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97.理科室の人体模型①(怖さレベル:★★★)
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(怖さレベル:★★★:旧2ch 洒落怖くらいの話)
『10代男性 佐々川さん(仮)』
よくある都市伝説で、こんな内容を聞いたことはありませんか?
学校の理科室にある人体模型。
全国に点在するそれらのうちのどれかに、
実は人間の死体を使ったものがあるのだと。
腐らないように大量の防腐剤がしみ込まされ、
なにくわぬ顔をした教師に、教材の一つとして使われているのだと。
あり得ない、と思いますよね。
いくら腐らないようにしていたって、人体をそう何十年も
保つほど強力なものを、おいそれと使えるはずもない。
その上、現代では人体模型自体、
授業で使われることなんてめったにないでしょう?
昔、まことしやかに広められたただのウワサ。
学校の怪談や、百物語が流行った頃の作り話。
そう――思っていたんです、僕も。
僕が高校生の頃のことです。
自分はいわゆる平均男というやつで、
成績に関しては良いとも悪いともいえない、中途半端な生徒でした。
クラスメイト四十人の中の、ちょうど二十位。
まさにアベレージマンと言いますか、
特筆すべき点がない、なんて冗談交じりでよく言われたものです。
それでも、二年の終わりくらいになってくれば、
進路を見据えて焦り始めてきて。
三年生に上がる頃には、気合いを入れて勉強にも取り組むようになっていました。
その三年のクラスの副担任は、新しく転任してきた先生で、
理科、特に生物を得意としていました。
まだ若く、気さくで肩ひじ張らない性格で、すぐに生徒とは打ち解け、
特に僕は好きな映画のジャンルが同じで、よく話すようになったのです。
「なぁ則本。ここ、なんだっけ?」
「バッカ、ここはあれだろ。えっと……あれ……?」
「お前らなぁ、授業聞いてなかっただろ。ここはこっちの……」
ある日の放課後です。
僕は友人の則本と一緒に、理科準備室を使って、
先生に勉強を教えてもらっていました。
この則本はいつもポジティブで明るい良いヤツなんですが、
いかんせん頭の方は悪く、特に理数系はからっきし。
僕がここに入り浸って勉強を学んでいることを聞いてから、
いい機会だとついてくるようになったのです。
「ここ、特に重要だから忘れんなよ。ほら、赤線ひいとけ」
「あーい」
先生は部活の顧問をやっていない為、
いつも集まるのは放課後です。
時間としては、三十分少々の短い時間。
しかし、四十対一の授業ではなく、二対一での個人授業はトクベツ感があって、
大嫌いな勉強をするための時間であるにも関わらず、けっこう楽しみにしていました。
「あとそうだな……ここ、意味わかるか? こっちから引用して……っと」
プププ、プププ。
と、準備室の壁に備え付けられている、
古い小型の受話器が音を鳴らしました。
則本を教えていた先生が立ちあがり、のんびりと受話器を上げます。
「はい、こちら理科準備室。……えっ? あ、はい!
