【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
19 / 415

10.登山道の鳥居②(怖さレベル:★★☆)

しおりを挟む
独り残った私は、
さっきの耳鳴りと頭痛はなんだったのだろうと
ウダウダ考えていました。

高山病ならば、
あんなに即治るはずがありません。

――と。

東がなにやら首をひねりつつ、
一人で戻ってきたのです。

「あれ、小野里は?」
「…………。
 それがさ、いないんだよ……どこにも」
「えっ?!」

どこかまだノホホンとしていた気分が
一気に吹き飛びました。

「い、いないってどういう」
「あの神社の周辺さ、歩き回ったしアイツの名前も呼んだけど、
 足跡もないし、反応もない。……こっち、すれ違ってないよねぇ」
「来てない……うわ、どうしよう」

まさか、
こんなところではぐれるなんて。

山の怖さなんて、学生の時に
イヤと言うほど身に染みています。

慌てて携帯で連絡しようとすれば、

「……えっ」

圏外。

まさか、そんなわけないのです。

この山は民家も随所にあって、
学生時代何度も登ったものの、
どのルートであっても電波が届かないなんてことありませんでした。

「嘘……」

東の携帯も同じらしく、
液晶を見つめて呆然としています。

「と、とにかく、もう一回さがそ。私も行くから」
「う、うん……」

と、二人揃って社の方へ行こうとした時です。

――シュッ、ボッ。

「えっ」

マッチの擦れるような音と主に、
目前の鳥居の足元から炎が吹き上がりました。

「えっ、何!?」

東もその炎に気づいて跳びあがります。

「うわ、どうしよ!?」
「け、消せるモンなんて持ってないし……!」

消火器なんてものはこの山中存在しませんし、
近場に水辺もありません。

その上連絡手段は絶たれていて、
消防車を呼ぶこともできないのです。

「お、小野里! ドコにいるの!?」
「小野里! 出てきてよ!!」

二人して慌てふためきながら周囲の森に
彼女の名を叫びますが、返答ひとつありません。

「と、とりあえず電波あるトコに行こう!
 もしかしたら小野里も戻ってるかもしれないし!」
「そ、そうだね!」

鳥居の炎は次第に強さを増し、
周囲の木々や雑草に燃え移って、
神社にまでその触手を伸ばす勢いです。

小野里の姿は見つからぬものの、
このままここにいれば非常に危険でした。

私たちは携帯を片手に、
急いで元の道を戻り始めました。

「ッ、ハァ、ハァ……」

なかなか電波が入りません。

足がもつれそうになりながら、
歩きつづけてしばらく。

あの第一の鳥居が見えました。

「ッ、きたっ!」

鳥居をくぐって歩道に戻った瞬間、
ウソのように一瞬で電波が復活したのです。

「私、消防に連絡入れるから、東は小野里に!」
「わかった、すぐかける!」

携帯を取り落としそうになりつつ消防へ連絡を入れ、
山火事が起きていることを説明し、
例の神社の場所を話すもどうにも会話がかみ合いません。

『○○山ですよね? 鳥居、ですか……聞いたことがありませんが』
「え、でも、げんに煙だって上がってるんですよ! 今だって」

と、そこまで言ってさきほど歩いてきた道を振り返ると、

「えっ……?」

無いのです。

あの、通ってきた道が。

それどころか、
まさに今、
目印として帰ってきた鳥居それ自体も。

そこは、まるで最初からそうであったかのように、
ゆるやかな崖だけが存在していました。

『もしもし?』
「あ、す、すいません……確認してまたご連絡します……」

あまりのショックに呆然としていた意識がハッと戻り、
慌てて電話を切りました。

まるきりイタズラ電話のようになってしまったことを恥じつつ、
東の方へ視線を向けます。

「……つながらないなぁ……あっ、つながった!」
「え、ウソ!」

片足でタンタンと床を叩いていた東は、
ハッと両手で携帯を握りました。

「もしもし?! ……ちょ、心配させんなって。
 …………え?」

ホッとしたような東の表情が、
みるみるうちに強ばりました。

「あんた……まだ、うちにいるの?」
「……えっ?」

彼女から漏れた言葉に、
私はゾっと冷たいものが走り抜けました。

東は隣で耳をそばだてるこちらに気づいて、
通話をスピーカーモードに切り替えました。

『うん。だって、予定来週じゃなかったっけ?
 おっかしいなぁ……カレンダーにマークまでつけたのに。
 ……あ、河ちゃんも一緒だっけ? ゴメン、って謝っといて~』

ゆるゆるな彼女の声は、
確かに小野里のものに違いありません。

おまけに、後ろの方からは彼女の子どもと思われる、
男の子のグズリ声まで聞こえてきています。

「……河本」

通を終えた東が、
混乱と恐怖のごちゃ混ぜになった表情で言いました。

「あたしたち……危なかったのかな」
「……え」
「呼ばれてたのかな……あたしたち」

そう呟いて黙り込んだ東に、
私はなにも返事できませんでした。

あの鳥居を見つけたのも、
その先へ行こうと提案したのも、
あの場にいた小野里です。

しかし、その当人は、
ここから遠く離れた東京にいるというのです。

私たちと一緒に登った彼女は、
いったいなんだったのでしょうか?

そして、あの鳥居が燃えてしまったのも、
なにか関係があったのでしょうか。

彼女たち二人とは、それをキッカケに、
よく連絡をとるようになりました。

どうしてか、彼女たちといると、
不思議なことによく遭遇するんです。

また、機会があったらお話させて頂きますね。
ありがとうございました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ママが呼んでいる

杏樹まじゅ
ホラー
鐘が鳴る。夜が来る。──ママが彼らを呼んでいる。 京都の大学に通う九条マコト(くじょうまこと)と恋人の新田ヒナ(あらたひな)は或る日、所属するオカルトサークルの仲間と、島根にあるという小さな寒村、真理弥村(まりやむら)に向かう。隠れキリシタンの末裔が暮らすというその村には百年前まで、教会に人身御供を捧げていたという伝承があるのだった。その時、教会の鐘が大きな音を立てて鳴り響く。そして二人は目撃する。彼らを待ち受ける、村の「夜」の姿を──。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

処理中です...