異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全

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第一章

第24話:難癖

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 皇紀2217年・王歴221年・冬・エレンバラ王国男爵領

「エレンバラ男爵閣下、皇国貴族と偽り密かに交易をおこなっている事、我が主ロスリン伯爵は、一族の当主として許されない事だと申しております。
 今まで我らやエクセター侯爵が被られた被害を弁済してもらわねば、一族の当主として厳しい処置を取らねばならないと言っております」

 この冬の寒い時期に戦争を引き起こそうとは、働き者だなロスリン伯爵。
 まあ、煽ったのは俺だから、俺に働かされていると言うのが正確かな。
 俺から皇太子殿下に皇国の正式な即位式を行うように献策させてもらった。
 最初献策した時には、俺を利用した中継貿易で利益が出ているとはいえ、とても即位式を行えるだけの蓄えがないので、無理だという返事が返ってきた。

 だが俺が全費用、金貨四千五百枚分の銅貨を献金すると伝えると、何度も確認の使者が来た。
 俺が本気だと確信できたのだろう。
 祖父とは違う、いや、皇国の役職から言えば、祖父よりも遥かに地位の高い正使が送られてきて、是非やりたいから即位式に列席して欲しいと使者が来た。
 内々ではあるが、名誉皇国伯爵に叙勲するという話までもらっている。

 俺とすれば、皇家と皇国に伝わる貴重な技術書の写本がもらえればそれでいいのだが、くれると言うモノはなんでも遠慮なくもらうことにした。
 何度も正使が来てくれたので予定していた以上の正使貿易ができて大儲けだった。
 正式な即位式をする前に、即位式の全費用を俺が寄付した事を公表してもらった。
 同時に即位式後に名誉伯爵に叙勲される事も公表してもらった。

 はっきり言おう、意識的に挑発したのだ。
 王家もカンリフ騎士家も激怒しただろうが、誰よりも怒り警戒したのはエクセター侯爵だろう。
 エクセター侯爵側が我が領地に攻め込んで来るのなら好都合だ。
 渓谷で迎え討って首を取ってやる心算だったのだが、そうはいかないだろう。
 このままロスリン伯爵に代理戦争をさせて俺の実力を確かめるはずだ。

「それは、今回の難癖をエクセター侯爵がつけたという事か。
 こちらは何時でも迎え討って戦う覚悟はできているのだがな」

「そ、そのような事はございません。
 私が主から伺っているのは、一族内での話でございます。
 先ほどの私の言葉が誤解を与えたのなら、お詫びさせていただきます。
 今回の件はあくまでも一族内の話しでございます」

「ほう、それに間違いないのですな、使者殿」

 ヴィンセントの伯父上が会話に割って入ってきた。

「今の言葉、皇太子殿下の正使として首都に持ち帰り報告させていただきますぞ。
 エクセター侯爵にも国王にも、正式な使者を送って確かめさせて頂きますぞ。
 それでなくとも皇太子殿下は激怒されておられるのですよ。
 皇家皇国の窮状を助けるために、その方の主人に封鎖された苦しい状態なのに、皇帝陛下の葬儀費用から即位費用まで全て出してくれたエレンバラ男爵に対して、愚にもつかない難癖をつけて戦争を引き起こそうとしている。
 即位式の前に戦争など起こして、皇太子殿下の即位式に泥を塗る気ですか。
 しかもあなたの主人も一族衆も、即位式に銅貨一枚の献金も行っていない。
 親分を気取っているエクセター侯爵も、エレンバラ男爵に匿ってもらっている国王も同じですが、使者殿はその事をいかに思っているのですか」

 ロスリン伯爵の使者は、我が城に滞在していたヴィンセントの伯父上に詰問されて、真っ青な顔をして脂汗を流している。
 伯父上はヴィンセントの爺様と一緒に来たが、首都に帰らずに残っていたのだ。
 ロスリン伯爵が使者を送って来そうだと影衆からの報告があったからだ。
 伯父上は特産品の酒を浴びるほど飲めてご機嫌だった。
 俺が持ち込んだ前世の知識を使った料理も美味そうに食べていた。

 そんな酒好きで食い意地もはった伯父上だが、役に立つ事もある。
 戦力も経済力もないが、名誉と権威だけはあるのが皇国なのだ。
 まして国王がこの地方に亡命しなければいけないくらい王国は混乱している。
 俺の経済力で支援すれば、皇家や皇国が復権しないとは限らないのだ。
 いや、今の状況でもロスリン伯爵家との開戦はもちろん、ロスリン伯爵暗殺の口実にする事は可能なのだ。

「申し訳ございません、ヴィンセント子爵閣下。
 私ごときには何も答える事などできません」

 ロスリン伯爵の使者は上手く逃げようとしたな、だが逃がさないぜ。

「では俺から改めて聞かせてもらおうか、使者殿。
 俺が父の仇であるロスリン伯爵の首を取り領地を奪ったとしても、一族内の抗争としてエクセター侯爵も国王陛下も口出しされないのだな。
 その約束をいただけないのなら、エクセター侯爵と国王陛下は、皇太子殿下の即位式に銅貨一枚の出さなかったのに、俺が全額献金した事を妬み、正当な理由もなく、わずか領民八千人の我が家に戦争を吹っかけてきた。
 そのように全国の貴族達にお伝えするが、それでいいのだな!」
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