愛するということ

緒方宗谷

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46.作戦コード

1.思考回路

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 明くる日、里美を見つけるなり駆け寄ってきた加奈子は、里美に顔を寄せて満面の笑みで言った。
「『偶然ばったり、あれ? 2人は? いなくなっちゃったね、僕たちだけになちゃったね作戦‼』」
「却下‼」
 里美にバッサリと切り捨てられた加奈子は嘆く。
「何故⁉ 何故なの⁉ 昨日寝ないで考えたのに‼ さっちゃんがつけた作戦名より断然いいよーう」
「そんなアホなことに一晩使ったの? バカなんだから」
「うぐ、さっちゃんは見た目通りキツイのね」
 休み時間にそれぞれトイレに行くふりをして教室を出て廊下で合流した2人は、作戦名を話し合いながら、屋上に出る扉の前まで上ってきた。
 真下は視聴覚室なので誰もいない。ここなら誰にも話を聞かれずに作戦を練れる。有紀子と陸にばれたらまずかったし、知恵にばれて阻まれてはもっとまずい。
 階段に座った加奈子は、腕を組んで目を瞑り「うーん」と唸る。「どうしようかなー」
「まずは私が陸君を誘うわ」
「ん? そうじゃなくて、作戦名、さ・く・せ・ん・め・い‼ 
 決めなきゃ様にならないでしょ?」
 里美は呆れて言葉を詰まらせた。
「作戦名なんてどうでもいいでしょ⁉ 私達、別々に予定を組んで途中で合流しなきゃならないのよ? お互いどういう経路をたどって何時にどこどこで偶然落ち合うか決めないと」
「それも大事だけど、いつか種明かしする時に、ナニナニ作戦って言えた方がいいじゃん?」
 話が前に進まなくてもどかしい里美は、イライラしながら続ける。
「分かったわよ、作戦名『未定』! 作戦名は『未定』で決定‼」
「ヤダよ、そんなの。作戦名! まずは作戦名から決めるの」
 里美は大抵リーダー的存在としてのポジションにいるから、こんなにも言うことを聞かない人といることは滅多にない。
「あっ」と閃いたふうの表情を見せた加奈子が、笑顔を振りまいて里美に言った。
「そうだ、さっちゃん、マラソンの走り方教えてよ」
「今関係ないでしょう?」
「あるある、私達友達になったんだから、上位に食い込む秘訣を教えてほしいの。まずは私達の親睦から深めようよ」
「私達家が遠いから、学校でしか話せないのよ! どこかのお店で落ち合おうかしら?」
「さっちゃんは、何が好きなの?」
「何がって……」
「食べ物、最後にみんなで食事するでしょ?」
「話が散漫過ぎ! 全然話し合いにならない! まずはどこで合流するか‼」
「うーん、じゃあ作戦名から決めようよ」
 振り出しに戻った2人は、この日一日作戦名を考えていた。

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