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第一章
第92話:仇討ち
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皇紀2223年・王歴227年・初秋・キンロス地方
俺が説得しなければいけないのはクルシー侯爵イーサンだな。
「クルシー侯爵、カンリフ一族は既に一度天下に覇を唱えた。
国王と宰相を首都から追い出し、天下の政を行った。
十分にカンリフ一族は天下に武名を轟かせたのだ。
ここで自分の欲望のために内紛を起こして惨めな末路をたどらせたいのか」
「最初反対した時に、自分の欲が全くなかったとは言わない。
だが今はそのような欲など持っていない。
今心配しているのは、魔術契約で縛った我らを貴殿が理不尽に扱わないかだ」
「そのような事は絶対にしない、いや、できない。
カンリフ一族の待遇についても、綿密に話し合って決めよう。
双方が納得した条件になるまで話し合えばいい」
「待ってください、頭領。
もうライアンには時間がないのだ、細かい条件を決めている間に死ぬかもしれぬ。
儂とライアンは無条件で魔術契約をさせてもらう。
だから今直ぐエリクサーを与えてやってくれ、頼む、この通りだ」
「頭をあげてくれ、ルーカス殿
何もエリクサーだけが薬ではない、他にも延命に使える薬はある。
五日や七日くらいは絶対に死なない、病魔を止める薬や魔術がある。
それを使えば条件を話し合う時間くらいは幾らでも作れる」
「いえ、たった一人の大切な息子を助けてもらうのに、こちらから条件を出す事が不遜なのは分かっております。
この通りです、お願いです、ライアンを助けてやってください、この通りです」
息子助けたさに形振り構わなくなっているな。
これ以上、天下のカンリフ公爵ルーカスに土下座させるのも可哀想だ。
「分かりました、では直ぐに魔術契約をしてエリクサーを渡しましょう。
ただ、クルシー侯爵には私が与える物を話しておきましょう。
私はカンリフ一族が本当に望んでいる事を手伝いましょう」
「我が一族が一番望んでいることだと、何を言っているのだ、エレンバラ侯爵殿。
我が一族はもう天下を手に入れる事ができないのですぞ」
表面上だけとはいえ、言葉遣いが丁寧になったな。
クルシー侯爵も甥のライアンを見殺しにするのは心が痛むのだろう。
何より、父亡きあと一族を護ってきた兄の苦しみを見ていられないのだろう。
「カンリフ一族の悲願は、父親の敵討ちだと思っていたのだが、違うのかい。
俺にカンリフ一族が臣従してくれたら、どれだけの力になると思っている。
天下に恐れられたアザエル教団であろうと、我らの力には勝てない。
それに、カンリフ公爵家の本領地となるブルース地方に、アザエル教団の大神殿があるなど、目障りどころか大いに邪魔だろう。
これから西方に攻め込むにしても、各地にアザエル教団の神殿がある。
大神殿を放置していたら、何時また背後から襲われるか分からないぞ。
親父殿の無念を忘れたわけではないだろう。
俺に臣従してくれた褒美として、父親の仇を討つ手伝いと同時に、西方に攻め込むときに一番危険な存在を消す手伝いをしてやろう」
俺が説得しなければいけないのはクルシー侯爵イーサンだな。
「クルシー侯爵、カンリフ一族は既に一度天下に覇を唱えた。
国王と宰相を首都から追い出し、天下の政を行った。
十分にカンリフ一族は天下に武名を轟かせたのだ。
ここで自分の欲望のために内紛を起こして惨めな末路をたどらせたいのか」
「最初反対した時に、自分の欲が全くなかったとは言わない。
だが今はそのような欲など持っていない。
今心配しているのは、魔術契約で縛った我らを貴殿が理不尽に扱わないかだ」
「そのような事は絶対にしない、いや、できない。
カンリフ一族の待遇についても、綿密に話し合って決めよう。
双方が納得した条件になるまで話し合えばいい」
「待ってください、頭領。
もうライアンには時間がないのだ、細かい条件を決めている間に死ぬかもしれぬ。
儂とライアンは無条件で魔術契約をさせてもらう。
だから今直ぐエリクサーを与えてやってくれ、頼む、この通りだ」
「頭をあげてくれ、ルーカス殿
何もエリクサーだけが薬ではない、他にも延命に使える薬はある。
五日や七日くらいは絶対に死なない、病魔を止める薬や魔術がある。
それを使えば条件を話し合う時間くらいは幾らでも作れる」
「いえ、たった一人の大切な息子を助けてもらうのに、こちらから条件を出す事が不遜なのは分かっております。
この通りです、お願いです、ライアンを助けてやってください、この通りです」
息子助けたさに形振り構わなくなっているな。
これ以上、天下のカンリフ公爵ルーカスに土下座させるのも可哀想だ。
「分かりました、では直ぐに魔術契約をしてエリクサーを渡しましょう。
ただ、クルシー侯爵には私が与える物を話しておきましょう。
私はカンリフ一族が本当に望んでいる事を手伝いましょう」
「我が一族が一番望んでいることだと、何を言っているのだ、エレンバラ侯爵殿。
我が一族はもう天下を手に入れる事ができないのですぞ」
表面上だけとはいえ、言葉遣いが丁寧になったな。
クルシー侯爵も甥のライアンを見殺しにするのは心が痛むのだろう。
何より、父亡きあと一族を護ってきた兄の苦しみを見ていられないのだろう。
「カンリフ一族の悲願は、父親の敵討ちだと思っていたのだが、違うのかい。
俺にカンリフ一族が臣従してくれたら、どれだけの力になると思っている。
天下に恐れられたアザエル教団であろうと、我らの力には勝てない。
それに、カンリフ公爵家の本領地となるブルース地方に、アザエル教団の大神殿があるなど、目障りどころか大いに邪魔だろう。
これから西方に攻め込むにしても、各地にアザエル教団の神殿がある。
大神殿を放置していたら、何時また背後から襲われるか分からないぞ。
親父殿の無念を忘れたわけではないだろう。
俺に臣従してくれた褒美として、父親の仇を討つ手伝いと同時に、西方に攻め込むときに一番危険な存在を消す手伝いをしてやろう」
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