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24.紫イワナの怪③(怖さレベル:★★☆)
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「ア、あぁ……ガッ、アがぁ」
「だっ、大丈夫ですか!?」
まさか毒!? と思い、
料理に集中しているベテランたちを呼ぼうと
彼から離れようとしたその瞬間。
「ぐ、があぁァああ」
断末魔のごとき悲鳴を上げた、
日に焼けた健康的な遠山のその皮膚の色が――
またたく間に真っ青に染まりました。
ほんの一瞬で、彼の健康的な肌の色は、
まったく血の気の通わない、
マネキン人形のようになってしまったのです。
「ぐお……が、ぃぎいっ」
うめき声をあげてもだえる彼は、
まるきり尋常な状態ではありません。
「ひえっ……ひ、いぃっ」
ボクは眼前で起こったあまりのできごとに、
思わずその場で腰が抜けてしまいました。
「どうしたっ!?」
「飯野さん! と……遠山さん!?」
真っ青な唇を震わせてその場に
倒れ伏して痙攣している遠山に、
集ってきたメンバーたちは驚愕に打ち震えています。
「き、救急車!!」
「ペンションの管理人へ連絡を!」
皮膚も唇も真っ青に染まっている彼の姿に、
ボクたちは救急などに連絡を入れつつも、
うすら寒いものを感じていました。
そして、山奥であったがゆえに、
かなりの時間を置いて到着した救急車によって、
彼は運ばれて行きました。
あの恐ろしい程真っ青であった全身も、
救急隊が現れる頃には人肌の色味に戻っており、
目は覚まさぬものの、
呼吸も心臓も確かに動いていました。
付き添いで行った一名を除き、
他のメンバーはペンションに残ったものの、
食事の場であんなことがあった為、
とても再開する気にもなれず、
イワナは各自で持ち帰ることにして、
揃って帰宅することに話が決まりました。
「すみません、無理を言ってしまって」
「いいえ……お仲間の方、大事ないといいですね」
ペンションの管理人に頭を下げる加藤について、
揃って謝るも、彼は労うように声をかけてくれました。
「ええ……紫色のイワナを釣ったらすぐ川へ戻せ、
って言われていたのに……この辺では常識なんですか?」
「は……? 紫色のイワナ、ですか?
ここの川で……そんなモノが?」
「えっ……?」
管理人のリアクションに、
ボクと加藤は顔を見合わせました。
「あ、あの……昨日、近くのカフェで
この辺に住んでるっていうおじいさんに教えてもらったんですが」
「紫色のイワナ……ですか。うーん、地方によっては、
紫がかった綺麗なイワナが釣れるとはいいますけど、
このあたりでは……」
「ええと、管理人さんはここに住まれて長いんですか?」
「ええ、うちは祖父の代からここですからねぇ」
首を傾げる管理人をしり目に、
ボクと加藤はぞわぞわと恐怖に襲われました。
昨日の、あのお爺さんはなんだったのでしょう?
地元に古くからいる人ですら知らないという、
紫色のイワナ。
それをとってはいけない、と忠告した老人。
そして、それをとっておかしくなった遠山。
いや、ふつうに考えれば、
あの人は忠告をしてくれたのだから、
良い人であったと思うべきです。
しかし、”マズいから”なんて中途半端な忠告をせず、
もっとはっきり”凶暴だから”とか”毒があるから”とでも言ってくれれば
防げたのではないか、とも思ってしまうのです。
「な、なぁ……オレ、思い出したんだけどさ」
立ち去り際、加藤がボソリと呟きました。
「あの、遠山が釣ったイワナ、あっちこっちに傷があっただろ?
で、あのじいさん……右腕がおかしかったじゃないか。
オレ、見たんだけど……あのイワナ、右の尾ひれの辺り、爛れてた」
「えっ……」
ボクはそれを聞いて、
あのイワナのことを思い返していました。
遠山が真っ青になって倒れ伏し、
救急隊の到着を待つ間。
皆で彼の意識を戻そうと、
肩を揺らしたり、叩いたりしていたその時。
彼の腕に突き刺さっていたはずの
イワナの姿がいつの間にか消え去り、
遠くに見えた木陰の隅に――あの老人らしき顔が覗いていたことを。
「……っ」
すべて、偶然であったのかもしれません。
現地によく釣りに来ていたおじいさんが、
気になって見に来た、で済む話でしょう。
しかし、それにしては、今は釣りのできない身で、
わざわざ僕たちの様子を見に来たのか。
まるで起きることを知っていたかのように、
我々のメンバーの元に忠告に来たのか――。
謎は解けぬまま、
釣りの愛好会は宙ぶらりんのまま、未だ存続しています。
そして、遠山は命に別状はなく、
意識もすぐに復活しました。
当人にあの時のことを訊ねると、
「痛ッ! って思ったら魚が刺さってた。
突然頭がぐちゃぐちゃにかき回されるみたいに意識が消えて、
気づいたら病室だった」
という、ありきたりな感想が返ってきたのみでした。
しかし、彼の右腕――それは、
あの老人のように変色し、
上手く動かなくなってしまったのです。
しかし、それでもボクらは、
未だ趣味で釣りを続けています。
意地――とまではいかぬものの、
やはり、ちょっとした頑固さのようなものかもしれません。
ですが、
うちの愛好会には鉄壁のおきてが追加されました。
見たこともない色の魚には、