わかりました、すぐ向かいます」
話している途中から慌てたような表情になった先生は、
ガチャっと受話器を下ろしました。
「なぁに先生、呼び出しー?」
「おう。財布が届いたらしいんだが、どうやらそれが俺のらしい。
いつ落としたんだか……ちょっと取りに行ってくる」
「オレたち、帰った方がいい?」
まだ今日の勉強は始めて十分も経っていませんが、
時間がかかるようならと、そう声をかけました。
「ほんとうに俺のか確認して受け取ってくるだけだから、すぐ終わるだろ。
自習でもして待ってろよ。あっ、あぶねぇモンには触んなよー」
「「はーい」」
僕らがおとなしく返事をしたことに苦笑いしつつ、
先生は軽く手を振って出ていってしまいました。
「……さーて」
と、静かになった準備室内で、ふいに則本が声を上げました。
「じゃあ、佐々川クン。ちょっとやりますか?」
「は? なんだよ」
ゴキゴキとわざとらしく指を鳴らした彼が、
すっくとイスから立ちあがったのです。
「なにボーッとしてんだよ。やるだろ? 宝探し」
「た、宝ってな……ここ、学校だぞ?」
「だからこそ、だろー? 先生まだ若いし、ぜってーエロ本とか隠してるっしょ」
ニマニマと笑みを浮かべつつ意味深に指先をくねらせる則本に、
僕はあきれ果てたものの、
「そう簡単に見つかるとは思えねぇけど……でも、ま、確かに。
ちょっと……興味はあるよな」
「へっへっへ、このムッツリ野郎が!」
「おっ、お前がオープン過ぎるんだろうが!」
と、男子学生ならではのくだらない会話を交わしつつ、
僕らは壁伝いに設置された棚を漁ることにしました。
なにせ、理科準備室という名だけはあって、
両側はびっちりガラス戸棚が鎮座しています。
ガラス戸は基本施錠されていて触れない為、
僕たちは必然的に下の段、引き出しやら引き戸やらをチェックし始めました。
「うっへぇ、ホコリ臭っ……おまけになんも入ってねぇ」
「うわっ、すげぇ古いわら半紙入ってる……いつのテスト用紙だよ、これ」
しかし、探索はけして順調とはいかず、
カギのかかっていないそれらの扉の中には、大したものが見当たりません。
「んー……なーんもねぇな」
「だなぁ……っと」
二人揃って、なんの収穫もないことにため息をついたその時。
ふと、視線がある場所へと向かいました。
「そういえば……なんでここに掃除用具入れがあるんだ?」
理科準備室は、その名の通り、
先生方の資料だとか実験器具をしまっておく部屋。
すぐ間隣にある理科室は学生がメインで使っていて、
そちらにも確か、用具入れはあったはず。
さほど広くもないこの部屋に、わざわざ置く必要があるとも思えません。
それに、先生がこれを開けて掃除しているところ自体、
いままで見たこともないし――。
「こりゃ、ビンゴかもしれねぇぞ」
則本がニンマリと笑みを浮かべ、
手をワキワキさせながら用具入れの前に立ちました。
>>
『10代男性 佐々川さん(仮)』
よくある都市伝説で、こんな内容を聞いたことはありませんか?
学校の理科室にある人体模型。
全国に点在するそれらのうちのどれかに、
実は人間の死体を使ったものがあるのだと。
腐らないように大量の防腐剤がしみ込まされ、
なにくわぬ顔をした教師に、教材の一つとして使われているのだと。
あり得ない、と思いますよね。
いくら腐らないようにしていたって、人体をそう何十年も
保つほど強力なものを、おいそれと使えるはずもない。
その上、現代では人体模型自体、
授業で使われることなんてめったにないでしょう?
昔、まことしやかに広められたただのウワサ。
学校の怪談や、百物語が流行った頃の作り話。
そう――思っていたんです、僕も。
僕が高校生の頃のことです。
自分はいわゆる平均男というやつで、
成績に関しては良いとも悪いともいえない、中途半端な生徒でした。
クラスメイト四十人の中の、ちょうど二十位。
まさにアベレージマンと言いますか、
特筆すべき点がない、なんて冗談交じりでよく言われたものです。
それでも、二年の終わりくらいになってくれば、
進路を見据えて焦り始めてきて。
三年生に上がる頃には、気合いを入れて勉強にも取り組むようになっていました。
その三年のクラスの副担任は、新しく転任してきた先生で、
理科、特に生物を得意としていました。
まだ若く、気さくで肩ひじ張らない性格で、すぐに生徒とは打ち解け、
特に僕は好きな映画のジャンルが同じで、よく話すようになったのです。
「なぁ則本。ここ、なんだっけ?」
「バッカ、ここはあれだろ。えっと……あれ……?」
「お前らなぁ、授業聞いてなかっただろ。ここはこっちの……」
ある日の放課後です。
僕は友人の則本と一緒に、理科準備室を使って、
先生に勉強を教えてもらっていました。
この則本はいつもポジティブで明るい良いヤツなんですが、
いかんせん頭の方は悪く、特に理数系はからっきし。
僕がここに入り浸って勉強を学んでいることを聞いてから、
いい機会だとついてくるようになったのです。
「ここ、特に重要だから忘れんなよ。ほら、赤線ひいとけ」
「あーい」
先生は部活の顧問をやっていない為、
いつも集まるのは放課後です。
時間としては、三十分少々の短い時間。
しかし、四十対一の授業ではなく、二対一での個人授業はトクベツ感があって、
大嫌いな勉強をするための時間であるにも関わらず、けっこう楽しみにしていました。
「あとそうだな……ここ、意味わかるか? こっちから引用して……っと」
プププ、プププ。
と、準備室の壁に備え付けられている、
古い小型の受話器が音を鳴らしました。
則本を教えていた先生が立ちあがり、のんびりと受話器を上げます。
「はい、こちら理科準備室。……えっ? あ、はい!
