自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。

克全

文字の大きさ
17 / 28
第二章

第17話:暴走・ジェイムズ王家サイド

しおりを挟む
「ええい、殺せ、殺せ、殺してしまえ。
 ルイーズが本当の聖女でコリンヌが偽物の聖女だと。
 私が愚かにもコリンヌに騙されて本物の聖女を追い出しただと。
 そんな嘘を広める連中は全員捕らえて罰しろ。
 いや、それでは手緩い、私の事を悪く言う連中は皆殺しにしろ」

 ジェイムズ王家第三王子のルドルフは怒りのあまり暴れ回っていた。
 手当たり次第に部屋の物を破壊していた。
 それどころか目に入る侍女や侍従に殴る蹴るの暴力を振るっていた。
 馬鹿だが巨漢で怪力のルドルフが力任せに殴るのだ。
 侍女や侍従は大ケガをして実家に戻されることになる。
 当然だがルドルフの王都での評判は最悪になる。
 いや、王族や貴族の間でも悪評が広まっていた。

「父王陛下、いい加減ルドルフを処分してください。
 このままでは王族の評判が地に落ちてしまいます」

 我こそは次期王太子だと思っている第一王子のクロードが、父親のウェントワース国王にルドルフの処分を強く求めていた。

「それは王家の威信を損なう悪しき策だと思われます、父王陛下。
 確かにルドルフの粗暴は目に余るものがありますが、民の声を恐れて処分などしたら民がつけあがりましょう」

 第二王子のロバートが反対だと言いだした。
 ロバートも内心ではルドルフを処分すべきだと思っていた。
 だが王になりたいロバートは、愚かなルドルフを利用して兄のクロードを追い落とそうとしていたので、仕方なく庇ったのだ。

「なに、私が民の声を恐れているというのか、ロバート。
 何も私は民の声を恐れて言っているわけではない。
 民など何時でも殺せる弱い存在だ。
 そんなモノを恐れる必要など全くない。
 大切なのは王家の名声だ。
 あのような行いを放置していては恥だと言っているのだ」

 ウェントワース国王は迷っていた。
 ルドルフの行いはよくないとは思っていたが、同時に平民や下級貴族出身の侍女や侍従が少々殴られようが、大したことないとも思っていた。
 王族が下級貴族を憂さ晴らしに殴るのはよくある事だと持っていた。

 国王のそんな思いは聡い貴族に直ぐに伝わるものだった。
 そのため王家の求心力は急速に低下していた。
 それ以上に貴族から忌み嫌われだしたのがウィルブラハム公爵家だった。
 全ての元凶がコリンヌであり、それをやらせたのがウィルブラハム公爵だという事は、少し頭のまわる貴族なら直ぐわかる事だった。
 
 同じころ王都に各所で同じような噂が流れていた。

「ねえ、聞いた、ルドルフの事」

「聞いたわよ、馬鹿で粗暴なルドルフがまた侍女を一人殴り殺したんだって」

「あら、私は三人殴り殺したと聞いたわよ」

「違うわよ、五人を殴り殺して三人を蹴り殺したのよ」

「あら、そうだったの、確かにルドルフならやりかねないわね」

「そんなことより大変な話があるのよ。
 今度また王都の税金が上がるって聞いたわよ」

「なによ、それ、ちょっと前に臨時で集めたとこじゃない」

「それがね、ルドルフとコリンヌの結婚式のために集めるんだって」

「なんですって、あんな偽聖女と殺人王子のために私たちの大切なお金を奪うというの、信じられないわ」

「ほんとうよ、もう我慢できないわ」

「そうそう、あの話聞いた」

「なになになに、何の話よ」

「慈母聖女様の御領地で移民を募集しているって話よ」

「ああ、それは聞いたわよ。
 家も放牧地も家畜も貸し与えてくださるって話よね」

「そうなのよ、ここだけの話、国境周辺の民が沢山逃げ込んでいるそうよ」

「私も聞いているわ、もう三十万人になっているですって」

「あら、私は五十万人だって聞いたわよ」

「私は百万人だと聞いているわよ」

「このまま税金が上がって暮らせなくなったら私も逃げようかしら」
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います

黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。 レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。 邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。 しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。 章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。 どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。 表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました

AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」 公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。 死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった! 人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……? 「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」 こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。 一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。

(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです

しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。 さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。 訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。 「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。 アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。 挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。 アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。 リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。 アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。 信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。 そんな時運命を変える人物に再会するのでした。 それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。 一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全25話執筆済み 完結しました

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

公爵令嬢は婚約者の王太子に横恋慕した自称聖女の妹に呪いをかけられる

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『目には目を歯には歯を、呪いには呪いを』 ベイリー公爵家の長女マリアンヌはとても幸せだった。幼馴染で王国一の美男子と評判なだけでなく、長剣を持っても王国有数の名手であるマクシミリアン王太子との結婚が正式に決まったのだ。幼い頃から婚約していたが、適齢期になっても互いに何の問題もなく、マリアンヌの十八歳の誕生日を待って挙式することになっていた。だがそれは、日頃から自分は聖女だとアピールして、マクシミリアン王太子の婚約者の座を奪おうとしていた妹のサロメに悪の決断をさせることになった。悪魔女である母親カトリーヌの血を色濃く継ぐサロメは、姉マリアンヌに最悪の呪いをかけたのだった。

処理中です...