徳川慶勝、黒船を討つ

克全

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「本来ならば本物の酒で乾杯するべきだが、この戦いは徳川家だけの命運ではない。
 日ノ本の命運を賭けた乾坤一擲の戦いである。
 水杯で乾杯とさせて頂く」

「「「「「おう!」」」」」

 尾張徳川家の江戸上屋敷には、大納言徳川慶勝の檄を受けて、志を同じくする大名や浪士の武装団が集まっていた。
 異国との合戦が恐ろしく、幼少の子弟に家督を譲るような、名門旗本は頼りにならず役にも立たない中、名をあげて立身出世を目指す浪士は奮い立っていた。

 いや、浪士だけではなかった。
 慶勝に賛同した諸藩の家臣も奮い立っていた。
 今から黒船に斬り込み、歴史に名を留める戦いに参加するのだ。
 全員が死に装束でこの戦いに挑んでいた。

 徳川慶勝の尾張家相続には紆余曲折があった。
 そもそも慶勝は尾張家の生まれではない。
 尾張家の分家である高須松平家の生まれである。
 しかも血筋でも尾張家ではなく水戸家の流れをひいている。
 高須松平家九代藩主・松平義和は末期養子で水戸家から来ているのだ。
 松平義和は水戸徳川家中興の祖といわれる、六代藩主の徳川治保の次男なのだ。
 
 だがそれでも、尾張徳川家では、十代藩主・斉朝、十一代藩主・斉温、十二代藩主・斉荘、十三代藩主・慶臧と四代続いて将軍家周辺からの養子が続き、十一代藩主・斉温にいたっては、在世中に一度も尾張に入国せず江戸暮らし続けて藩士の士気を凋落させていた。
 そのため金鉄党などの下級藩士主体の組織が十二代斉荘、十三代慶臧の後継時にも激しい擁立争いを行った。
 それほど下級藩士は慶勝の藩主継承を渇望していた。

 なぜそこまで慶勝が渇望されたかといえば、慶勝の天才的な智謀と、血縁を生かした藩政改革が上手くいっていたからだ。
 尾張家を継承する事を予測し、高須三万石の立て直しではなく、尾張五六万三二〇六石が立て直せる体制を築き、それを積極的に尾張徳川家の家臣団に知らせていた。
 尾張家を継ぐという明確な目的をもって、着々と手を打っていた。
 その段取りが黒船を討つための布石ともなっていた。

「浪士組」
目付役:鵜殿鳩翁・高橋泥舟・山岡鉄太郎
浪士組:清河八郎・石坂宗順・松岡万・池田徳太郎
尾張組:尾張藩徳川家の藩士・次男三男が浪士を指揮
浜田組:浜田藩松平家の藩士・次男三男が浪士を指揮
新選組:近藤勇・山南敬助・土方歳三らが指揮
会津組:会津藩松平家の藩士・次男三男が浪士を指揮
高須組:高須藩松平家の藩士・次男三男が浪士を指揮
三上組:近江国三上藩遠藤家の藩士・次男三男が浪士を指揮
広瀬組:出雲国広瀬藩松平家の藩士・次男三男が浪士を指揮
福岡組:筑前国福岡藩黒田家の藩士・次男三男が浪士を指揮
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