11 / 56
第1章
8話
しおりを挟む
不利な条件でも農民になる事を望む者、それは穢多だった。
非人ならば、望み能力があれば、士農工商に身分に戻ることができる。
公家や医師や神人等と同様に扱われるので、差別されることはあっても、人別帳の枠内記録される身分制度上の身分なので、士農工商になる事ができない穢多とは厳しく区別されていた。
だからこそ、時には自分の子を良民の家の前に捨てたり、吉原に売って見受けの機会を待つなど、貧困な穢多はその身分から抜け出そうとしていた。
一方、死牛馬取得権や井草の生産独占権など、軍事上必要か皮革製品を確保したい幕府が、穢多に限定された職種を保証し穢多地の年貢を免除していたので、農民地を買って年貢を納めるほど豊かな穢多もいた。
認めたくない話だが、町奉行所の同心株を買う穢多までいるのだ。
そんな穢多達のために、開拓郷士案が採用されたのだ。
穢多頭・弾左衛門は、蝦夷地開拓資金を三十万両投入することを約束していた。
人数も七万人を投入する約束だった。
一人一家とは計算できないが、浅草非人頭・車善七をはじめとした五人の非人頭も積極的に参加を表明しているので、関八州の十万人は確実に参加する。
将軍家と幕閣が積極的に動いているから、関八州以外の穢多非人も参加することになると思われるので、計算上七万家七百万石の新田開発が見込めるのだ。
旗本御家人の知行地や扶持に与える玄米の収穫地を含めて、徳川家の領地は八百万石なのに、蝦夷地に完全な蔵入り地が七百万石も増えるのだ。
幕府の、いや、飛び地として預かっている徳川慶恕の経済力が増えるのだ。
半分しか成功しなくても、三百五十万石だ。
将軍や幕閣が前のめりになるのもしかたがない事だった。
成功すれば、その経済力を上手く使えば、日ノ本での徳川一門有利は動かない。
南蛮が相手でも迎え撃つことが可能だ。
西国の外様が南蛮に魂や領地を売らない限り、清国のように負ける事はない。
そのための武芸の奨励と、市井の戦力を活用することも、徳川慶恕は徳川家祥に話し、将軍・徳川家慶と幕閣に許可をもらっていた。
「芸州浅野家家臣大石家代表、大石善次郎殿。
出羽上杉家家臣千坂家代表、千坂団兵衛殿」
両国に芝居小屋で、各藩の代表が武芸勝負を披露していた。
勝ち上がれば将軍や幕閣の上覧があり、武家も面目が大いに立つのだ。
だが幕閣も、いや、徳川慶恕も計算高い。
伊達家と相馬家の代表を戦わせたり、戦国からの遺恨の有る家を勝負させる。
今回は忠臣蔵で有名な浅野藩大石家と、上杉藩千坂家を戦わせるあざとさだ。
それを一等地の芝居小屋でやらせて木戸銭を稼ぐのだ。
だがその木戸銭が結構馬鹿にならない。
江戸には「一日に千両の落ち所」と言われる、魚河岸、芝居町、吉原がある。
人によったら「日に千両、鼻の上下に臍の下」とも言う。
鼻の上の目は芝居を見ること、鼻の下の口は魚河岸の、臍の下は吉原の意味だ。
武芸大会で一番金が落ちるのは両国の芝居小屋だが、そこだけではなく、鉄砲の試合はお先手組屋敷や鉄砲百人組屋敷で、槍の試合は徒士頭の屋敷で、馬比べや弓術の試合は、五番方の番頭屋敷で行われていた。
武芸を奨励し、浪人や部屋住みを蝦夷地で郷士として召し抱えるだけでなく、毎日二千両の軍資金を手に入れていた。
非人ならば、望み能力があれば、士農工商に身分に戻ることができる。
公家や医師や神人等と同様に扱われるので、差別されることはあっても、人別帳の枠内記録される身分制度上の身分なので、士農工商になる事ができない穢多とは厳しく区別されていた。
だからこそ、時には自分の子を良民の家の前に捨てたり、吉原に売って見受けの機会を待つなど、貧困な穢多はその身分から抜け出そうとしていた。
一方、死牛馬取得権や井草の生産独占権など、軍事上必要か皮革製品を確保したい幕府が、穢多に限定された職種を保証し穢多地の年貢を免除していたので、農民地を買って年貢を納めるほど豊かな穢多もいた。
認めたくない話だが、町奉行所の同心株を買う穢多までいるのだ。
そんな穢多達のために、開拓郷士案が採用されたのだ。
穢多頭・弾左衛門は、蝦夷地開拓資金を三十万両投入することを約束していた。
人数も七万人を投入する約束だった。
一人一家とは計算できないが、浅草非人頭・車善七をはじめとした五人の非人頭も積極的に参加を表明しているので、関八州の十万人は確実に参加する。
将軍家と幕閣が積極的に動いているから、関八州以外の穢多非人も参加することになると思われるので、計算上七万家七百万石の新田開発が見込めるのだ。
旗本御家人の知行地や扶持に与える玄米の収穫地を含めて、徳川家の領地は八百万石なのに、蝦夷地に完全な蔵入り地が七百万石も増えるのだ。
幕府の、いや、飛び地として預かっている徳川慶恕の経済力が増えるのだ。
半分しか成功しなくても、三百五十万石だ。
将軍や幕閣が前のめりになるのもしかたがない事だった。
成功すれば、その経済力を上手く使えば、日ノ本での徳川一門有利は動かない。
南蛮が相手でも迎え撃つことが可能だ。
西国の外様が南蛮に魂や領地を売らない限り、清国のように負ける事はない。
そのための武芸の奨励と、市井の戦力を活用することも、徳川慶恕は徳川家祥に話し、将軍・徳川家慶と幕閣に許可をもらっていた。
「芸州浅野家家臣大石家代表、大石善次郎殿。
出羽上杉家家臣千坂家代表、千坂団兵衛殿」
両国に芝居小屋で、各藩の代表が武芸勝負を披露していた。
勝ち上がれば将軍や幕閣の上覧があり、武家も面目が大いに立つのだ。
だが幕閣も、いや、徳川慶恕も計算高い。
伊達家と相馬家の代表を戦わせたり、戦国からの遺恨の有る家を勝負させる。
今回は忠臣蔵で有名な浅野藩大石家と、上杉藩千坂家を戦わせるあざとさだ。
それを一等地の芝居小屋でやらせて木戸銭を稼ぐのだ。
だがその木戸銭が結構馬鹿にならない。
江戸には「一日に千両の落ち所」と言われる、魚河岸、芝居町、吉原がある。
人によったら「日に千両、鼻の上下に臍の下」とも言う。
鼻の上の目は芝居を見ること、鼻の下の口は魚河岸の、臍の下は吉原の意味だ。
武芸大会で一番金が落ちるのは両国の芝居小屋だが、そこだけではなく、鉄砲の試合はお先手組屋敷や鉄砲百人組屋敷で、槍の試合は徒士頭の屋敷で、馬比べや弓術の試合は、五番方の番頭屋敷で行われていた。
武芸を奨励し、浪人や部屋住みを蝦夷地で郷士として召し抱えるだけでなく、毎日二千両の軍資金を手に入れていた。
0
あなたにおすすめの小説
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる