【完結】ままならぬ僕らのアオハルは。~嫌われていると思っていた幼馴染の不器用な執着愛は、ほんのり苦くて極上に甘い~

Tubling@書籍化&コミカライズ決定

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体育倉庫でのあれそれ

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 引き寄せられた時に駆流クンの顔が近づいてきて……咄嗟に顔を横に向けたのでキスは免れたけど。

 自分でも何が起こっているのか分からずに固まってしまう。

 ちゅっという乾いた音がして唇が離れ、熱のこもった駆流クンの視線にくぎ付けになってしまった。
 

 「へへっ。びっくりした?」

 「どうして……」

 「好きだから。亮クンの事……けっこう本気かも」

 「でも僕には好きな人がいて……!」

 「それって、結人?」


 図星を指されて返す言葉がなくなってしまう。

 どうやって返すのが正解?どう言っても傷つけてしまうのは変わらないのに……せっかく出来た友達を失いたくない。

 でも結人への気持ちを誤魔化す事なんて出来ないから。


 「ごめん、なさい」

 「謝ることないよ~~諦める気ないから。好きでいるのは自由だからね」

 「へ?」

 「よし、じゃあそろそろ帰ろう~~暗くなっちゃうし!」


 明るくそう言った駆流クンは僕に眼鏡をかけ、そのまま僕の手を引き、駅の方へと歩き始めた。

 
 「ちょっ……駆流クン!」

 
 僕の呼びかけにもおどけた態度で返してくる駆流クンに、さっきまでの事は現実なのかと思えてしまう。

 でもなかった事にしてはいけないよね。

 駆流クンにも失礼だし、ちゃんと考えないと。

 それでも僕の心は結人でいっぱいで、彼の事を思い出すと胸が熱くなるし、明日どんな顔で会えばとか考えてしまっていた。

 ごめんね、駆流クン。

 僕も諦めることは出来ない――――出来る限り結人に好きになってもらえるように頑張ってみようと思う。

 やれるだけやってダメならその時考えればいいし。

 それがきちんと気持ちを伝えてくれた、駆流への誠意だと思うから。

 そう決意し、その日は帰宅したのだった。

 ベッドに寝転がってスマホを見ると、結人からRINEがきている事に気付き、慌てて開いた。


 【先に帰った?】【声かけてくれればよかったのに】【帰ったら連絡くれ】


 3件…………ずっと無視しちゃってた。

 
 【ごめんね!忙しそうだったから先に帰ったんだ】
 
 
 僕は急いで返信を打った。

 これで良かったかな……忙しそうだったのもそうだけど、女子に囲まれた結人に声をかけられなかったとは言えない。

 駆流クンに誘われてたのも助かったな。

 駆流クン、本気だって言ってた…………意識しないで話せるかな。

 その日はなんだか夢見心地でふわふわしていたので、晩御飯を食べたり宿題をしたり、諸々終わらせたらすぐに眠りに落ちていった。

 キャパオーバーな事は考えないに限る。

 ふと、最近乙女ゲームを全くしていない事に気付いた。

 現実の方の恋愛で頭がいっぱいになってしまって、二次元に入り込めなくなってしまっていた。

 でももう無理……頭がパンクしそうなので、大人しく寝よう。

 しっかりと睡眠を貪り、翌日学校に行ったのだけど……なぜか放課後の体育祭実行委員会の時間、結人に体育倉庫で昨日の出来事について問い詰められるとは、思ってもいなかったのだった。


 ~・~・~・~・~


 「昨日は帰りに駆流とデートしてたのか?」


 体育祭実行委員会の時間になぜか結人に呼び出され、今は体育倉庫に二人きりだった。

 跳び箱を背に詰め寄られ、結人の顔がとても近くで色んな意味でドキドキしている。

 なんでこんな事に……それに何で君が知ってるの?!
 

