婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全

文字の大きさ
6 / 50
第1章

第5話:義を見てせざるは勇無きなり

しおりを挟む
「行くぞ!」

 聞こえてきたのが男達の怒声だけなら、助けに行かない。
 だが、子を想う母の悲痛な叫びを耳にしたら、無視できない

「「「「「クルルルルル!」」」」」

 愛竜達も俺の想いに応えてくれる。
 俺が寅さんに飛び乗る僅かなロスに、雌五頭が先行してくれる。
 疾風のような速さで愛竜達が駆け、あっという間に村についた。

「ぎゃっ!」

 見上げるようなクマ系魔獣の一撃で猟師の腕が千切れ飛ぶ。
 激痛のあまり悲鳴は上げたが、自分で手早く止血して延命を図っている。
 百戦錬磨、実戦経験が豊富な猟師村なのがひと目で分かる。

「クッホ、クッホ、クッホ」

 人間を嬲り殺すのが面白いのか、クマ系魔獣が喜悦の表情を浮かべている。
 クマ系魔獣は圧倒的な実力差を自覚しているのだろう。

 それが分かっているのに、勝ち目はないのに、負けると分かっているのに、死ぬ可能性がとても高いのに、猟師達が決死の遅延戦闘を行っている。

「怯むな、一撃避ければ、子供が一人助かると思え!」

 狂気に囚われたクマ系魔獣から女子供を逃がすために、命を投げ出す猟師達。
 好いじゃないか、命を賭けるだけの価値がある!
 クマ系魔獣の一撃を辛うじて避けた猟師が、逃げ遅れた、このままでは殺される!

「こっちだ、死ねや!」

 大声と殺気の両方を放って、クマ系魔獣の注意を引き付ける。
 無視したら危険を思われるくらいの大声と殺気で、倒れた猟師を助ける。
 力一杯、最大に引き絞った合成長弓から、強大な魔獣用の強化矢を放つ!

「ガッホッ!」

 異世界に転生したと分かった時から、努力に努力を重ねてきた。
 戦いと狩りの両方で重要な弓術は、特に鍛錬に鍛錬を重ねて腕を磨いた。
 接近さえできたら、雄叫びを上げる口を射貫く事くらい簡単だ。

「俺に続け、あばら三枚、肛門突き、耳貫き、猟師の秘術を使う好機だぞ!」

 俺は猟師達が会得しているであろう秘術を口にした。
 俺が同じ猟師なのだと分からせるために、達人級猟師が使う秘術を口にした。
 今動けば助かるのだと分からせたかった。

 だが、不意に助太刀に現れた俺の事が理解できないのだろう。
 何をどうすれば良いのか分からず、猟師達が固まっている。

 だが、残された時間はほんの僅かだ。
 喉の奥まで矢をぶち込まれた、クマ系魔獣が混乱する数秒で、勝負が決まる!

「俺に続け!」

 残念ながら、俺が気合を入れたのにも関わらず、動いたのは一人だけだった。
 それでも、一人の猟師が俺に続いてくれた、大声で仲間に気合を入れてくれた。

 だが、その一人が猟師達の大将だったのだろう。
 経験も豊富なのか、生き残っている猟師に突撃を命じた。

「死ねや!」

 寅さんがクマ系魔獣の死角をついた駆け方をしてくれる。 
 喉の奥に矢を喰らって、喉から胸の辺りをかきむしるクマ系魔獣。
 その横につけてくれるから、耳の穴を狙って矢を放てる!