わかりました、すぐ向かいます」
話している途中から慌てたような表情になった先生は、
ガチャっと受話器を下ろしました。
「なぁに先生、呼び出しー?」
「おう。財布が届いたらしいんだが、どうやらそれが俺のらしい。
いつ落としたんだか……ちょっと取りに行ってくる」
「オレたち、帰った方がいい?」
まだ今日の勉強は始めて十分も経っていませんが、
時間がかかるようならと、そう声をかけました。
「ほんとうに俺のか確認して受け取ってくるだけだから、すぐ終わるだろ。
自習でもして待ってろよ。あっ、あぶねぇモンには触んなよー」
「「はーい」」
僕らがおとなしく返事をしたことに苦笑いしつつ、
先生は軽く手を振って出ていってしまいました。
「……さーて」
と、静かになった準備室内で、ふいに則本が声を上げました。
「じゃあ、佐々川クン。ちょっとやりますか?」
「は? なんだよ」
ゴキゴキとわざとらしく指を鳴らした彼が、
すっくとイスから立ちあがったのです。
「なにボーッとしてんだよ。やるだろ? 宝探し」
「た、宝ってな……ここ、学校だぞ?」
「だからこそ、だろー? 先生まだ若いし、ぜってーエロ本とか隠してるっしょ」
ニマニマと笑みを浮かべつつ意味深に指先をくねらせる則本に、
僕はあきれ果てたものの、
「そう簡単に見つかるとは思えねぇけど……でも、ま、確かに。
ちょっと……興味はあるよな」
「へっへっへ、このムッツリ野郎が!」
「おっ、お前がオープン過ぎるんだろうが!」
と、男子学生ならではのくだらない会話を交わしつつ、
僕らは壁伝いに設置された棚を漁ることにしました。
なにせ、理科準備室という名だけはあって、
両側はびっちりガラス戸棚が鎮座しています。
ガラス戸は基本施錠されていて触れない為、
僕たちは必然的に下の段、引き出しやら引き戸やらをチェックし始めました。
「うっへぇ、ホコリ臭っ……おまけになんも入ってねぇ」
「うわっ、すげぇ古いわら半紙入ってる……いつのテスト用紙だよ、これ」
しかし、探索はけして順調とはいかず、
カギのかかっていないそれらの扉の中には、大したものが見当たりません。
「んー……なーんもねぇな」
「だなぁ……っと」
二人揃って、なんの収穫もないことにため息をついたその時。
ふと、視線がある場所へと向かいました。
「そういえば……なんでここに掃除用具入れがあるんだ?」
理科準備室は、その名の通り、
先生方の資料だとか実験器具をしまっておく部屋。
すぐ間隣にある理科室は学生がメインで使っていて、
そちらにも確か、用具入れはあったはず。
さほど広くもないこの部屋に、わざわざ置く必要があるとも思えません。
それに、先生がこれを開けて掃除しているところ自体、
いままで見たこともないし――。
「こりゃ、ビンゴかもしれねぇぞ」
則本がニンマリと笑みを浮かべ、
手をワキワキさせながら用具入れの前に立ちました。
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