王太子に求婚された公爵令嬢は、嫉妬した義姉の手先に襲われ顔を焼かれる

克全

文字の大きさ
1 / 8
第一章

第1話:襲撃

しおりを挟む
「ウッヘッヘッヘッヘ、お前は調子に乗り過ぎたんだよ」
「そう、そう、分を弁えておとなしくしていればよかったんだよ」
「王太子を誑かしたりするから、こんな目にあうんだよ」
「王太子の代わりに俺達が天国に行かせてやるよ」
「「「「「ウッヘッヘッヘッヘ」」」」」

 下種な、ケダモノのような連中にこの身を穢される気はありません。
 公爵令嬢の誇りにかけて、穢される前に自害します。
 それにしても、情けないのは我が家の護衛達です。
 このような連中に恐れをなして私を置いて逃げるなんて、それでも公爵家の家臣ですか、恥を知りなさい恥を。

「ふん、自害するつもりのようだが、それで名誉を護れると思うなよ」
「そう、そう、俺達にとっては別に生きていようが死んでいようが構わないのだ」
「ウッヘッヘッヘッヘ、死体になった身体を辱めてやるぜ」
「ウッヘッヘッヘッヘ、あれはあれで趣があっていいもんだぜ」
「「「「「ウッヘッヘッヘッヘ」」」」」

 地獄に落ちなさい、腐れ外道ども。
 ですが、これで簡単に自害もできなくなりました。
 遺体を残す事もできなくなりますが、仕方ありません。
 公爵令嬢の誇りを守るための最後の手段を使うしかありませんね。
 自らの命と引き換えに業火を引き起こす大魔術を使うしかありません。

 ですが、こうして冷静になるとこいつらの言った事が気になります。
 私が王太子殿下を誑かしたとは、今夜の舞踏会で求婚された事を示しているとしか思えませんが、求婚の現場を見ていた者は限られます。
 求婚されたのは、このような下賤な連中が知る事など不可能な高貴な場所です。
 噂が広まるにしても、ほんの数時間前の事です。

「お前達、一体誰の手先ですか。
 私が王太子殿下に求婚されたのを知っている人間は限られています。
 そのうちの誰かに雇われての犯行でしょう。
 さっさと白状しなさい、恥知らずのクズども」

「ふん、全くのバカではないようだな」
「バカではないが、オメデタイ世間知らずには違いないさ」
「そうだな、親父の事にも気がつかずいるのだからな」
「黙ってろ、殺されたいのか」
「おっと、口が滑っちまったな」

 父上がどうかしたというのですか。
 まさか、まさか、父上は病死ではなく殺されたというのですか。
 そんなバカな、いくら何でも信じられません。
 騙されてはいけません、気をしっかり持つのです。
 父上がご病気で死んだのは間違いない事です。

 何といっても父上を看取ったのは母上なのです。
 え、いえ、でも、父上が死んで早々に母上は再婚してしまいました。
 実家の王家が反対するのを押し切って、ゴーエル男爵セヴランを配偶者に迎えてしまいました。
 まさか、まさか、母上がゴーエル男爵家を配偶者に迎えたくて父上を殺したとでもいうのですか。

「ちっ、お前がバカな事を言うから気がついちまったじゃないか。
 これで言葉でいたぶる時間がなくなっちまった。
 さっさと身体を愉しむぞ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢の白銀の指輪

夜桜
恋愛
 公爵令嬢エリザは幸せな日々を送っていたはずだった。  婚約者の伯爵ヘイズは婚約指輪をエリザに渡した。けれど、その指輪には猛毒が塗布されていたのだ。  違和感を感じたエリザ。  彼女には貴金属の目利きスキルがあった。  直ちに猛毒のことを訴えると、伯爵は全てを失うことになった。しかし、これは始まりに過ぎなかった……。

地下百階に幽閉された公爵令嬢

夜桜
恋愛
 婚約者の辺境伯ダスクにうんざりしていた公爵令嬢アニスは、婚約破棄を突き付けた。すると、彼はアニスを地下百階にある牢屋に幽閉した。一生地上に出られないと絶望するアニスだったが……。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

黒の聖女、白の聖女に復讐したい

夜桜
恋愛
婚約破棄だ。 その言葉を口にした瞬間、婚約者は死ぬ。 黒の聖女・エイトは伯爵と婚約していた。 だが、伯爵は白の聖女として有名なエイトの妹と関係をもっていた。 だから、言ってはならない“あの言葉”を口にした瞬間、伯爵は罰を受けるのだった。 ※イラストは登場人物の『アインス』です

裏切者には神罰を

夜桜
恋愛
 幸せな生活は途端に終わりを告げた。  辺境伯令嬢フィリス・クラインは毒殺、暗殺、撲殺、絞殺、刺殺――あらゆる方法で婚約者の伯爵ハンスから命を狙われた。  けれど、フィリスは全てをある能力で神回避していた。  あまりの殺意に復讐を決め、ハンスを逆に地獄へ送る。

【完結】さよなら、馬鹿な王太子殿下

花草青依
恋愛
ビーチェは恋人であるランベルト王太子の傍らで、彼の“婚約破棄宣言”を聞いていた。ランベルトの婚約者であるニナはあっさりと受け入れて去って行った。それを見て、上手く行ったと満足するビーチェ。しかし、彼女の目的はそれだけに留まらず、王宮の平和を大きく乱すのだった。 ■主人公は、いわゆる「悪役令嬢もの」のヒロインのポジションの人です ■画像は生成AI (ChatGPT)

姉の代わりになど嫁ぎません!私は殿方との縁がなく地味で可哀相な女ではないのだから─。

coco
恋愛
殿方との縁がなく地味で可哀相な女。 お姉様は私の事をそう言うけど…あの、何か勘違いしてません? 私は、あなたの代わりになど嫁ぎませんので─。

処理中です...