愛するということ

緒方宗谷

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21.島根隆弘と水野彩絵

2.森に住む女の子

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 美由紀は、彩絵と島根のなれ初めを思い出していた。確か彩絵を連れて大学周辺のお店ツアーをしていた時だったはずだ。 
 幾つかのプライベートブランドやセレクトショップを見て、コスメのお店を紹介した。休憩がてら自家製ケーキが美味しいカフェに入って、ファンシーグッズのお店を見て回った。
(そうだ、確かバックチャームのお店に入った時だ)美由紀の脳裏に映像が浮かぶ。
 彩絵は、ダイヤの様に細かくカットされたガラスで作られた派手な色使いの猫のバッグチャームを買おうとしていた。美由紀は毒々しくて彩絵に似合わないと言ったが、彩絵は買うと決めて言うことを聞かない。ロリからの脱皮を図るのだと言う。大学デビューする気でいたようだ。
 説得を諦めて外に出てた美由紀が、会計を済ます彩絵を待っていた時に、偶然島根が通りかかった。
 その時美由紀は、沙絵と島根2人のめぐり逢いが特別進展するとは微塵も思わなかった。講義の時に座る席がいつも近いので、よく話す間柄だったから、彩絵を待つ時間、美由紀は彼に声をかけて、今度飲みに行こう、と飲み会の相談をしていた。
 島根にしても用事があったから、ちょっとした立ち話で終わらせる予定でいた。お互い恋人がいたから、友達以上になる可能性など考えていない。会話のキリが良いところで、島根が話を手仕舞おうとした時、お店の中から女の子が出てきた。
 初めは気に留める様子も見せなかった島根であったが、女の子が美由紀の隣にぴったりとついて、こっちを見ているのに気がつくと、妙に感興をそそられた。
(140cm位〈実際は136㎝〉だろうか、近藤さんの親戚だろう。もしかしたら、一番下の妹かもしれない)島根はそう思った。
 上手いところで島根は美由紀との話を切り上げて、女の子に向き直り言った。
「あ、同じ大学の島根隆弘です。初めまして」
「初めまして、今度後輩になります、水野です」
 島根は、(後輩? ……なるということは大学のという意味か? ということは18歳。信じられない、びっくりだ)
 そう思って言った。
「え? 後輩? 後輩って言うと、何の後輩?」
「もちろん大学ですよー」
 沙絵はクスクス笑いながら、“冗談よしてくださいよ、もー”といった風におどけて、右手のひらで空を切って風を起こす。
「それじゃあ、18歳⁉ マジで? ちっちゃい」
 島根はとても興奮した。こんな可愛い子を見たことが無かった。

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