20 / 69
2章
19話
しおりを挟む
「陛下、マイヤー王国の軍船が港にやって参りました!」
いかがいたしましょう?」
マイヤー王国から迷惑な客が来たのは、私と父上様が密談した翌日でした。
前王家の密偵達に新たな役目を与え、マイヤー王国に送り込む手段を考えていたその部屋に、旧ホワイト侯爵領、今は王家の直轄領となっている我が故郷の港に、マイヤー王国の軍船が入港してきたと言うのです。
しかもその軍船は莫大な金銀財宝と、やんごとなき人物を乗せていました。
事もあろうに、自称第四王子のガブリエル殿と、自称王弟のグレイソン殿がいたのです。
マイヤー王国は強硬策を取ってきたのです。
私の婿候補として、現王の息子であるガブリエル殿と、前王の息子であるグレイソン殿を送り込んできたのだ。
なんと強引なのでしょうか。
それだけマイヤー王国が何かに追い込まれていると言う事なのでしょうか?
普通に軍事的に考えれば、ゲラン王国対策だと思われるのですが。
「これは一大事である。
直ぐに決断できることではない。
二人の入国を認めれば、我が国がマイヤー王国から婿を迎える事に決したと、他国に思われるだろう。
そんな事実がない以上、入国を認めるわけにはいかん。
だが同時に、無碍に追い返す訳にもいかない。
アルフィンと相談するから、しばらく待て」
「急ぎの伝令よくやり遂げてくれました。
その方の働きで考える時間を手に入れる事ができました。
その方の働きに感謝と褒美をとらせます」
「うむ、そうであったな。
よく気がついてくれた、アルフィン。
この者に休息を与えてくれ。
早馬で胃腸に負担がかかっているだろう。
消化のよい食事を用意するように。
それと褒美だが、褒賞銀一枚を与えてくれ」
父上様も慌てていたのでしょう。
全身汗と埃に汚れた伝令を労わる余裕がないようでしたので、差し出がまし事ですが、私が言葉で褒める事で、父上様が現物の褒美を与えるように仕向けました。
側近が慌ただしく動き始めました。
ですが父上様の狼狽が激しいようです。
もう一言指示が足りません。
「今日はよく集まってくれました。
今の報告を聞いた通り、マイヤー王国の現状を一刻も早く知る必要があるのです。
マイヤー王国に事情があるのは明らかですが、何も知らずに巻き込まれるわけにはいきません。
貴方達には直ぐにでもマイヤー王国に入り、事情を調べ上げてもらわなければなりません。
ですが、マイヤー王国から婿を迎えるのを頭から否定している訳ではありません。
マイヤー王国の事情が我が国の為になるモノなら、積極的に利用します。
そのつもりでマイヤー王国に入り込む準備をしてください」
集まっていた前王家の密偵に解散を命じました。
これで真剣にマイヤー王国を調べてくれるでしょう。
父上様が情けなさそうな目をされておられます。
以前の父上様なら、即座に判断され命令をくだされていた事です。
地位が人を作ると言う諺があるように、重圧が人を壊す事もあるのです。
考えを直ぐに変えるのはよくないですが、父上様にあまり重圧をかけない方がいいのかもしれません。
いかがいたしましょう?」
マイヤー王国から迷惑な客が来たのは、私と父上様が密談した翌日でした。
前王家の密偵達に新たな役目を与え、マイヤー王国に送り込む手段を考えていたその部屋に、旧ホワイト侯爵領、今は王家の直轄領となっている我が故郷の港に、マイヤー王国の軍船が入港してきたと言うのです。
しかもその軍船は莫大な金銀財宝と、やんごとなき人物を乗せていました。
事もあろうに、自称第四王子のガブリエル殿と、自称王弟のグレイソン殿がいたのです。
マイヤー王国は強硬策を取ってきたのです。
私の婿候補として、現王の息子であるガブリエル殿と、前王の息子であるグレイソン殿を送り込んできたのだ。
なんと強引なのでしょうか。
それだけマイヤー王国が何かに追い込まれていると言う事なのでしょうか?
