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第一章
第二十二話:鍼灸医、長瀬検校梅一
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町奉行所の与力同心は徳川幕府の直臣ではない。
与力同心の扶持は、町奉行所の給地から分配されるのだ。
同じ与力同心なのに、他の番方へ移動する事は絶対にない。
何より与えられる屋敷が武家地ではなく町地なのだ。
不浄役人と蔑まれているのは、その点も影響している。
だがそれは悪い事ばかりではない。
武家地だと、与えられた敷地に勝手に長屋を建てて人に貸す事などできないが、町地なら長屋や離れを建てて人に貸すことができる。
三十俵二人扶持(十六両程度)の薄給同心だと、屋敷一杯に長屋を建てれば年に二十五両以上になる長屋経営は、余禄のない同心には格好の副業なのだ。
同心なら形振り構わず百坪ほどの屋敷地一杯に長屋を建てて、与力の建てた貸家に住めばいいのだが、さすがに与力ともなると大っぴらに長屋は建てられない。
そこで与えられた三百坪ほどの敷地に離れや貸家を建てて、社会的に地位が高い医師や学者、儒者や剣道指南、手習い師匠など貸すことになる。
まあ、配下の同心に貸すのが一番なのだろうが、同心にも良心があって、屋敷地一杯に長屋を建てるのではなく、百坪程度に敷地内に自分達用の小さな屋敷を建てて、残った敷地に長屋を建てる者が多かった。
「それにしても、鍼灸医、長瀬検校梅一とは恐れ入る」
小頭の揶揄うような言葉に梅一も笑うしかなかった。
幼い頃から養父に盗みの技を仕込まれたが、その一つに盲人に偽装するというものがあったのだ。
それも単に盲人に偽装するだけでなく、惣録屋敷に入り込んで本当に座頭になり、鍼灸の技や歌舞音曲の技を会得しろという厳しいものだった。
目が見えるという事を誰にも悟られることなく、敵地ともいえる惣録屋敷に入って多くの技を会得しなければならないのだから、とても厳しい事だった。
だが、養父がいきなり七百十九両もの大金を当道座に納めてくれて、最上位の権検校晴を地位を買ってくれたのだ。
どれほど辛く厳しくても、何度も餓死しかけた梅一は、食い物と金のありがたみを誰よりも知っている。
だから、衣食住整った生活を与えてくれた養父と養祖父が望む、大盗賊になるための鍛錬を嫌う事などなかった。
「全部親父さんの御陰ですよ。
親父に助けていただけなければ、とうの昔に野垂れ死にしています。
親父の教えを守るためなら、どんな事だってやってのけますよ。
親父さんの掟を破る若い衆を、皆殺しにする事も躊躇いませんよ」
梅一が百戦錬磨の小頭や兄貴分達が恐れを抱くくらいの殺気を漏らした。
梅一が暗殺を行っている事に眉をひそめる兄貴分もいた。
だが今の梅一の発言で、親分の教えに背く若い衆を殺す実力をつけるために、暗殺家業に手を染めた事が分かったのだ。
同時のその手は、小頭や兄貴分達が堕落した時にも振るわれると気がついた。
「くっくくくく、梅一の親父さん思いには勝てないな。
俺も梅一に殺されないように、掟を厳守する事にするよ。
今日はこれで帰るが、もっと頻繁に親父さんの所に顔を出すんだぞ」
小頭がそう言ったのを機に、兄貴分達は帰って行った。
梅一は運ばれてきた千両箱を秘密の場所に隠すのだった。
与力同心の扶持は、町奉行所の給地から分配されるのだ。
同じ与力同心なのに、他の番方へ移動する事は絶対にない。
何より与えられる屋敷が武家地ではなく町地なのだ。
不浄役人と蔑まれているのは、その点も影響している。
だがそれは悪い事ばかりではない。
武家地だと、与えられた敷地に勝手に長屋を建てて人に貸す事などできないが、町地なら長屋や離れを建てて人に貸すことができる。
三十俵二人扶持(十六両程度)の薄給同心だと、屋敷一杯に長屋を建てれば年に二十五両以上になる長屋経営は、余禄のない同心には格好の副業なのだ。
同心なら形振り構わず百坪ほどの屋敷地一杯に長屋を建てて、与力の建てた貸家に住めばいいのだが、さすがに与力ともなると大っぴらに長屋は建てられない。
そこで与えられた三百坪ほどの敷地に離れや貸家を建てて、社会的に地位が高い医師や学者、儒者や剣道指南、手習い師匠など貸すことになる。
まあ、配下の同心に貸すのが一番なのだろうが、同心にも良心があって、屋敷地一杯に長屋を建てるのではなく、百坪程度に敷地内に自分達用の小さな屋敷を建てて、残った敷地に長屋を建てる者が多かった。
「それにしても、鍼灸医、長瀬検校梅一とは恐れ入る」
小頭の揶揄うような言葉に梅一も笑うしかなかった。
幼い頃から養父に盗みの技を仕込まれたが、その一つに盲人に偽装するというものがあったのだ。
それも単に盲人に偽装するだけでなく、惣録屋敷に入り込んで本当に座頭になり、鍼灸の技や歌舞音曲の技を会得しろという厳しいものだった。
目が見えるという事を誰にも悟られることなく、敵地ともいえる惣録屋敷に入って多くの技を会得しなければならないのだから、とても厳しい事だった。
だが、養父がいきなり七百十九両もの大金を当道座に納めてくれて、最上位の権検校晴を地位を買ってくれたのだ。
どれほど辛く厳しくても、何度も餓死しかけた梅一は、食い物と金のありがたみを誰よりも知っている。
だから、衣食住整った生活を与えてくれた養父と養祖父が望む、大盗賊になるための鍛錬を嫌う事などなかった。
「全部親父さんの御陰ですよ。
親父に助けていただけなければ、とうの昔に野垂れ死にしています。
親父の教えを守るためなら、どんな事だってやってのけますよ。
親父さんの掟を破る若い衆を、皆殺しにする事も躊躇いませんよ」
梅一が百戦錬磨の小頭や兄貴分達が恐れを抱くくらいの殺気を漏らした。
梅一が暗殺を行っている事に眉をひそめる兄貴分もいた。
だが今の梅一の発言で、親分の教えに背く若い衆を殺す実力をつけるために、暗殺家業に手を染めた事が分かったのだ。
同時のその手は、小頭や兄貴分達が堕落した時にも振るわれると気がついた。
「くっくくくく、梅一の親父さん思いには勝てないな。
俺も梅一に殺されないように、掟を厳守する事にするよ。
今日はこれで帰るが、もっと頻繁に親父さんの所に顔を出すんだぞ」
小頭がそう言ったのを機に、兄貴分達は帰って行った。
梅一は運ばれてきた千両箱を秘密の場所に隠すのだった。
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