「グッ、ギャアアアアア!」

 上手く脳まで届いたか、脳の直ぐ近くまで矢が届いているはずだ!
 矢が左耳から頭の奥深くまで貫く激痛に、クマ系魔獣が転がり回る。

「下がれ、下敷きになったら死ぬぞ!」

 猟師の大将格が素早く指示を変えた、臨機応変に対応できる優秀な指揮官だ。
 彼のような指揮官がいれば、大魔境でも死者を出さずに狩りができる。

「遠巻きにしろ、死なないようなら止めを刺す、今は巻き込まれるな」

 猟師の大将の指示に加えて、俺からも命令した。
 指揮系統が交錯する状態は最悪だが、今はしかたがない、命がかかっている。
 今日初めて見た大将を信じて、自分の命はもちろん他人の命も預けられない。

 俺は自分の事を一番信じている。
 他人を信じて生き延びるよりも、自分を信じて死にたい性格だ。
 そんな性格だから、他人の命も自分を信じて守る!

「グッ、ギャアアアアア!」

 前世の動物園で見た、体重十トンのアフリカゾウを二回り大きくしたような奴。
 そんなクマ系魔獣が痛みに耐えきれずにのたうち回っているのだ。
 できるだけ早く止めを刺したいが、さすがに近づけない。

「何か手伝えることはあるか?!」

 猟師達の大将が声をかけて来た。
 経験豊富な大将も、この状況では何をしたら良いのか分からにようだ。

「できるだけ負傷者を治療して、不測の事態に備えてくれ!
 軍竜や軍馬、乗竜や乗馬がいるなら騎乗してくれ」

「そうか、分かった、村に残っている竜と馬を集めろ!」

「「「「「おう!」」」」」」

 猟師達も状況が一気に好転したのを理解したのだろう。
 決意の籠った表情で力強く答えてくれる、頼りにできるかな?

「グッ、ギャアアアアア!」

 目の当たりにするクマ系魔獣の生命力と体力には驚き恐怖する。
 脳にまで届いていなかったとしても、激痛で動けないはずなのに。

「グッ、ギャ!」

 激烈な怒りを込めた目でクマ系魔獣が俺を睨む。
 致命傷を与えたと思ったが、まだ十分に戦えるようだ。

 喉に突き刺さった矢は、矢羽の所が口から出ている。
 耳から脳に向かって突き刺さった矢は、半分くらい出ている。
 だが、鏃は返しのある奴を使ったから、抜きたくても抜けない。

「そうかよ、お前も待ち構えていたのかよ」

 最初は本当に痛くて地面をのたうち回っていたのだろう。
 だが、途中からは、不用意に近づいて来た人間を巻き込んで殺す気だったのだ。
 人間はそれほど馬鹿ではない、が、魔獣の癖に知恵があるじゃないか。

「グッ、ギャ!」

 体に二つもの矢を喰らわせた俺が、憎くてたまらないのだろう。
 同時に、警戒しなければいけない強敵だと認識したのだろう。
 のたうち回っていた後半は、俺の矢を避ける擬態だったのだろう。

「「「「「クルルルルル!」」」」」

 これまで様子を見てくれていた雌の軍竜達が、クマ系魔獣を挑発してくれる。
 クマ系魔獣が俺にだけ集中できないように、牽制してくれる。
 僅かでも隙を見せたら皮ごと肉を喰い千切ると、牽制してくれる。

 矢も槍も剣も防ぐ剛毛と皮、打撃も斬撃も受け止める厚く柔軟な脂肪。
 それを斬り破る強力な攻撃も、鋼のような筋肉を斬り断つ事ができない。
 そんなクマ系魔獣でも、軍竜達の牙を受けると肉を喰い千切られる。

 軍竜六頭の連携は、俺が最も力を入れて訓練した強みだ。
 一番新しく買った雌の軍竜は未熟だが、その分距離を取って牽制する。
 もしクマ系魔獣が一番未熟な軍竜を狙ったら、今度こそ俺が急所を貫く!

「グッ、ギャ!」

 しまった、狂気に囚われているはずなのに、頭がいい。
 一番経験が少ない雌の軍竜を狙うと思っていたのに、人間を狙いやがった。
 離れて安全な場所にいるはずの猟師を狙いやがった!

「逃げろ!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...