 「デッ、デートじゃない……!!」

 「二人で手を繋いで帰ったんだろ?」

 「なんでそんな事まで!あ…………」

 「本当なのかよ……」


 これは絶対駆流クンから聞いたんだろうな……どうして駆流クンは結人に……それよりもなんで結人が怒ってるんだろう。

 僕と駆流クンが2人で帰って、自分を置いていったのが気に入らなかったのかな?


 「ごめんね、置いて帰っちゃって。今度から声かけるから」

 「違う、そういう事じゃない。…………亮は駆流の事が好き、なのか?」


 なんでそんな風に思うんだろう。

 手を繋いで二人で帰ったから?

 男同士は気持ち悪いって言われたらどうしようという思いがチラつくれど、とにかく自分の気持ちを誤解されるのはイヤだと思い、すぐにに否定したのだった。
 

 「違う!僕が好きなのは……僕は…………」


 結人が好きなんだよ。

 好き。

 この2つの言葉を言うだけなのに、喉まで出かけて飲み込んでしまう。

 今はまだ眼鏡も外せないし、自己肯定感も低すぎてすぐにうじうじしてしまう。

 自分に自信がないから彼の隣に立つ自分が想像出来ない。

 もう少し自信を持てたらその時は自分から――――

 そう思ってたのに、


 「他のヤツの事なんて俺が忘れさせる」


 幼馴染の大きな両手が、僕の頬を優しく包み込んだ。

 これはどういう状況……?

 俺が忘れさせるって…………呼吸するのも忘れて目の前の彼にくぎ付けになっていると、結人の顔がゆっくりと近付いてきたのだった。

 そして熱に浮かされていた時と同じ彼の柔らかい唇が、僕の唇を食んだ。


 「…………んっ」

 「俺を好きになれ」


 鋭い眼差し。

 瞳には熱がこもっていて、あんまりカッコいいから胸は自然と早鐘を打っていく。

 結人の言葉に何か言いたかったけれど、それは彼の口内へ吸い込まれて消えていった。

 前は触れるだけのキスだったのに、今日のは全然違う。

 まるで食べられているかのようなキス――――唇を開かれ、舌をねじ込まれ、彼の分厚い舌で口内がいっぱいになっていく。


 「んんっ……んぁっ……」


 息、出来ない……でも気持ちいい…………好きな人とするキスってこんなに気持ちがいいものなの?

 倉庫内には二人の息遣いだけが響き、何も考えられなくなっていく。


 「ふぅっ……んっ…………」


 苦しいけど止めてほしくない。でもそろそろ息が…………だんだんと頭が真っ白になっていき、膝がカクンッと頽れてしまう。


 「亮!」

 「……はっ……はぁ、はぁ…………っ」


 跳び箱にもたれながらズルズルとヘタリ込み、荒くなった呼吸を必死に整えた。

 俺を好きになれってどういう意味?

 結人のことを好きになったら、僕のことも好きになってくれるの?

 自分の気持ちも満足に言えないのにそんな事を聞けるはずもなく、さっきのキスが恥ずかしくて顔を上げられずにいる僕を大好きな幼馴染が優しく抱きしめた。


 「ごめん……苦しかったよな」


 全然嫌じゃなかったし、慌てて首を振って否定する。

 僕を気遣う彼の声が優しくて、匂いや温もりに顔を埋めた。

 いい匂い……ずっとこうしていたい。

 大好き、結人――――

 するとそこへ、

 ――――ガチャガチャッ――――

 人が来たのか、鍵が開かないという声が聞こえてくる。
 
 色々話したい事はあったけれど、騒ぎになりそうだったので慌ててそこから出た僕たちは、顔を見合わせて笑い合った。

 告白されたわけじゃないし、告白したわけじゃないけど、

 「俺を好きになれ」

 そう言われたことで、自分が彼を好きでいていいんだと言われた気がして、僕の心は幸せな気持ちになれたのだった。
 
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