徳川慶勝、黒船を討つ

克全

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第1章

24話

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「最新式の銃を売る必要はございません。
 古い火縄銃と槍刀を売るのです。
 その利益で新式銃を作るのです。
 さすれば大した費用負担をせずに、銃を最新式に変えられます」

 密偵の提案はとても魅力的だったが、実現可能かは未知数だった。
 交易利益の多くを費やして、反射高炉を作ろうとしていたし、大砲と鉄砲の鋳造所を新設し、鉄砲職人を搔き集めて弟子も抱えさせていた。
 だか、だからといって、今ある鉄砲や槍刀を売り払う決断はできなかった。
 少なくとも上様と幕閣、弟達や側近達に相談しなければ決断できなかった。
 個人で決断するには重大過ぎたし、事前に研究予測していない問題を即決する事は、徳川慶恕が不得意な事だった。

 徳川慶恕は最初に弟達と側近を集めて話し合った。
 事前に高須一族で意見をまとめておいた。
 その上で徳川慶恕は、上様と幕閣に弟達を加えて、清国内の反英国運動を話した。
 鉄砲などの武器を清国に販売して、清国内で英国と戦わせるかを話し合った。

 結果は国内の鉄砲や槍刀を売り払ってでも、清国人の反英国運動を後押しするという事に決まった。
 それが本当に幕府徳川家のためになるかどうかは、誰にも分からない。
 清国内で英国を戦わせるよりも、日本国内に英国を引き込んで戦った方が有利なのかもしれない。
 
 どちらが幕府徳川家を有利にするかは分からないが、やはり国内に南蛮人を引き入れることには抵抗があり、できる事なら国外で英国を迎え討ちたいと、将軍も幕閣も思ってしまった。
 事前に話し合っていた高須一族の考えは、売り払う武器の量を、新造できた武器の量までに抑えるという事だった。

 そのためには、上様と幕府の力で、今まで以上に鉄砲鍛冶と刀鍛冶を集めてもらう必要があったし、上納金が減る事も認めてもらわなければいけなかった。
 鉄砲と大砲と槍刀の新造のために交易利益を使う事で、上納金が減る事を上様と幕閣に理解してもらわなければいけなかった。
 その事を高須一族の総意としてまとめていた。
 もっとも徳川慶恕は、隠し軍資金千万両を蓄えておくつもりでいたのだが。

 徳川慶恕が主導して幕府が次々と政策を行った事で、幕府領と尾張派諸藩領は未曾有の好景気となっていた。
 鉄砲・大砲・刀・槍の新造はもちろん、南蛮船が新造され和船の帆が作り変えられる事で、鉄砲鍛冶や刀鍛冶や船大工はもちろん、多くの職人や日雇いが集まり、莫大な金が流れていた。

 新規召し抱えの武士や、武士に仕える武家奉公人が集まり、彼らが使う金も領内に流れていた。
 居酒屋や屋台、出会い茶屋や遊女屋にまで多くのお金が流れ、人も物も今まで以上に江戸に流れ込むようになっていた。
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