大公家を追放されて奈落に落とされたけど、以前よりずっと幸せだ。

克全

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第一章

第3話出会い

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「やあ、いらっしゃい、よくきたね、待っていたよ」

 俺は正直唖然としていた、何故なら奈落に飛び降りたはずなのに、神々しい光に包まれた空間にいて、金色の光に包まれた竜の前にいたからだ。

「えっと、初めまして、貴方が僕を助けてくれたのかな?
 だったらありがとうございます、とても助かりました」

「いや、いや、何の遠慮もいらないよ、当然の事をしたまでだよ、兄弟」

「ええええと、兄弟と言われましても、なんのことだか分からないのです。
 もしかして、父は竜とも情を通じていたのでしょうか?」

「いや、いや、いや、そんな即物的な事ではないよ、もっと精神的な事だよ」

「精神的な事ですか?」

「そう、そう、魂のレベルの問題でね、君と僕は前世で兄弟だったんだよ」

「ほう、それは興味深い話ですね、魂というものが転生を繰り返すのなら、前世の記憶があると、便利な面と記憶に縛られてしまう面がありますね」

「そうなのだよ、でも、よほど魂のつながりが強くないと、前世での関係までは分からないから、それほど束縛される事もないよ。
 余も魂のつながりが分かるのは、可愛がっていた弟の君だけで、両親や友人知人の事は一切わからないよ。
 もっとも、前世の魂が同じ世界同じ時代にいるとは限らないからね」

「なるほど、世界はここでだけではなく、あらゆる場所の数多く存在するのですね。
 しかも時代を前後して魂が輪廻転生を繰り返すとは、とても興味深いですね。
 では、意識して前世の記憶を残して、好きな世界の望む時代に、自由に転生できるのでしょうか?」

「さあ、それは僕にも分からないね、試した事もないし、試す方法も分からない。
 まあ、幸い余の寿命は気が遠くなるほど長いから、試してみるよ」

「そうされてください、そしてまた転生した先で出会えたら、教えてください」

「ああ、いいよ、さすがエルギンは探求心があるね、前世同様面白い考えをするね」

「エルギンと言うのは僕の前世の名前ですか?」

「そうだよ、前世でもエルギンは正義感が強くてね、常に悪人と戦い傷だらけになっていたけれど、決して弱音を吐かない強い男だったよ。
 だけど弱者に優し過ぎるのが欠点で、いつも最後は人質を取られて憤死していた。
 この世界でも同様のようだけど、それでどうしたいんだい?」

「どうしたいとは、どういう事ですか?」

「復讐の事だよ、最後に裏切者たちに呪いの言葉を吐いていたけれど、その通りに復讐を望むのか、それともこの世界で穏やかに暮らすのかだよ。
 どちらでも望むようにしてあげるよ、それが魂の兄弟である余の望みだからね」

 はて、困ったな、僕は本当はどうしたいんだろう?
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