美人な姉と『じゃない方』の私

LIN

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美人な姉

美人な姉

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「可愛いね」「美人さんだね」

私は物心付いた時から、周りのみんなに褒められていた。


ちょっと笑っただけで、みんな頬を染めて私を褒めちぎる。
「大丈夫?」そう言っただけで、優しいってみんなが言う。

最初は嬉しかった。

でも、段々と嫌になってきてしまった。

どこに行ってもみんなに注目されて、いつでもどこでも、人に見られて気が抜けない。


私は妹が、サキが羨ましかった。

「お姉ちゃんはいいな。お姉ちゃんみたいになりたかった」

サキはそう言うけど、私はサキになりたかった。


両親はサキにはいつも甘い。

泣き喚くサキを「仕方ないわね」って言って、いつも許していた。

私が同じ事をすると「お姉ちゃんでしょう?」って言って怒るのに、たった三歳違うだけでここまで変わるの?

なんでも許されて、いつも幸せそうにしているサキを、私はいつも羨ましく思っていた。


私だってサキみたいに怒ったり、泣いたりしたい。

でも、みんなを裏切ってしまう。

近所の人達の期待、両親からの要望。

だから、私はいつも自分を演じていた。

みんな私のことを知らないのに、勝手に私を創り上げて、本当に嫌だった。


両親は私に話しかけるときは『エリ』って呼ぶけど、サキがいるときは『お姉ちゃん』って呼ぶ。

私だって名前で呼んでほしいのに…

サキは可愛い妹なのに、時々疎ましく感じてしまったんだ。


近所の人は私たち姉妹を『美人な姉』『美人じゃない方の妹』と言っていた。

(私達のこと知らないのに、なんて勝手な人達なんだろう…)

みんな私達の上辺しか見ない。

いつになったらこんな人生から開放されるのか、そう思っていつも辛かった。


ある日、サキが新しい服を母に強請ったけど、母に断られて泣いていた。

「サキ前にこれ欲しがってたでしょ?あげるよ」

私はそう言って、少しだけ古くなった服をサキにあげた。

お気に入りの服だったけど、泣いているサキが可哀想で、サキの好きだった服をあげたんだ。サキは喜んでくれた。

そんな私達を見て、母は言った。

「サキ良かったね。ちゃんとお姉ちゃんにお礼言わなきゃ。お姉ちゃんは新しい服を買ってあげなきゃね。今度買い物に行こう」

私は母に、新しい服を買ってもらえた。

着古した服をサキにあげただけなのに、母に褒めて貰えた。それに、新しい服まで買ってくれた。


泣いてるサキを慰めていたら「優しいお姉さんだね」ってみんなが言う。

両親が一番たくさん私を褒めてくれた。

「『エリ』は優しいお姉ちゃんだね」

両親は毎回私の名前を呼んでくれた。

(サキに優しくするだけでいいんだ。それだけでみんなが褒めてくれる。お母さん達も『エリ』って私の事を呼んでくれるんだ)


『美人じゃない方』の妹に優しく接する『美人な姉』

それだけでみんなが喜ぶ。

当時小学生の私は、そんな風に考えてしまったんだ。
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