちょっとまとめてみよう。

 まだ騎士団が調査中らしく、犯人は見つかっていない。
 私が殺されたのは、新婚旅行の日というのは確定している。
 事件の当日、屋敷には誰もいなかった。
 ランダーク伯爵家が管理する観光地に向かう途中、私とキルエンは口論となり、大喧嘩の末、馬車を止めて家に帰ってしまう。
 そこに強盗がやってきて、鉢合わせた私は背中をめった刺しにされてしまった……と。
 一切記憶にないが、なんとも運の悪い話だ。
 死ぬ前の私はキルエンと喧嘩したのね。
 勇気を振り絞ったのか、耐えられないくらい酷い言葉を浴びせられたのか。どちらにせよ、よく頑張ったと褒めてあげたい。

 私の死んだときの状況はこれくらいにしておこう。
 自分もそうだが、エンヴィも滅多に社交の場には現れない。
 十年ぶりくらいだろうか。せっかくの再会に花を咲かせたい。

「蘇りの秘薬なんてよく見つけたわね」

「そんなまさか。都合よく見つかるわけないだろう。裏のルートで買ったんだよ」

「あれを買ったですって!? ……まさか!」

 いつどこに現れるかも分からない蘇りの秘薬。誰でも喉から手が出るほどの代物だ。
 王家は常に一つ確保してあるというが、公爵家などの上級貴族とて待っておきたいはず。
 いまや各地の騎士団詰所に配備されている、連絡を円滑に行うための電報装置に始まり、王都の生活を豊かにする数々の機械を作ってきたハイゼンベルク伯爵家。しかし、いくらお金があるといえど、ぽんと買えるほど安くはない。
 部屋から飛び出し、屋敷の中を駆け回る。
 ……ない。
 ……何もない。
 壺も、絵画も、屋敷の従業員すら見当たらない。

「ハハハ、驚いたかい?」

 私の後を追いかけてきたエンヴィが、なんでもないことのように笑う。

「いったい、いくら使ったの? 全財産の何割?」

「まあまあ、値段なんてどうでもいいじゃないか」

 広い屋敷を管理するには、どうしても人手が必要になってくる。
 ここよりずっと小さな田舎子爵のノブルス家ですら、執事一人にメイドを二人、加えて料理長を雇っていた。
 つまり、給料を払う余裕すらない。この様子だと、とてつもない金額を使っているのだろう。

「六割?」

「それで買えていたらラッキーだったね」

「じゃあ八? ……九!?」

「マーガレットの命に比べれば安いものさ」

 呆れた。
 私を生き返らせるために、私財のほとんどを投げ打ってしまったらしい。

「機械を作る工場は残っているわよね?」

「マーガレットは馬鹿だなぁ。もちろん売ったに決まっているじゃないか。アハハハハ!」

 いやいや、笑っている場合か。いままでの会話に、一つも面白いところなんてなかったよね?
 馬鹿はお前だと言ってやりたい。助けてもらった私の立場からは、口が裂けても言えないけど。
 ……って、いけないいけない。エンヴィのゆるい独特なペースに巻き込まれて、私までどこか無関心な気持ちになってしまっていた。
 真面目に話をしないと。

「なんで私なんかのために。このままじゃハイゼンベルク伯爵家が潰れてしまう」

「マーガレットを失うよりマシさ。僕はね、初めて会ったあのときから君が好きなんだ。女神様に誓ってもいい、誰よりも愛している。マーガレットがいない世界で生きていくなんて考えられない」

 急な告白を受け、湯気が出そうなくらい顔が熱くなっていくのが分かる。おそらくリンゴみたいに真っ赤になっているだろう。
 あの真紅の眼差しに見つめられたら見つめられるほど、赤くなっていく気がする。
 恥ずかしさも相まって、両手で顔を覆い隠す。

「お、お掃除とか、料理とかは、私がやりますから。お金については、二人で考えていきましょう」

「えー、全部二人でやらない? その方が楽しそうだよ? でもまあ、マーガレットが手伝ってくれるなら、なんとかなりそうだね!」

 このエンヴィという人はまったく。真面目なのか適当なのか分かりづらい。
 でも、私のことを大切に思ってくれている気持ちに間違いはなさそうだ。
 もし婚約者がキルエンではなくエンヴィだったら、いまごろ私は幸せな家庭を築けていたのだろうか。
 こんなことを考えてしまうのは、貴族令嬢として、はしたないのかもしれないけれど。

「そういえば、私が死んだ後すぐに蘇りの秘薬が現れたのよね? 私って実は運が良かったのかしら?」

「アハハ、そんな都合よく女神の奇跡が起こるわけない。それに、貴族が殺されるなんて、何十年に一度あるかないかだよ? マーガレットの運は、この国でも一、二を争うくらい悪いんじゃない?」

「え、どういうこと? あれは平民がいつまでも保管しておけるような物じゃないし、貴族が手放すはずないでしょう?」

「知りたがりなマーガレットにここで問題です! この国には、確実に蘇りの秘薬が存在する場所があります。それはどこでしょう?」

 エンヴィが楽しそうに、右手の人差し指を時計の秒針のように動かしている。
 クイズって好きなのよね。頭の体操というか、解けたときにすっきりするというか。
 確実に・・・、これがヒントになっていると思う。
 でもそうすると……いや、まさかね。

「試しに答えてみてもいい?」

「あ、解答者は手を挙げてくださーい」

「じゃあ、はいっ!」

 私は力強く手を挙げる。
 答えが合っていて欲しくないからこそ、全力で間違いたい。

「はい、マーガレットさん。答えをどうぞ!」

 エンヴィは、はしゃぎながら私を指差す。
 よかった。この軽い感じであれば、私の答えはどうせハズレだろう。

「……王城?」

「ピンポンピンポーン! 大正解!」

 当たってしまった。
 私は驚きすぎて腰が抜け、その場に崩れ落ちてしまう。
 前言撤回。過去に戻り、エンヴィとの幸せな未来を一瞬でも想像しようとした自分に待ったをかけたい。
 この人はおかしい。頭のネジが外れている。

「あなたが盗んだの?」

「いや、それは無理。さっき裏ルートって言ったでしょ? そういうプロがいるんだよね。盗んでもらって、僕が買ったってわけ!」

 この世には、知らない方が幸せなこともあるらしい。
 もし私が生きていると分かり、王城の蘇りの秘薬が無くなっているとバレたら……考えるだけで気を失ってしまいそう。
 王位を継承する第一王子にもし何かあったときの大事な秘薬を、私が使ってしまったということか。
 ……あれ?

「私の体って、どうやって復活させたの? エンヴィとは、しばらく会ってなかったはずよね?」

 冷静になってくると、次から次に疑問が浮かんでくる。
 一番まずい情報を共有してしまったのだ。これ以上なにを言われようと驚くことはないだろう。

「初めてマーガレットと会ったとき、肩についていた髪を払うフリをして、家に持って帰っていたんだ。ずーっと宝物として保管しといてよかったよ。いやぁ、髪の毛一本からでも人は蘇るんだね!」

 さも当然のように話すエンヴィを見て、開いた口が塞がらなかった。
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