契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~

影になっても彼らは邪魔をしてきます

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 レティを救うために、必要な力をイメージする。光の剣。守りたい相手を闇から救い出せる温かな力だ。

「第2の契約者セイラ、光の力を我に与えよ」
「……与える」

 俺の手の中には光が溢れる。剣をイメージしたはずなのに、現れたのは刀だ。この際、形なんてなんでもいい。拳が武器だと言われれば喜んでぶん回すし、歯ブラシが武器だと言われれば相手の口にねじ込んで戦意を喪失させてやる。

 レティに向かって一歩を踏む出す。まず邪魔をするのは今もイヤらしく笑っているホリだ。俺の嫌いな、相手を小ばかにしたようなニヤニヤは影になっても変わらないようだ。

「邪魔をするな、反逆者!」

 目が合うと、横柄な態度で見下ろしてくる。いつもは媚びた態度を取ってくるが、本心では俺を馬鹿にしていたのだろう。大声で命令してくる。

「邪魔なのはそっちだ」

 ホリが何百人集まろうと、俺には傷一つつけられない。こいつ相手に、わざわざ光の刀を振るうまでもない。言葉の刃が相応だ。

「消えろ!」

 その一言に、レティに対する想いをのせる。たったそれだけで、ホリの影は飛んでいった。プライドだけあって実力のない奴なんてこんなもんだ。

 ホリが消えても、レティを囲むハヤテ達は意に介さない。彼らにとってホリは使い捨てなのだろう。俺と同じように。
 近づいていっても、誰一人として振り向かない。俺なんて気にするに値しないとでも思っているのだろう。
 それならそれで構わない。俺が動きやすいだけだ。

「おいマヤ」

 やはり返事がない。ゆっくりと刀を構えると、ようやく反応があった。だけどもう遅い。

「本当に何も学ばないんだなお前は」

 一瞬見えた怯えた顔は、すぐに散っていった。
 その少し奥で叫んでいたのはタケヤだった。

「怖いのは最初だけだ。ほらこっちに来るんだ」

 レティ肩にに向かって何度も手を伸ばす。影が実際に触れることはないが、手が近づくたびにレティが怯えているのが分かった。

「うるせえ」

 後ろから背中を殴ると穴が開き、タケヤも散っていった。
 あとはハヤテだ。こいつもどうせすぐに消える。刀を構えると、今度は反応があった。何もなかったはずのその手には剣が握らられ、ゆっくり振った刀を押し返してくる。
 だが所詮、相手は影だ。

「光の中に消えやがれ!」

 刀の放つ光が強くなり、剣からまるごとハヤテを包み込み、影はどこかへ消えていた。
 これでレティを脅かす恐怖は消えた。それでも彼女は、怯え、耳を塞いだままだ。目線を合わせるようと足を曲げると、びくっと体が震えた。
 ちょっとショックだ。受け入れてもらえていると思っていた相手に拒否されるのだ。だけど、彼女の俺以上にショックを受けているのだろう。何も気にすることはない。いつものように振る舞えばいい。
 二人きりの時、レティはどうしている?えーっと……くっついてくるな。その状況を再現すればいい。どのあたりだ?えーっと…左腕だったか?右に座ると、腕をからめていく。なにこれ、自分でやるとかなり恥ずかしいんだけど。くそ、レティの顔をまともに見られない。これじゃあ助けられたかなんてわからないぞ。

 ふっと息を吐くと、腕の中でビクッと動いた。恐る恐る様子を伺うと、レティはじっと俺を見つめていた。嫌がっている素振りはなくて一安心だ。
 大和撫子なんて言葉が似合いそうな黒くて長い髪。赤い口紅で彩られた真っ赤な唇。西洋人が日本人形の服を着たらこうなるのだろうという姿を体現している。

「貴方は誰?」
「俺は……」

 なんて答えるべきか。彼女は俺のことを、『シグルズ』と呼ぶ。昔の恋人の名前らしいのだが、今では恋人の代名詞として使っているようだ。
 彼女の気を引こうとして、シグルズと名乗って命を落とした冒険者もいたと聞く。俺がその名を名乗るなどおこがましいか。

「ヤマトだ」
「そう。貴方は私を愛しているかしら?」
 
 好きか、とかだったら即イエスと答えたのだが、愛しているは重すぎた。だけど言わないといけないよな?
 そうしないと、レティは戻ってこない。

「さあ、答えて。私だけを愛しているかしら」
「それは……」

 目を閉じ、すっと深呼吸をする。そして目を開けると、俺の視界を覆っていたのはセイラだった。

「……待って」

 いつもと変わらない目が俺を見つめていて、何を考えているのかわからない。
 だけど、面倒くさがりなセイラがここまでしたのだ。よほどの理由があるのだろう。

「レティを正気に戻す方法があるのか?」
「……戻ってる」
「は?」

 戻ってる?どういうことだ。
 セイラは俺から離れると、レティを見つめる。
 潤んだレティの瞳は、セイラから逃げるかのように閉じられ、やがて、唇をわずかに開いて笑った。
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