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第一章
第5話新しい家族
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魂の兄さんのお陰で、地上にいた時よりもずっと幸せだ。
以前の家族とは全く違う、心許せる新しい家族ができた。
俺が護り慈しんであげなければいけない、家族のいない子供達。
血の繋がった家族に、親兄弟に捨てられたる売られたりした子供もいれば、不幸にして親兄弟を亡くした子供もいる。
魂の兄さんが、俺が寂しくないようにと、地上から連れて来てくれた。
他にも奴隷や小作人といった、地上では最低の暮らししか出来ない者達を、奈落にある平地に連れて来てくれた。
「エルギンが大公だからね、治めるべき領地や民がいないと物足りないだろう。
エルギンを裏切った者達を皆殺しにして、地上の領地を取り戻したやってもいいんだけれど、エルギンは前世から人殺しが嫌いだからね、可哀想な人たちを連れてくる方を選んだよ」
魂の兄さんがそう言って笑っていたが、本当にありがたかった。
不幸な子供達のお世話をするのもやりがいのある生活なのだが、やはり大公となるべく自己研鑽した身としては、領地を治めたい想いがある。
その事を魂の兄さんは分かってくれているのだ、心に温かい物が湧きおこる。
母を失ってから味わったことのない想いに、涙が流れそうになってしまった。
だが、ここは本来魔獣の地で、人間は間借り人に過ぎない。
だから、魂の兄さんが示唆してくれた事を守って、魔獣への生贄を育てた。
鶏などの鳥類と、羊や豚と言った家畜を育て、魔獣に捧げるようにした。
そのお陰か、奈落に住む人間が魔獣に襲われることがなかった。
俺の民も本当に幸せで、特に民は、生まれて初めてお腹一杯食事が食べられたと言っては泣き、生まれて初めて肉が食べられたと言っては泣いていた。
俺には本当の意味で空腹や飢餓感を感じたことはない。
激しい武芸の鍛錬で空腹を感じたことはあるが、直ぐに家臣が食べる物を持ってきてくれたので、その時間はごく短時間だった。
でも民は、一年中ずっと飢えに苦しんでいたのだ。
そこから解放させてあげられたのも、魂の兄さんのお陰だ。
俺だけでは、地上を治めていたとしても、王家や家臣の邪魔が入って飢えに苦しむ人達を助けてあげる事はできなかっただろう。
そう言う意味では、魂の兄さんには心から感謝している。
だが、不安と疑念が全くないわけではない。
魂の兄さんは、本当に俺の敵を見逃してくれているのだろうか?
もしかしたら、もうすでに僕を傷つけた者達を皆殺しにしているのではないか?
それも、生きたまま、何日もかけて、生まれてきた事を後悔するような苦痛を与え続けたうえで、皆殺しにしてしまったのではないか?
地上の世界が、魔獣に席巻されてしまっているのではないのか?
そんな疑念はあるが、確かめる勇気がない。
そんな事をして、眼の前で嬉しそうに畑を耕している人達が、この地を追われることになったり、魔獣に喰われるようになるのは絶対に嫌だった。
俺は、卑怯者になることにした。
今自分を慕ってくれている人を守るためなら、魔王と呼ばれることも厭わない。
以前の家族とは全く違う、心許せる新しい家族ができた。
俺が護り慈しんであげなければいけない、家族のいない子供達。
血の繋がった家族に、親兄弟に捨てられたる売られたりした子供もいれば、不幸にして親兄弟を亡くした子供もいる。
魂の兄さんが、俺が寂しくないようにと、地上から連れて来てくれた。
他にも奴隷や小作人といった、地上では最低の暮らししか出来ない者達を、奈落にある平地に連れて来てくれた。
「エルギンが大公だからね、治めるべき領地や民がいないと物足りないだろう。
エルギンを裏切った者達を皆殺しにして、地上の領地を取り戻したやってもいいんだけれど、エルギンは前世から人殺しが嫌いだからね、可哀想な人たちを連れてくる方を選んだよ」
魂の兄さんがそう言って笑っていたが、本当にありがたかった。
不幸な子供達のお世話をするのもやりがいのある生活なのだが、やはり大公となるべく自己研鑽した身としては、領地を治めたい想いがある。
その事を魂の兄さんは分かってくれているのだ、心に温かい物が湧きおこる。
母を失ってから味わったことのない想いに、涙が流れそうになってしまった。
だが、ここは本来魔獣の地で、人間は間借り人に過ぎない。
だから、魂の兄さんが示唆してくれた事を守って、魔獣への生贄を育てた。
鶏などの鳥類と、羊や豚と言った家畜を育て、魔獣に捧げるようにした。
そのお陰か、奈落に住む人間が魔獣に襲われることがなかった。
俺の民も本当に幸せで、特に民は、生まれて初めてお腹一杯食事が食べられたと言っては泣き、生まれて初めて肉が食べられたと言っては泣いていた。
俺には本当の意味で空腹や飢餓感を感じたことはない。
激しい武芸の鍛錬で空腹を感じたことはあるが、直ぐに家臣が食べる物を持ってきてくれたので、その時間はごく短時間だった。
でも民は、一年中ずっと飢えに苦しんでいたのだ。
そこから解放させてあげられたのも、魂の兄さんのお陰だ。
俺だけでは、地上を治めていたとしても、王家や家臣の邪魔が入って飢えに苦しむ人達を助けてあげる事はできなかっただろう。
そう言う意味では、魂の兄さんには心から感謝している。
だが、不安と疑念が全くないわけではない。
魂の兄さんは、本当に俺の敵を見逃してくれているのだろうか?
もしかしたら、もうすでに僕を傷つけた者達を皆殺しにしているのではないか?
それも、生きたまま、何日もかけて、生まれてきた事を後悔するような苦痛を与え続けたうえで、皆殺しにしてしまったのではないか?
地上の世界が、魔獣に席巻されてしまっているのではないのか?
そんな疑念はあるが、確かめる勇気がない。
そんな事をして、眼の前で嬉しそうに畑を耕している人達が、この地を追われることになったり、魔獣に喰われるようになるのは絶対に嫌だった。
俺は、卑怯者になることにした。
今自分を慕ってくれている人を守るためなら、魔王と呼ばれることも厭わない。
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