普通に軍事的に考えれば、ゲラン王国対策だと思われるのですが。
「これは一大事である。
直ぐに決断できることではない。
二人の入国を認めれば、我が国がマイヤー王国から婿を迎える事に決したと、他国に思われるだろう。
そんな事実がない以上、入国を認めるわけにはいかん。
だが同時に、無碍に追い返す訳にもいかない。
アルフィンと相談するから、しばらく待て」
「急ぎの伝令よくやり遂げてくれました。
その方の働きで考える時間を手に入れる事ができました。
その方の働きに感謝と褒美をとらせます」
「うむ、そうであったな。
よく気がついてくれた、アルフィン。
この者に休息を与えてくれ。
早馬で胃腸に負担がかかっているだろう。
消化のよい食事を用意するように。
それと褒美だが、褒賞銀一枚を与えてくれ」
父上様も慌てていたのでしょう。
全身汗と埃に汚れた伝令を労わる余裕がないようでしたので、差し出がまし事ですが、私が言葉で褒める事で、父上様が現物の褒美を与えるように仕向けました。
側近が慌ただしく動き始めました。
ですが父上様の狼狽が激しいようです。
もう一言指示が足りません。
「今日はよく集まってくれました。
今の報告を聞いた通り、マイヤー王国の現状を一刻も早く知る必要があるのです。
マイヤー王国に事情があるのは明らかですが、何も知らずに巻き込まれるわけにはいきません。
貴方達には直ぐにでもマイヤー王国に入り、事情を調べ上げてもらわなければなりません。
ですが、マイヤー王国から婿を迎えるのを頭から否定している訳ではありません。
マイヤー王国の事情が我が国の為になるモノなら、積極的に利用します。
そのつもりでマイヤー王国に入り込む準備をしてください」
集まっていた前王家の密偵に解散を命じました。
これで真剣にマイヤー王国を調べてくれるでしょう。
父上様が情けなさそうな目をされておられます。
以前の父上様なら、即座に判断され命令をくだされていた事です。
地位が人を作ると言う諺があるように、重圧が人を壊す事もあるのです。
考えを直ぐに変えるのはよくないですが、父上様にあまり重圧をかけない方がいいのかもしれません。
1
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~
ふわふわ
恋愛
地味で目立たない伯爵令嬢・エルカミーノは、王太子カイロンとの政略婚約を強いられていた。
しかし、転生聖女ソルスティスに心を奪われたカイロンは、公開の舞踏会で婚約破棄を宣言。「地味でお前は不要!」と嘲笑う。
周囲から「悪役令嬢」の烙印を押され、辺境追放を言い渡されたエルカミーノ。
だが内心では「やったー! これで自由!」と大喜び。
実は彼女は前世の記憶を持つ天才錬金術師で、希少素材ゼロで最強ポーションを作れるチート級の才能を隠していたのだ。
追放先の辺境で、忠実なメイド・セシルと共に薬草園を開き、のんびりスローライフを始めるエルカミーノ。
作ったポーションが村人を救い、次第に評判が広がっていく。
そんな中、隣国から視察に来た冷徹で美麗な魔導公爵・ラクティスが、エルカミーノの才能に一目惚れ(?)。
「君の錬金術は国宝級だ。僕の国へ来ないか?」とスカウトし、腹黒ながらエルカミーノにだけ甘々溺愛モード全開に!
一方、王都ではソルスティスの聖魔法が効かず魔瘴病が流行。
エルカミーノのポーションなしでは国が危機に陥り、カイロンとソルスティスは後悔の渦へ……。
公開土下座、聖女の暴走と転生者バレ、国際的な陰謀……
さまざまな試練をラクティスの守護と溺愛で乗り越え、エルカミーノは大陸の救済者となり、幸せな結婚へ!
**婚約破棄ざまぁ×隠れチート錬金術×辺境スローライフ×冷徹公爵の甘々溺愛**
胸キュン&スカッと満載の異世界ファンタジー、全32話完結!
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました!
なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
【完結】婚約破棄の次は白い結婚? ちょっと待って、それって私可哀想すぎると思うんだけど・・
との
恋愛
婚約破棄されるって噂を聞きつけたけど、父親から
【命に関わるから我慢しなさい】
と言われ、言いたい放題の人達に文句も言わず婚約破棄を受け入れたエリン。
ところが次の相手は白い結婚だ!と言い出した。
えっ? しかも敷地内に恋人を囲ってる?
何か不条理すぎる気がするわ。
この状況打開して、私だって幸せになりますね。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
大幅改訂しました。
R15は念の為・・
この国では魔力を譲渡できる
ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」
無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。
五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる