契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

夜納木ナヤ

文字の大きさ
52 / 52
第3章~港町での物語~

シグルドとブリュンヒルデ

しおりを挟む
「なんだか楽しそうね」

 レティに言われて、自分が笑っていることに気がついた。同時に少しばかり焦った。
 二人で話している最中に他のことを考えれていたとなれば、レティは滅茶苦茶不機嫌になる。いつもならそうだった。だが不思議と機嫌がよく、むしろ話を聞きたがっているように思えた。

「出会った時のことを思い出していたんだよ」

 数刻前のことだったが、もちろん嘘はついていない。
 レティはうっとりとした顔を浮かべる。出会った時の話をするといつもこうだ。

「あの時のシグルズは素敵だったわ」

 一人で閉じこもっていたところを連れて出して、契約。そのあとはクエストの水竜を討伐したぐらいだ。
 あ、そうそう、俺を飲み込んだのはその水竜で、レティとキス…契約した大陸も水竜の体の上だったらしい。通りで足場が不安定だったわけだ。

「一人で水竜を倒すなんて人間業ではないわよ」

 正確には他にも三人いたわけだが、レティの中では俺一人で倒したことになっているらしい。
 それが思い込みかどうかなんて村人には分かるはずはなく、話を真に受けると、どよめいている。

「なんと、そんなにお強いのですね…」

 村長が呻きにも似た声を漏らすと、レティは満足そうに頷いた。

「竜を一人でと言えば、さっきも火竜を倒していたわね」
「あら、それは初耳ね」

 興味深そうに俺の顔を見つめる。
 この件に関していえば、事実だ。俺は一人で倒している。そう思うと強くなっているのか?

「生きるために必死だったんだよ。狭い洞窟で鉢合ったからさ」
「それでも勝てるのはシグルズぐらいよ」

 そう言って、頭を肩の上に乗せた。邪魔だ文句を言おうにも、食事はほぼほぼ終わっていて、好きにさせておくしかなかった。
 食事のあとも話は続き、村長の家を出たのは二時間ほどが経ってからだった。

「無駄に疲れた…」

 最初は厳かな雰囲気で進んでいたものの、時間が経つにつれて話はヒートアップし、特に村長の周りにいた女性があれやこれやと根ほり葉ほり聞いてきた。しかもレティが丁寧に、盛り上がるような嘘を混ぜつつ答えるもんだから、俺の身は削られるばかりだった。
 ガールズトーク恐るべし…。

 そんなわけで、今は寝床を目指して移動中だ。

「お疲れね、ヤマト」
「当分はこの村には来たくはないな…」
「心配しなくて、次は来年よ。またよろしくね」

 一年後の予定が確約されてしまったようだ。

「その時は一緒についていこうかしら。久しぶりに戦っているところを見たいわ」

 レティにそう言われては、俺は断る術を失ってしまう。

「ありがとね、ヤマト」
「なんだよ改まって」

 ティアは立ち止まると、こちらを振り向いた。

「多分ね、男の子…いえ、男性の話題でこの村が盛り上がったのは数年、下手すれば数十年ぶりのことなのよ」
「とてもそんな風には見えなかったけど」

 一言で言えば、楽しそうで、普段から恋愛のことを話題にして盛り上がっているんだろうと想像していた。

「一人一人事情が複雑でね、どこまで触れていいのかわからなくって、どうしてもぎこちなくなるのよ。その点、シグルズとブリュンヒルデはオープンだったわね」

 話題にしようにも、地雷の埋まっている場所が分からないってことか。もしかしてレティが大げさに答えたのも、その点に気を遣ってのことだろうか?

「私はただ、シグルズがすごい人だって知ってほしかっただけよ」

 ごまかすような言葉で逃げられてしまう。彼女なりの照れ隠しなのだろうか?
 そう思うと、いつもはねっとりとくっついてきて、爪先を突き付けてくる彼女も、可愛く思えてくる。

「なあレティ」
「なにかしらシグルズ」

 名前を呼んでから、特に言うこともないことに気が付いた。

「いや、なんでもない」

 あからさま誤魔化したが、嬉しそうな笑顔が返ってくるだけだ。くそっ、なんだかむず痒い。
 何か別の話題を探さないと…そうだ、ティアにまだ答えてもらえてないことがあった。

「結局のところ、俺がこの村の中まで連れてこられた理由はなんだったんだ?」
「それはね、ブリュンヒルデをおびき出すためよ」
「レティを?それはまたどうして」

 名前の上がった当人を見つめると、珍しく俺を見ていなくて、ゆっくりと360度視線を動かした。

「用件を聞こうかしら」
「ありがとうございます、ブリュンヒルデ様」

 どうやらここからは、真剣モードらしい。

「数年前からこの村の結界が弱まっています。強くしていただくことはできないでしょうか?」

 結界と言うのは、俺が入るときに感じた違和感だろうか?
 何かを拒むような力を感じたが、むしろ俺は歓迎された。今になって思えば、力の根源がレティだったからだろう。

「それはどうしてですか?」
「私は呪いをかけただけ。想いが強いほど強くなる呪いを」
「呪い、ですか?」

 結界が呪い?どういうことだろう。
 分からなかったのはティアも同じだったようで、彼女は聞き返した。

「呪いとはどういうことですか?」
「わたくしもね、男性のことを信じていないわ。この村の子達もおんなじ。だからその気持ちが強くなるほど、外部からの侵入を拒むようにしてあげたのよ」
「つまり、男性不信が弱まってきているのですか?」
「そうなんでしょうね。だって本当に嫌いだったら、わたくしの話にも食いついてこなかったでしょう?」

 それもそうだ。嫌いな話をわざわざ聞くなんて、強制でもされない限りはしないだろう。

「それは…いいことなんでしょうか?」
「わたくしはそう思うわ。だってシグルズと出会ってから、毎日が楽しいんだもの」

 彼女は語ったことがない。一人で閉じこもっていた時のことを。なぜそうなったのかを。
 だが少なくとも、好きで一人でいたのではないのだろう。もしかしたら、他の誰よりもずっと、誰かに依存したかったんじゃないだろうか。

「否定しようとしているけれど、貴方も気づいているのでしょう。こうして毎年、ここに来ているのだから」
「それは…」

 ティアはそれ以上は答えない。それはすなわち、肯定だったのではないだろうか。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...