愛するということ

緒方宗谷

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28.陸と知恵、急接近 

2 知恵の思考 ~冬休み明け~ 

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 私は先輩が好きだ。十字路でキスとした後、私達は国分寺に戻った。先輩は私の手を力強く握ってくれていた。どこに行くんだろうなんて考えない。どこにでもついていける。繁華街の喧騒も目や耳に入らない。先輩のことしか見えなかった。
 クリスマスは2人で過ごせた。都心の有名なイルミネーションを見に行った。昼間は映画を見てご飯食べて、陽が暮れるまで遊んで、点灯した何十万球からなる光る幻想の世界の中2人で過ごした。綺麗だったな。その後休憩して帰った。
 電車の中では、ずっと手を握っていてくれた。手袋ごしが不思議な感じ。いつもは都心と家との移動は長いと感じているけれど、今日は短すぎ。電車停まっちゃえばって思った。
 冬休みが終わって3学期が始まると、私達は堂々と一緒に帰るようになった。友達は、ついに先輩を落としたのかってびっくりしている。「そうよ」って自慢したけど、本当は私が落とされたことは秘密。
 先輩はとても優しくて、私はどんどん好きになっていく。渡辺有紀子と別れたから、寂しくて私を求めてるってちょっと思っている。それでもいい、体だけが目当てでも私はいいよって思ったけど、先輩はあんまり求めてこない。
 前と違ってゲーセンやカラオケにはあんま行かなくなった。いつも速攻で休憩する。いつもだから、何度か友達に見られて、ヒソヒソ噂された。でもいいの。していないのは2人だけの秘密。
 私って、愛する女の才能あるかも。今この建物にいる人達は、みんな恋人同士のはず。Hしに来ているはずだし、私達が遊んでいる部屋にもダブルの大きなベッドがある。それなのに、こんな気持ちで先輩と一緒にいられるなんて、私ってすごい。超母性強すぎ。
 ここってオプションが多すぎて、遊び場って感じ。実際そう使っているから、変な雰囲気にならないのかも。ドリンク飲み放題、映画見放題、マンガ読み放題って、ネットカフェと同じじゃん。
 あーあ、なんでもっとオープンなところじゃないんだろう。オープンなら奈美恵達と遊びに来てすっごい騒ぐのにな。でもいいの。こういうとこだから、先輩としか来ない特別な場所になるだもん。
 先輩はHなことよりも、私とどこかに行きたいみたい。2時間ある休憩中、大抵カラオケしていたけど、たまに旅行雑誌を持ってきて、2人で旅の話に思いをはせる。
 たまに急にいい雰囲気になることがあって、そういう時は、何か悲しそうで、めちゃくちゃに壊れてしまいたいんだと思う。私もそういう時があるから分かる。
 学校はやなことが多すぎる。なんかこう、人間関係が面倒くさい。幾つかのグループがあって、どこかに属していないと生きていけない感じ。授業の関係で、即席のグループが出来ることがあるけど、ホント疲れる。私もだけど、みんなけん制し合ってさ。顔には出さないけど、たまにトゲが紛れている感じ。
 前は本当ストレスだったけど、今は全然大丈夫。そういう時は、先輩にギュッて抱きしめてもらうから。そうしたら体の中のストレスの塊が潰れる感じがする。だからみんな抱き合うんだ。
 男はただエロいだけだと思っていた。中学の時の彼氏は、デートの度に遠回しにそっちの方に展開しようとあれこれしているのが見え見えで、ムカついた。エロいことしか考えてないの? って思った。私は考えていないのに(当時)。
 春休みはどこに行こうかな。先輩は、私といっぱい思い出を作りたいって言っていた。私も先輩との思い出を作りたい。お泊り旅行がいいけれど、日帰りでもいいや。その代り毎日行きたい。
 
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