愛するということ

緒方宗谷

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36.近藤美由紀の悩み 

3.浮気

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「でもさ、一途なわりに、浮気男ばかりに引っ掛かるじゃん」
 美由紀は、(浮気はお互い様だけど)と思いながら、愛ちゃんの恋歴を指摘すると、愛ちゃんはニッコリとして、「私はワザとだもん。私はそういう風にできてるから、そうしてるの」と言う。
 言っていることがおかしい。昔から浮気されて大喧嘩になったことがよくある子だ。しまいには暴力を振るわれて泣くことすら度々あった子だ。にもかかわらず、アッケラカンとしてワザとだと言い張っている。
 愛ちゃん曰く、
「だってさ、いい男なんだもん。いい男がモテるのって当たり前じゃん」
「でも浮気されてるんだよ」
「彼にヤられてもいいって女が多い証拠だよ、モテる証明」
 なぜ浮気男を擁護するのだろうか。浮気されるのは嫌なくせに、浮気男ばかりと付き合って、挙句の果てに浮気した彼氏を擁護している。それでニコニコして私を見ている。
(私だったらぶっ殺す)と美由紀は思った。
 何かに気が付いた愛ちゃんが、素っ頓狂にケラケラ笑いだした。
「よく人の浮気の話で怒れるよね、だって、だって、自分は特定の男と付き合ってすらないじゃん? 浮気男どころじゃないよ、あはははははは」
 こんな調子で度々笑い転げる愛ちゃんは、しばらくこの間聞いた美由紀のセックス列伝を掘り返して、重ねて笑い転げ続けた。そしてよじれるお腹を抱えて最後に一言言った。
「美由っちは、浮気男のDNAを受け継いでいるんだね、きっと。だから、私は美由っちが大好きなんだ。今度私の事抱いてよ、ねー抱いてよー」
 愛ちゃんは、ゲラゲラゲラゲラ、大声で笑いながら美由紀を抱きしめて、ほっぺにチュッチュッした。
「美由っちの子供はモテるんだろーなー、早く生んでくれれば、私が初めてを食べちゃうのに」
 まだ笑っている。だが、美由紀は気が付いた。それは良いかも、と思ったのだ。自分が浮気をされるのは嫌だ。友達の愛ちゃんを裏切って浮気する男も嫌だ。だが、浮気する息子は許せる。
 愛ちゃんは可愛いし、スタイルも良い。一緒に温泉に行ったことがあるが、小玉スイカみたいな胸をしていて、お尻も程良くふんわりしている。くびれもすごい。やせすぎず美味しそう(食べるという意味で)な体つきをしている。
 自分の子供が沢山の女の子にもてるのは良いかも、と思った瞬間、数撃ちゃ当るの戦略が男の物だけではないことに美由紀は気が付いた。自分が浮気されるのは嫌だが、息子は浮気が出来る男でいてほしい。
 社会がどうのとか、法律がどうのとか、道徳がどうのとかではない。繁殖能力がどうのという意味でだ。

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