8 / 192
3.転校生
1.花より団子
しおりを挟む
こういう話は、どこから仕入れてくるのだろう。少し前から転校生が来る、という噂が流れていた。今日正に来るらしい。一部の生徒が、男子なのか女子なのか話題にしていた。
有紀子の席に椅子を持ってきてお喋りをしていた加奈子が、みんなを見やる。
「ふーん、格好良い人だったらいいねぇ、有紀子」
「え? どっちでもいいよ」
「でも、格好悪い人よりはいいじゃない?」
何を期待しているのか。意味深な笑みを浮かべて加奈子が笑う。幼馴染みの陸が忘れられないのを加奈子は知っていた。中学2年生の時に、有紀子から聞いたからだ。
加奈子は初めはいい話だと思ったが、3年の修学旅行の時から考えを変えた。夜寝る前に恋話に花を咲かせていた時、有紀子1人上の空だったのを見て、そう思った。
陸の思い出が亡霊の様に憑いている。そう思った加奈子は、それからというもの、どの男子が有紀子に好感を持っているかなどを仕入れて、背中を押そうとする。
元々外交的な性格でもない有紀子は躊躇したが、それでも加奈子は話す機会を設けたりして、進展するか様子を見た。有紀子は観察されているみたいで少し嫌だったが、同時に、加奈子は調整役としての資質がある、と感心した。
「はぁ」
有紀子はため息をついた。加奈子は楽しそうだった。やる気満々だ。少し顔が良ければ、必ず奨めてくるだろう。お眼鏡に適ったのなら、自分で付き合えばいいのに、と有紀子は思った。
(ああ、大学生の彼氏いるのか)
女子から見れば、男子はいつまでたっても子供に見える。特に中学生くらいは、本当男子はバカだった。今はさすがに体格差も出たし、頭の中も成長しているけど、大学生には敵わないのだろうか。男友達の多い加奈子であるが、話している様子を見ていると、男子の1個上にいる感じがする。
高校生になると、殆どの女子は、対等か少し下から目線で男子と話す。それか一歩退いた感じで話す。だが、加奈子は男子との距離が近い。時々あなた男子ですか? と思うほどだ。しかも上から目線。
卒業したら大学に進学するのだろうか。それとも親の経営する小さな会社を継ぐのだろうか。そうか、会社の跡取りだから、上から目線で人と接することに慣れているのか、と有紀子は妙な納得をした。
外で就職すれば、加奈子は女性管理職として活躍するのだろう。有紀子は、私の恋路が彼女の成長の糧にされている、と悟る。諦観の念混じりに。
(見返りにクレープをおごらさせてやらねば)
有紀子は、ふと甘い想像に浸る。
(いや、アイスか? ケーキか? それとも全部か?)
幸せそうに頬が緩む有紀子の頭の中に、転校生のことは微塵もない。ただただスイーツが渦巻いていた。
有紀子の席に椅子を持ってきてお喋りをしていた加奈子が、みんなを見やる。
「ふーん、格好良い人だったらいいねぇ、有紀子」
「え? どっちでもいいよ」
「でも、格好悪い人よりはいいじゃない?」
何を期待しているのか。意味深な笑みを浮かべて加奈子が笑う。幼馴染みの陸が忘れられないのを加奈子は知っていた。中学2年生の時に、有紀子から聞いたからだ。
加奈子は初めはいい話だと思ったが、3年の修学旅行の時から考えを変えた。夜寝る前に恋話に花を咲かせていた時、有紀子1人上の空だったのを見て、そう思った。
陸の思い出が亡霊の様に憑いている。そう思った加奈子は、それからというもの、どの男子が有紀子に好感を持っているかなどを仕入れて、背中を押そうとする。
元々外交的な性格でもない有紀子は躊躇したが、それでも加奈子は話す機会を設けたりして、進展するか様子を見た。有紀子は観察されているみたいで少し嫌だったが、同時に、加奈子は調整役としての資質がある、と感心した。
「はぁ」
有紀子はため息をついた。加奈子は楽しそうだった。やる気満々だ。少し顔が良ければ、必ず奨めてくるだろう。お眼鏡に適ったのなら、自分で付き合えばいいのに、と有紀子は思った。
(ああ、大学生の彼氏いるのか)
女子から見れば、男子はいつまでたっても子供に見える。特に中学生くらいは、本当男子はバカだった。今はさすがに体格差も出たし、頭の中も成長しているけど、大学生には敵わないのだろうか。男友達の多い加奈子であるが、話している様子を見ていると、男子の1個上にいる感じがする。
高校生になると、殆どの女子は、対等か少し下から目線で男子と話す。それか一歩退いた感じで話す。だが、加奈子は男子との距離が近い。時々あなた男子ですか? と思うほどだ。しかも上から目線。
卒業したら大学に進学するのだろうか。それとも親の経営する小さな会社を継ぐのだろうか。そうか、会社の跡取りだから、上から目線で人と接することに慣れているのか、と有紀子は妙な納得をした。
外で就職すれば、加奈子は女性管理職として活躍するのだろう。有紀子は、私の恋路が彼女の成長の糧にされている、と悟る。諦観の念混じりに。
(見返りにクレープをおごらさせてやらねば)
有紀子は、ふと甘い想像に浸る。
(いや、アイスか? ケーキか? それとも全部か?)
幸せそうに頬が緩む有紀子の頭の中に、転校生のことは微塵もない。ただただスイーツが渦巻いていた。
0
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる