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中間考査後のカラオケ店で…
しおりを挟むあの勉強会から四日後に中間考査が行われ、勉強の成果もあり、とても手ごたえを感じる事が出来て僕はご機嫌だった。
この調子ならいい結果が出そうな感じだ。
「亮、ご機嫌じゃん~~いい感じだった?」
「うん、大丈夫そう!雫のおかげだよ。勉強会して良かった~」
「良かったな!俺もいい感じ」
二人でテストの感触を伝えながら笑い合う。
そこに真司もやってきたけれど、彼の方は浮かない顔だ。
「皆いい感じっぽくて良かったな……」
「真司はあんまり?」
「……まぁまぁ書けたけど……俺も亮の家でやった勉強会に行きたかった…………」
何に落ち込んでいるのかと思ったら、どうやら僕の家に呼ばれなかったことに落ち込んでいる様子に、クスリと笑ってしまう。
真司可愛いな。
「あははっ、ごめんね。真司は部活忙しいと思ったから。今度は声かけるね」
「テスト前はないんだ。約束な」
「うん!」
真司の目が真剣で、必死な感じが凄く面白い……見た目とのギャップが凄いな。
こんな一面を見たら絶対女子にもモテる事間違いなし。
「おま、犬みたいだな~~可愛いじゃん」
「宝森に言われても嬉しくはない」
「なんだよ、亮ならいいのかよ」
「そうだな」
「はぁ~~?その違いはなんなの?差別だ~~」
「うっせ」
「あははっ」
雫と真司のやり取りが面白過ぎるので、僕も声を出して笑った。
テストが終わって安心したのもあったのかもしれない……なんだかこのまま帰るのも勿体ない感じがする。
「ねぇ、この後みんなでどっか行かない?せっかくテスト終わったんだし」
「いいね!」
「部活ないから俺も行く」
そうして僕たちはあれこれ話し合い、結局駅近のカラオケに行くことにしたのだった。
~・~・~・~・~
「なぁ。やっぱりお前たちも来るわけ?」
「ん~~~?亮クンがいるなら僕たちが来るのは当たり前じゃない?」
カラオケには結人と駆流クンも一緒に来ることになり、雫が駆流クンにかみついている。
こうやって見てると雫も小型犬って感じに見えてしまう。
「クラスも違うのに、なんでだよ!」
「まぁまぁ、僕の男前っぷりに嫉妬しないの」
「バカじゃねーの!あ、分かった。俺に会いたかったんだな!」
雫が得意げに言った言葉に、駆流クンがムキになって返す。
「はぁ?!そんなわけないし!バーカ、バーカ」
「照れんなよ~」
雫と駆流クンは延々と言い合いをしているけれど、どちらかが上手く流すので喧嘩にはならないし、案外相性がいいのかもしれない。
でもこんなこと二人に言ったら怒られそう。
カラオケ店の入り口でやり取りとしているので、そろそろ中に入ろうとすると、一瞬目の前がグラッとしたような感じがして、建物の柱に手をついた。
「亮?」
「ごめん、ちょっと躓いただけ」
「気を付けろよ」
結人はフッと表情を和らげ、僕の頭をくしゃっと撫でた。
眼鏡をしているのに顔を上げられない……あの勉強会の日以来、結人とは普通に話せている。
普通に話せる事が嬉しいのに、でもどこかちょっと気まずくて、気恥ずかしくて、目を合わせることが出来ない。
結人は普通にしてくれているのに――――
悶々と考えてしまう思考を振り払うかのように歌を熱唱し、カラオケを楽しむ事にしたのだった。
でもやっぱり歌の途中とかでクラッとする時がある。
「ちょっとトイレ行ってくる」
隣に座る結人にそう伝えると、トイレの手洗い場で眼鏡を外して手をついた。
鏡に映る自分の顔色は特に変わらず……でもなんとなく体調が変だ……いつもはこんなに眩暈なんてしないし。
そこに真司がやってきたので、咄嗟に姿勢を正し、取ってつけたような笑顔をする。
「真司もトイレだったんだ」
「いや……亮がちょっと様子変だったから」
真司にも気付かれていた?
