愛するということ

緒方宗谷

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13.陸の性格 

2.思春期

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 知恵のことは誰も知らないだろう。坂本知恵16歳。一学年下の後輩だ。仲が良い女子の中では小っちゃい方だが、なんかこう、陸にとって一番ムズムズする女の子。
 別に何か特別な関係にあるわけではない。期待していないわけではないが、彼女との関係は発展しない。向こうは自分に気がある、と気が付いている。だが、陸は躊躇していた。関係を進展させようと思う度に、有紀子の顔が浮かぶからだ。
 でも実は有紀子が嫌いだ。陸は、有紀子のオドオドしたところが大嫌いだった。実際オドオドしていないのだが、妙に目につく。何故か彼女に対して、色々な衝動がひっきりなしにやってくる。だが、同時に心が贖罪に苛まれる。
 みんなは女子に対してどう思っているのだろう。小栗と寺西はエロいことを考えているから、俺とは変わらないはずだ。そう言えばいつからだ? 僕というようになったのは。陸は東京に戻ってからだと思いだした。
 軽い車酔いのような感覚が嫌だ。昔だったら、もっといろいろ吐き出せたのに、と思う。イライラする。
 知恵と初めて出会ったのは、そんな時だった。もともと脳波の乱れから、陸は情緒不安定なところがあった。脳波が治ったことで、以前の自分の感情と今の感情の違いが際立つにつれて、わけの分からない放浪に出かけるようになった。
 陽が暮れたばかりの繁華街は、今さっきまでの装いとはうって変わって、魑魅魍魎がビルの狭間で蠢き始める。
 陸の耳に、聞き慣れない女子の声がした。
「先輩? 上条先輩ですよね?」
「え? 誰? 1年?」
 2人の最初の出会いは偶然だった。知恵は友達と2人で遊んだ帰りだったが、一緒にいた奈美恵にバイバイをして、陸と一緒に歩いた。ギャル系とまではいかない。でも少し軽い感じがする。
 陸は少し戸惑っていた。初対面なのに距離が近い。知恵は、何の躊躇も遠慮もなく腕を絡めてきた。胸の柔らかさに、体が火照ってきた。フルーティな香りがする。あまり高価な香りではない。いい意味で彼女に似合っていた。
 陸は、知恵といる時が一番自分らしい、と思った。
 俺は良い奴なんかじゃない。みんな殴ってやりたい。昔だったら少し強引に瞳を合わせたかもしれない。実際無理に迫ったりはしないけれど、唇くらい軽く重ねることは間違いない。多分、知恵なら親密に接してくれる。
 陸は衝動と理性の狭間で揺れ動いていた。


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