自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。

克全

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第二章

第19話:音楽の祭典

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「素晴らしいわ、こんな素敵な音楽の祭典は生まれて初めて見たわ」

「そうですね母上、父上。
 多くの吟遊詩人や音楽家が見事な歌や演奏を披露してくれました」

「まあ、なにを謙遜しているのですか。
 セシリアの歌と竪琴の演奏が誰よりも素晴らしかったわ。
 まるで音楽の女神が降臨されたかのようでした」

「それはほめ過ぎですわ、母上」

「いや、いや、ルイーズの言う通りだぞ。
 それにこれはルイーズだけが言っているわけではないぞ。
 大陸中から集まった王侯貴族も同じようにほめておられたぞ。
 それどころか有名な吟遊詩人や音楽家も手放しでほめ称えていたぞ」

 あまりほめられると照れてしまいます。
 でも正直少し腹立たしく複雑な気持ちです。
 私一人の力ではなく、ヘルメスの聖女としての能力も加わっていますから……

「そんなにほめていただけると、少し恥ずかしくなってしまいます。
 でも、うれしくもあります、ありがとうございます、父上。
 ですがこの祭典が成功したのは父上が旅人や商人を差配してくださったからです」

 ヘルメスは約束を守って大陸中から人を集めてくれた。
 その数があまりに多過ぎて、ブゼル大荒野に新たに作られたブートル副伯領では、とても宿泊場所を確保できないはずだった。

「いや、いや、それはセシリアの力があってからこそだ」

 だが、ヘルメスは旅人と商人の神でもあるので、簡易の宿泊が可能なテントや馬車を持った旅人と商人も多数きてくれていた。
 彼らからは結構な金額の税金を集めることができた。
 もちろんブートル副伯家としても買えるだけのテントや馬車を買い、大陸中から来てくれた人々から直接宿泊料を手に入れてもいた。

「セシリアが聖女だったからこそ多くの人が集まって来たのだ。
 なにより旅人と商人が協力してくれたのだ」

「いえ、私だけの力ではありません。
 母上が慈母聖女として慕われていたからこそ、領民が進んで働いてくれたのです。
 彼らが悪事に走ることなく真っ当に働いてくれたのは母上のお力です」

 なによりよかったのは、領民に仕事を与えられた事だ。
 宿泊や料理の提供だけでなく、市場の設営や管理の仕事もできたのだ。

「そんな事はないわ、全部セシリアの力よ。
 もうここには私たち三人しかいないのよ。
 だから正直に言ってくれいいのよ、セシリア。
 そもそも宝石を創り出す力なんて聖女でなければ得られないわよ。
 セシリアに注目が集まり過ぎないように、私が目立つのは構いません。
 いえ、セシリアのためなら進んで注目を集めて囮になってみせます。
 だから全部正直に言ってちょうだい、セシリア」
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