でもどこがどうってわけじゃないし、あまり心配かけたくはない。
「ちょっとお腹が痛かったんだ。でももう大丈夫だよ」
「……そうか」
「うん。心配してくれてありがとう」
そういや眼鏡外してたんだった。
まだ真司と言えども素顔を見せる事に抵抗がある僕は、咄嗟に眼鏡をかけようとすると、真司の大きな手が伸びてきて僕の頬をサラリと撫でてきた。
その手は野球を一生懸命頑張っている手で、マメだらけでゴツゴツしている。
眼鏡をするのも忘れて真司を見ていると、なんだか心ここにあらずといった感じで頬を撫でているので、僕から声をかけた。
「真司?」
「…………っ、あ、いや、すまない」
「皆のところに戻ろうか」
「ああ」
僕は眼鏡をかけ、二人でトイレから皆が歌っている部屋へと戻っていったのだった。
でもさっきのはなんだったんだろう。
そんなに顔色が悪かったかな。
もしさっき頬を撫でたのが結人だったら……想像すると顔がどんどん熱くなってくるので、これは危険だと思った僕は咄嗟に思考を停止した。
とにかく体調も今は何ともないので気を付けていれば大丈夫かなと考え、せっかく皆が楽しんでいるところに水を差したくないし、そのままカラオケを堪能したのだった。
「はぁ~~歌ったな!」
退出時間になり、カラオケ店を出たところで、雫が実に清々しくそう言い放つ。
最初は駆流クンたちがいる事に文句を言っていた雫だったけれど、カラオケが終わる頃にはすっかり打ち解け、特に駆流クンとはかなり仲良くなっていた。
「腹減ったからムクド行こうぜ!」
「いいね~~僕もペコペコ」
「よし、決まり!」
こういう事も雫と駆流クンがいればすぐに決まってしまう。
同じ乙女ゲーム好きだし、二人は相性がいいと思っていたけれど、やっぱりその通りだったみたいで嬉しくなる。
それにしても暑いな……カラオケボックスにこもっていたからかな?
ムクドでしっかり水分補給しないと。
暑くて少しボーっとしている僕を心配したのか、結人がまたしても声をかけてくれる。
「亮、どした?」
「ん?いや、ちょっと暑いだけ。水分とったら大丈夫だと思う」
「……じゃあ、早く行こうぜ」
「うん」
誰も気付かないような事も結人なら気付いてくれるんだなぁ……幼馴染の役得感を感じ、少し顔が緩んでしまう。
この時は皆と一緒の時間がとても楽しくて、幸せで、どうしてこんなにふわふわするのか、ボーっとするのか、あまり深く考えてはいなかった。
でもムクドで水分補給しても解消されず、帰りの電車に乗っている最中に、いよいよ様子がおかしいと思った結人が僕のおでこに自身のおでこをくっつけてきたのだった。
結人のおでこ、冷たくて気持ちいいな――――
「あつっ!おい、凄い熱ぃぞ」
「……え?」
結人の言葉を聞いて、同じ電車に乗っていた駆流クンが僕の首に手を当てた。
「うわ!なにこれ……絶対熱あるやつじゃん!早く帰らないとっ」
え、そうなの?グラッとしてたのも熱が原因?
熱だと理解した途端にクラクラしてきて、さっきまで立っていたけれど、足に力が入らなくなってくる。
でも座席は空いてないし、どうしよう――――
「俺に寄っかかってろ」
そう言いながら結人が僕を引き寄せ、腕を背中に回し、脇を抱き抱えてくれたのだった。
そのおかげで足に力は入らなくても寄りかかる事ができ、僕は安心感に包まれた。
凄く重いはずなのに、片腕で軽々と支えてくれるんだ……結人は凄いなぁ。
それに彼の匂いに包まれていると本当に幸せな気持ちになる……このままずっとこうしていてほしい。
「亮?」
「……ごめ、ん…………ね……」
結局迷惑かけちゃったなぁ……熱が下がったらお礼を言わないと……すっかり安心しきった僕は一気に眠気に襲われ、電車の中で少し眠ってしまったのだった。
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