徳川慶勝、黒船を討つ

克全

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第1章

46話

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 徳川慶恕は、宝暦治水事件当時の老中、堀田正亮、西尾忠尚、本多正珍、松平武元、酒井忠寄の子孫に丁寧な説明を事前に行い、罪を問う事を了承してもらった。
 だが同時に、見返りとなる利を与えた。
 能力があれば役目を与え、なければ裏金を渡した。
 その上で、堀田正亮、西尾忠尚、本多正珍、松平武元、酒井忠寄の墓に縄をうち、薩摩藩の面目を整え、藩士の怒りを抑えた。

 薩摩藩が北黒竜江旗地に向かったことで、北黒竜江の戦闘力が飛躍的に高まった。
 一般的な藩が、経費や藩主一門の生活費を含めて内高五十三石で一人の藩士を維持し、藩士知行地の平均は九・五五石の計算になる。
 それを薩摩藩では、九州制圧戦から関ヶ原までの戦いによる領地の増減で、藩士知行地の平均は二・九二石に抑えていて、総兵力が五万弱もいる。
 旗本八万騎と比較しても、幕府が危機感を持って当然だった。

 だが清国内に多くの番方を派遣して実戦経験を積ませた今は違う。
 無役や部屋住みに加え、浪人まで新規に召し抱えて番方としたことで、旗本八万騎と言われた旗本御家人が、今では番方だけで十万騎となっていた。
 だが徳川慶恕は、あまり家臣を召し抱えたくはなかった。
 常に実戦訓練を繰り返すにしても、必ず武勇に長じた者が生まれるとは限らない。
 
 表向き一代しか召し抱えないはずの抱席が、役に付けなくても扶持が支給される、世襲権のある譜代や二半場と同じように、子弟が再雇用という体裁で召し抱えられている現実がある。
 今の尾張藩なら、何十万の藩士であろうと、新規で召し抱えることが可能でも、代が変わればどうなるか分からない。

 そこで徳川慶恕は、町人には三一侍(さんぴんざむらい)と馬鹿にされている、年給が三両一人扶持の兵士を年期奉公扱いで雇う策をとることにした。
 これならば仕事にあぶれている無宿人を幾らでも召し抱えることができる。
 衣食住の保証をしなければいけないが、三十俵二扶持で抱席とするよりは、渡り中間のように四半期や半期で臨時雇いした方がいいと考えた。

 蝦夷、樺太、沿海、北黒竜江ならば、屯田兵として原野を開拓しながら、領地を護ってもらう必要があるので、譜代や二半場の格を与え、郷士同心として召し抱える必要があった。
 だが、江戸の治安を維持を考えつつ、無宿人や流民や部屋住みに衣食住を保証しつつ戦力化するのなら、若党として年期奉公させて軍事訓練する方がいい。

 尾張徳川家では、価値が高くなった金貨を使うことなく、銀貨と玄米で扶持を支給していた。
 これは扶持が兵糧であり、自分の屋敷で兵糧を備蓄しておく意味もあったのだ。
 幕府や藩主が玄米で扶持を約束するのは、派遣された戦場での兵糧の保証する意味もあったのだ。
 だから若党の扶持は、三両分の銀貨一八〇匁と玄米五俵だった。
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