契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~

追放主に試練を与えようと思います

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「どうしたのシグルズ?」

 そう言うレティの声は弾んでいた。

「最後に一度チャンスを与えようと思うんだ」
「あら、優しいのね。具体的にはどうするの?」

 レティは微笑むと、嬉しそうに笑った。
 
 俺は腕を掴まれたままのハヤテに歩み寄る。

「クラン・レドラグーンリーダーのリーダーハヤテよ。クランの存続をかけて俺と勝負しないか?」

 ヴァルキリーっぽく言ってみた。するとハヤテは見下したように笑った。

「ほう…貴様ごときが俺に勝てると?」

 まだ俺に勝てると思っているのか?まったく、大したものだといっそ関心すら覚えるよ。

「ハヤテが勝ったら俺はクランに戻る」
「気安く名を呼ぶではない…が、まあいいだろう」

 逃げる意思がないと分かって、メルロはハヤテを開放する。

「俺が勝ったら」
「ヴァルキリーをどこに連れて行こうと好きにしろ」
「違う。お前たち三人の加護はすべてなくなる」
「な」

 余裕だった表情が固まった。マヤは死にそうな顔色をさらにまっしろにして、もうゾンビみたいだ。

「俺は何もしていない!」

 トゲに捕らわれたまま、タケヤは叫んだ。確かに、三人の中では一番影が薄いし、何かをされたイメージもない。だが、同じパーティにいたことに変わりはない。連帯責任ってやつだ。

「加護がなくなるだと…そんなバカげたことがっ」
「なんだ、怖いのか?」

 挑発がてら言ってみると、やはりというか、見下した顔が返ってきた。

「いいだろう。そんなことができるはずもないからな」

 レティに目配せをすると、彼女は頷いた。どうやら可能であるらしい。
 加護を失ったその時、どんな顔を浮かべるのか楽しみだ。

「そういえば剣は砕けたんだったな。早く代えのものを出すといい」

 クランメンバーには、予備の武器を持つことが義務付けられている。それには、インベントリの中に入れると条件付きだが。もちろんその加護は失われ、武器のないハヤテは見た目通りの丸腰のはずだ。
 俺の想像通りなのだろう。ハヤテは睨みつけてくるだけで、武器を出そうとはしない。

「仕方ない、なにか貸すか…あ、どうせならヴァルキリーの試験っぽくしようか」

 俺の契約ヴァルキリー、シュヴェルトライテのカレンには武器の加護がある。彼女は加護を与える前に冒険者と手合わせをする。

「第9の契約者カリン、汝の武器を貸し与えよ」

 右手に魔法陣が浮かび上がり、金と黄緑の光が入り混じる。とてつもない力だ。わずかながら右手に痛みさえ感じる。
 歯を食いしばると、「嘘ぉ!?」とギャルっぽい声が頭に響いた。

「来い、レーヴァテイン!」

 魔法陣からは、一本の剣が召喚された。レーヴァテイン。カリンが試練の時に使う武器だ。魔法を無効にし、純粋な剣技だけの戦いの場を作る武器だ。

「ほらよ」

 放り投げると、頭の中で怒られた。それでもレーヴァテインは止まらず、ハヤテの目の前で地面に突き刺さった。

「あ、やべ、俺の剣がないわ」

 持っていた刀はラフテルとの戦いのときに失っている。さすがに素手だときつい気がるし、困ったもんだ。

「ならば私の剣を使うといい」

 メルロは自身の持っていた剣を差し出した。見た目には普通の剣だが、ヴァルキリーの剣は聖剣と呼ばれ、普通の人間が持てば存在が消滅してしまう。
 
「俺に恨みでもあるのか?」
「おっとすまない…そうだ、せっかくだし使ってみたい武器はないか?こんな機会はそうそうなかろう」
「んなこと言われてもな…」

 武器なんてほとんど知らない。いや一本だけ、やたら名前が頭にこびりついている武器がある。たまたま読んだ歴史本がこんなところで役に立つとはな。

「和泉守兼定」
「なんだそれは聞いたことのない武器だな。まあいい…顕現、和泉守兼定」

 メルロの持っていた剣は形を変えていく。歯の部分が反り、刀身は細くなる。剣は刀へと形を変え、俺の手に中に入った。

「見たことのない武器だな」

 メルロは右に、左に、前に場所を変えながら、興味深そうに見つめている。触りたいのか手を出そうとして、慌ててひっこめるを繰り返している。
 カレンが刀を見たときにも驚いていたが、普段冷静なメルロでこの反応とは。珍しいものを見させてもらった。この点だけにおいては感謝してもいいかもな。ハヤテに対して。

「さて、はじめようか」

 ハヤテは今も、レーヴァテインを見つめたままで動かない。

「ヴァルキリーから武器を与えられるだと!?身の程を知れ!」

 レーヴァテインを手に取ると、重さからかふらついた。それでもさすが剣聖。なんとか踏みとどまると、いっちょ前に構えて、突っ込んでくる。
 レーヴァテインの効果で俺たちは魔法を使えない。だが、加護は残っている。刀を持った俺に、カレンが力を貸してくれる。今の俺はさながら侍。一直線に突っ込んでくる相手を斬ることなど造作もない。

「死ねえええええええええええええええええ」

 ハヤテの剣を避けると、横一閃。刀を振るとをのまま背後に回って次の動きを待つ。
 ガタガタガタとハヤテの腕が震え、持っていたレーヴァテインは地面に転がった。待っていた第二撃は来ない。

「俺の勝ちだな」
「くそ…だが、まだだ。加護がある限り、何度でも復讐してやる!」
「加護、ねえ…試験の失敗条件を忘れたか?」
「加護がなくなるか?そんなもの、ハッタリであろう…って、なんだこれは!?」

 ハヤテの足元に魔法陣が浮かんだ。朱色、白、茶色…何色かの色が入り混じっている。
 魔法陣が浮かんでいるのはハヤテだけじゃない。空中で拘束されているタケヤも地面に寝転がっているマヤにもだ。というか、いつまでタケヤを拘束してんだよ俺は。
 魔力の無駄に気が付いて、魔法を解くと、巨体は何の受け身も取らずに地面に落ちて、肩を抑えた。

「助けてくれ!」

 タケヤか肩の痛みからか、それとも別のものから逃げているのか、肩を抑えながらその場で転げまわる。強大な体が子供の用に駄々をこねる姿は、ただただ憐れだ。
 まだマヤの方が潔い。うっすらと目を開けているだけで、されるがままになっている。地面にだらっとボ似ていた右手は服の中に入れられ、中からナイフを取り出し、俺の顔面めがけて投げつけた。

「って、うぉ!?」

 ナイフは君手の親指と薬指の間に挟まって止まっていた。すげえ、これが真剣白刃取りってやつか。いつのまにこんなの使えるようになったんだよ俺。
 自身の美技に感心して忘れるところだったが、マヤは全然潔くなんてなかった。ぎりぎりまで殺意を抑え込んでいた分、こっちの方がタチが悪いともいえる。

 三人を包んでいた魔法陣は消え、元の静寂が取り戻される。見た目には変化が分からない。だが、絶望の顔が教えてくれる。加護は失われたであろうことを。

「可視化!」

 念のために見てみると、魔力や存在感が弱まっているのが分かった。

「こんなことをして許されると思っているのか!」

 まるで負け犬の遠吠えだ。だが本人はそうは思っていないようで、パチッと指を鳴らした。それを合図に、何も知らないレッドラグーンのクランメンバーが一気になだれ込んできて、俺を取り囲んだ。

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