ぜったいに手を出さないこと。
しかし……あれから一度も、
あんな鮮やかな色の魚を見たことはありません。
「だっ、大丈夫ですか!?」
まさか毒!? と思い、
料理に集中しているベテランたちを呼ぼうと
彼から離れようとしたその瞬間。
「ぐ、があぁァああ」
断末魔のごとき悲鳴を上げた、
日に焼けた健康的な遠山のその皮膚の色が――
またたく間に真っ青に染まりました。
ほんの一瞬で、彼の健康的な肌の色は、
まったく血の気の通わない、
マネキン人形のようになってしまったのです。
「ぐお……が、ぃぎいっ」
うめき声をあげてもだえる彼は、
まるきり尋常な状態ではありません。
「ひえっ……ひ、いぃっ」
ボクは眼前で起こったあまりのできごとに、
思わずその場で腰が抜けてしまいました。
「どうしたっ!?」
「飯野さん! と……遠山さん!?」
真っ青な唇を震わせてその場に
倒れ伏して痙攣している遠山に、
集ってきたメンバーたちは驚愕に打ち震えています。
「き、救急車!!」
「ペンションの管理人へ連絡を!」
皮膚も唇も真っ青に染まっている彼の姿に、
ボクたちは救急などに連絡を入れつつも、
うすら寒いものを感じていました。
そして、山奥であったがゆえに、
かなりの時間を置いて到着した救急車によって、
彼は運ばれて行きました。
あの恐ろしい程真っ青であった全身も、
救急隊が現れる頃には人肌の色味に戻っており、
目は覚まさぬものの、
呼吸も心臓も確かに動いていました。
付き添いで行った一名を除き、
他のメンバーはペンションに残ったものの、
食事の場であんなことがあった為、
とても再開する気にもなれず、
イワナは各自で持ち帰ることにして、
揃って帰宅することに話が決まりました。
「すみません、無理を言ってしまって」
「いいえ……お仲間の方、大事ないといいですね」
ペンションの管理人に頭を下げる加藤について、
揃って謝るも、彼は労うように声をかけてくれました。
「ええ……紫色のイワナを釣ったらすぐ川へ戻せ、
って言われていたのに……この辺では常識なんですか?」
「は……? 紫色のイワナ、ですか?
ここの川で……そんなモノが?」
「えっ……?」
管理人のリアクションに、
ボクと加藤は顔を見合わせました。
「あ、あの……昨日、近くのカフェで
この辺に住んでるっていうおじいさんに教えてもらったんですが」
「紫色のイワナ……ですか。うーん、地方によっては、
紫がかった綺麗なイワナが釣れるとはいいますけど、
このあたりでは……」
「ええと、管理人さんはここに住まれて長いんですか?」
「ええ、うちは祖父の代からここですからねぇ」
首を傾げる管理人をしり目に、
ボクと加藤はぞわぞわと恐怖に襲われました。
昨日の、あのお爺さんはなんだったのでしょう?
地元に古くからいる人ですら知らないという、
紫色のイワナ。
それをとってはいけない、と忠告した老人。
そして、それをとっておかしくなった遠山。
いや、ふつうに考えれば、
あの人は忠告をしてくれたのだから、
良い人であったと思うべきです。
しかし、”マズいから”なんて中途半端な忠告をせず、
もっとはっきり”凶暴だから”とか”毒があるから”とでも言ってくれれば
防げたのではないか、とも思ってしまうのです。
「な、なぁ……オレ、思い出したんだけどさ」
立ち去り際、加藤がボソリと呟きました。
「あの、遠山が釣ったイワナ、あっちこっちに傷があっただろ?
で、あのじいさん……右腕がおかしかったじゃないか。
オレ、見たんだけど……あのイワナ、右の尾ひれの辺り、爛れてた」
「えっ……」
ボクはそれを聞いて、
あのイワナのことを思い返していました。
遠山が真っ青になって倒れ伏し、
救急隊の到着を待つ間。
皆で彼の意識を戻そうと、
肩を揺らしたり、叩いたりしていたその時。
彼の腕に突き刺さっていたはずの
イワナの姿がいつの間にか消え去り、
遠くに見えた木陰の隅に――あの老人らしき顔が覗いていたことを。
「……っ」
すべて、偶然であったのかもしれません。
現地によく釣りに来ていたおじいさんが、
気になって見に来た、で済む話でしょう。
しかし、それにしては、今は釣りのできない身で、
わざわざ僕たちの様子を見に来たのか。
まるで起きることを知っていたかのように、
我々のメンバーの元に忠告に来たのか――。
謎は解けぬまま、
釣りの愛好会は宙ぶらりんのまま、未だ存続しています。
そして、遠山は命に別状はなく、
意識もすぐに復活しました。
当人にあの時のことを訊ねると、
「痛ッ! って思ったら魚が刺さってた。
突然頭がぐちゃぐちゃにかき回されるみたいに意識が消えて、
気づいたら病室だった」
という、ありきたりな感想が返ってきたのみでした。
しかし、彼の右腕――それは、
あの老人のように変色し、
上手く動かなくなってしまったのです。
しかし、それでもボクらは、
未だ趣味で釣りを続けています。
意地――とまではいかぬものの、
やはり、ちょっとした頑固さのようなものかもしれません。
ですが、
うちの愛好会には鉄壁のおきてが追加されました。
見たこともない色の魚には、
ぜったいに手を出さないこと。
しかし……あれから一度も、
あんな鮮やかな色の魚を見たことはありません。
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