【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ

文字の大きさ
218 / 415

90.合宿所の夜①(怖さレベル:★★☆)

しおりを挟む
『10代女性 堀米様(仮名)』

そう。あれは高校生の夏休みに起きた、不思議なできごとです。

私は卓球部に所属していて、
その夏は合宿の為、部活メンバー皆でとある
山奥の練習場へ訪れることになりました。

部員全員となるとなかなかの大所帯で、
宿泊用の部屋も、男女別とはいえ、大広間の部屋。

泊まる日数は三日程度ではあるものの、
スケジュール表にはびっしり練習の予定が組み込まれていて、
少々憂鬱にもなったものです。

初日。

現地に到着してすぐに卓球台のセッティングに入り、昼食前に軽めの運動。

その後、食事をとって昼休憩になったその間に、私たち女子部員十名は、
寝室として宛がわれている大広間へと荷物を置くために向かいました。

「わっ……なんていうか……古い……」

友人のリカが、入室してすぐにボソッと感想を漏らしました。

確かに彼女がそう呟くのも共感できるほど、
そこは古びた雰囲気を放っていました。

ところどころ違う畳の色、剥げかけてそのままにされた壁の塗装。
ヒュウヒュウとどこからか吹き込む隙間風に、
エアコンのない扇風機だけが設置された部屋。

公立高校の悲しさか、予算の都合なのでしょうが、
なかなかのオンボロ具合です。

「えーっ、ここで寝るのぉ?」
「うちのバァちゃんちより古いよ、これ」

他のメンバーも口々に文句を言いつつも、
来てしまったものはどうしようもありません。

仕方なしに、しぶしぶと壁際に荷物を寄せていると、

「……ねぇ、なんかさぁ。あそこの壁のシミ、人の形みたいじゃない?」

さきに荷物を下ろしたリカが、部屋のある一点を指さしました。

「ひ、人の形……?」

彼女が見ているのは、この大広間の入口の隅。
ちょうど四隅の北側にあたる場所です。

「うわっ……ホントだ!」
「え~っ、それっぽく見えるだけじゃない?」

他の部員たちも興味を持ったらしく、
そろって皆の視線がそちらへと向かいました。

視線の的、薄茶けたその壁には、
確かに濃い茶色のシミがぼんやりと浮かび上がっています。

形は、彼女の言った通り、長髪の女性が猫背気味に横を
向いているようにも見える、曖昧なシルエットでした。

「もーっ、リカ! 変なコト言わないでよ」

今日からここで寝泊まりするというのに、と彼女のおでこを
つつくも、リカは悪びれもなく笑いつつ、

「ゴメンゴメン。……でもさぁ、こういうトコって、
 どうしたって怖い雰囲気あるじゃん?
 もしかしたら……畳の裏とかに、お札貼ってあったりして!」
「い、いやいや……ないでしょ。ない、って」

そんな現実離れしたことあってたまるかと全力で首を振れば、
彼女はニヤリと上目遣いに腕を組んで、

「そーかなぁ? 卒業しちゃった先輩に聞いたら、
 いつだったかの合宿先で、額縁の裏にマジで見つけた、って話だよ」
「えっ……ほんと?」

そんなできごとがリアルにあるなんて、と皆がビビりつつ、
なるべくそのシミを目に入れぬよう、慌てて荷物を片付けたのでした。



そして、その日の就寝時。

消灯時刻は夜の十時、などと決められていましたが、そこは高校生。

部活の仲間たちと一緒、などという状況で、
素直にさぁ寝よう、なんてなるはずもありません。

布団を円形にぐるりと敷き、おしゃべりに花を咲かせていました。

「あの後輩の子さぁ、テニス部の子が好きらしいよ~」
「へぇー! でも、その子、もう付き合ってんじゃなかったっけ?」
「あれでしょ? 生徒会の子だっけ? めっちゃ難関大学進学するって聞いたけど……」

などという、取り留めもない会話で盛り上がっていたのですが、

「ねぇ、なーちゃんはどう思……って、もう寝てるし」
「あ、こっちのユキもだ」

なにせ、過密スケジュールで疲れ切った日の夜です。

ワイワイとはしゃいでいた声が、いつの間にやら、
一人、また一人と減っていきました。

「みんな、寝ちゃったねぇ」
「あーあ、残念。もういっちょ、枕投げでもしたかったのになぁ」

ゴロゴロと布団の上を旋回しつつ、リカは欠伸しつつ伸びをしました。

「それは明日のお楽しみ、かな。私たちもそろそろ寝よっか」
「ん~……そーだねぇ」

彼女はまだ話したりなさそうに、
しばらく手足をばたばたさせていました。

しかしどうやら、眠気には勝てなかったようで、
なにごとかをもにょもにょと呟きつつ、柔らかい布団の上に沈んでいきました。

(さぁ、私も寝よう……)

とは思ったものの、他のメンバーと異なり、
私は枕が変わるとなかなか寝付けない性質です。

どうせ熟睡はできないなぁ、と半ば諦めつつ、
ゴロリと背中をしき布につけました。

>>
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百の話を語り終えたなら

コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」 これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。 誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。 日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。 そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき—— あなたは、もう後戻りできない。 ■1話完結の百物語形式 ■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ ■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感 最後の一話を読んだとき、

少し怖いホラー短編集(文字数500以下)

仙 岳美
ホラー
文字数500以下のショート集です、難しく無いので気楽にどうぞ。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

処理中です...