王太子に愛する人との婚約を破棄させられたので、国を滅ぼします。

克全

文字の大きさ
7 / 27
第一章

6話

しおりを挟む
「おお、臭い、臭い!
 王太子殿下は脱糞しているぞ!
 女騎士を恐れ、死を恐怖して、情けなくも脱糞したぞ。
 これから王家は脱糞王家と名乗るがいい。
 御前達も、脱糞軍と名乗るのだな」

 ネラが大声で叫んでいる。
 誇り高いネラが口にするのだから、嘘偽りではないだろう。
 何とも情けない。
 色魔で馬鹿なのは知っていましたが、ここまで臆病だったとわ。

「おい、御前達。
 私には脱糞の世話までは出来ん。
 御前達が殿下の糞の世話を知しろ。
 うん?
 御前達も臭いな。
 御前達まで脱糞していたのか!?
 この脱糞貴族が!」

 ああ、情けない。
 主が主なら、臣も臣です。
 主従揃って、戦場で恐怖して脱糞するとわ。
 でもこれで、王家の武名は地に落ちたでしょう。

 私達は女だけなのです。
 脱糞した王太子や貴族の世話など出来ません。
 そこで騎士達に捕虜の誓いを立てさせて、王太子と貴族の世話をさせました。
 もちろん王太子と貴族にも捕虜の誓いを立てさせましたが、全く信用などしていません。

 士族以上には捕虜の誓いを立てさせて、この戦いの間、二度と戦いに参加しない宣言をさせました。
 きっと王太子と貴族は誓いを破れと命じるでしょうが、別にそれで構いません。
 王家王国の名誉が地に落ちるだけです。

 下士や兵士は武装解除させました。
 武器や防具は、近隣の貴族家や士族家にむりやり買い取らせました。
 王太子と側近貴族を人質にしていますから、拒否など出来ません。
 解放された王太子は、代価を払わず貴族家から奪うでしょう。

 それでいいのです。
 それで王家王国の評判はまた低下します。
 今も、王太子と側近貴族が、女騎士を恐れて脱糞した話が、民の間に広まっています。
 王国中に広まるように、私達が噂をばらまいているのです。

 降伏した一万を超える軍勢を、私達だけで管理など出来ません。
 下士以下の雑兵は、逃がしてあげなければなりません。
 でもタダで逃がす訳ではありません。
 彼らには、王太子と側近貴族の愚かさを広めてもらわなければなりません。

「皆さんよく聞いて下さい。
 王太子殿下と貴族の方々は、戦いに恐怖して脱糞されてしまいました。
 戦士として、余りに恥ずかし事でございます。
 そこで私達が、戦士として鍛え直して差し上げます。
 殿下達も御認め下さり、騎士の誓いを立てて、逃げたり襲ったりしないと約束してくださいました。
 皆さんが証人となって下さい」

「「「「「おう」」」」」

 騎士以上の地位を持つ者達が、馬の上に立たされて、晒し者になっています。
 下士以下の雑兵達が、はやし立てています。
 普段偉そうにふんぞり返っている貴族士族が、大恥をかいているのが面白いのでしょう。
 さて、ここで一仕込みして移動しましょう。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

「神に見捨てられた無能の職業は追放!」隣国で“優秀な女性”だと溺愛される

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アンナ・ローレンスはグランベル王国第一王子ダニエル・クロムハートに突然の婚約破棄を言い渡された。 その理由はアンナの職業にあった。職業至上主義の世界でアンナは無能と言われる職業を成人の儀で神に与えられた。その日からアンナは転落人生を歩むことになった。公爵家の家族に使用人はアンナに冷たい態度を取り始める。 アンナにはレイチェルという妹がいた。そのレイチェルの職業は神に選ばれた人しかなれない特別な職業と言われる聖女。アンナとレイチェルは才能を比較された。姉のアンナは能力が劣っていると言われて苦しい日常を送る。 そして幼馴染でもある婚約者のダニエルをレイチェルに取られて最終的には公爵家当主の父ジョセフによって公爵家を追放されてしまった。 貴族から平民に落とされたアンナは旅に出て違う国で新しい生活をスタートする。一方アンナが出て行った公爵家では様々な問題が発生する。実はアンナは一人で公爵家のあらゆる仕事をこなしていた。使用人たちはアンナに無能だからとぞんざいに扱って仕事を押し付けていた。

「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】

長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。 気になったものだけでもおつまみください! 『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』 『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』 『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』 『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』 『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』 他多数。 他サイトにも重複投稿しています。

婚約者を奪われるのは運命ですか?

ぽんぽこ狸
恋愛
 転生者であるエリアナは、婚約者のカイルと聖女ベルティーナが仲睦まじげに横並びで座っている様子に表情を硬くしていた。  そしてカイルは、エリアナが今までカイルに指一本触れさせなかったことを引き合いに婚約破棄を申し出てきた。  終始イチャイチャしている彼らを腹立たしく思いながらも、了承できないと伝えると「ヤれない女には意味がない」ときっぱり言われ、エリアナは産まれて十五年寄り添ってきた婚約者を失うことになった。  自身の屋敷に帰ると、転生者であるエリアナをよく思っていない兄に絡まれ、感情のままに荷物を纏めて従者たちと屋敷を出た。  頭の中には「こうなる運命だったのよ」というベルティーナの言葉が反芻される。  そう言われてしまうと、エリアナには”やはり”そうなのかと思ってしまう理由があったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

処理中です...