174 / 192
54.高知
4.加奈子の勇気
しおりを挟む
「私は……私は……」
加奈子はためらった。有紀子は完全にあきらめている。自分が頑張らなければ、真相はあやふやなままだ。
有紀子は陸を信じていたが、加奈子は信じなかった。自分の境遇があるから仕方がない。それに、自分と同じく有紀子も信じていないとも思っていた。自分が納得するために真相を確かめたい。それが主目的である。だが、有紀子が信じて陸の胸に飛び込んで行けるようにもしてあげたい。加奈子は複雑な心境だ。
加奈子は意を決した。
「っっ私っ――、…バイセクシャルなんだと思う、多分。そうなんだと思う。もしかしたらレズビアンかもしれないけど、何だか分からないんだけど。
陸君は私のことを好きだって言ってくれたの。でもこの子が陸君を好きなんだ。でも私はこの子のことが、有紀子のことが好き。だからどうしても真相が知りたくてここまで来たの」
立ち止まった大葉は振り向いて、静かに目を逸らさずに聞いていた。
加奈子が続ける。
「私は、大好きな有紀子をひどいヤツなんかに渡したくない。それに私自身の為にも、ひどいヤツと友達でいたくない。私、一瞬でも陸君に憧れをいだいたことを後悔したくないの」
陸への憧れ。それはどういう意味だろうか。有紀子は初耳だったから、陸のことが好きなのだと思った。複雑な気分だ。
(私にとって、加奈は陸を取り合うライバル? そして、陸君にとって、私は加奈子を取り合うライバル?)
しかもそれぞれ幼馴染と親友だ。
加奈子の話は続いていた。
「この心のモヤモヤを解消して、私達の関係を前進させたいの。どういう形か分からないけれど……」
大葉が、静かに唇を開いた。
「向こうの公園に行こうよ」
大葉はそう言って2人を案内した。3人は、自動販売機でそれぞれジュースを買って、公園のベンチに座る。有紀子はミルクティー、加奈子はカフェラテ(もちろん有紀子のおごり)、大葉はミルクセーキだった。
ベンチに座った大葉は、缶を両手で持って、ももの間でゆっくりと左右に回しながら、唐突に話し始めた。
「中学の時さ、俺……、僕、みんなにいじめられてたんだ」
短くも長く感じられる沈黙が流れた。
「僕、なよなよしていて女の子みたいでしょ? それで、みんなにからかわれてたの。
みんな、僕のこと変態だって言って、……実際は別の差別的な言葉だったんだけど、いつも言葉で責めんられていたの」
淡々と話すが、内容は壮絶なものだった。トイレの水を飲まされたり、雑巾で顔を拭かれたり、本当にひどい内容だ。
「みんな、イジメに加担するか、知らんぷりするかのどちらかだったんだけど、陸君だけは普通に話してくれたんだ」
有紀子にとって、陸は想像通りの陸だった。
加奈子はためらった。有紀子は完全にあきらめている。自分が頑張らなければ、真相はあやふやなままだ。
有紀子は陸を信じていたが、加奈子は信じなかった。自分の境遇があるから仕方がない。それに、自分と同じく有紀子も信じていないとも思っていた。自分が納得するために真相を確かめたい。それが主目的である。だが、有紀子が信じて陸の胸に飛び込んで行けるようにもしてあげたい。加奈子は複雑な心境だ。
加奈子は意を決した。
「っっ私っ――、…バイセクシャルなんだと思う、多分。そうなんだと思う。もしかしたらレズビアンかもしれないけど、何だか分からないんだけど。
陸君は私のことを好きだって言ってくれたの。でもこの子が陸君を好きなんだ。でも私はこの子のことが、有紀子のことが好き。だからどうしても真相が知りたくてここまで来たの」
立ち止まった大葉は振り向いて、静かに目を逸らさずに聞いていた。
加奈子が続ける。
「私は、大好きな有紀子をひどいヤツなんかに渡したくない。それに私自身の為にも、ひどいヤツと友達でいたくない。私、一瞬でも陸君に憧れをいだいたことを後悔したくないの」
陸への憧れ。それはどういう意味だろうか。有紀子は初耳だったから、陸のことが好きなのだと思った。複雑な気分だ。
(私にとって、加奈は陸を取り合うライバル? そして、陸君にとって、私は加奈子を取り合うライバル?)
しかもそれぞれ幼馴染と親友だ。
加奈子の話は続いていた。
「この心のモヤモヤを解消して、私達の関係を前進させたいの。どういう形か分からないけれど……」
大葉が、静かに唇を開いた。
「向こうの公園に行こうよ」
大葉はそう言って2人を案内した。3人は、自動販売機でそれぞれジュースを買って、公園のベンチに座る。有紀子はミルクティー、加奈子はカフェラテ(もちろん有紀子のおごり)、大葉はミルクセーキだった。
ベンチに座った大葉は、缶を両手で持って、ももの間でゆっくりと左右に回しながら、唐突に話し始めた。
「中学の時さ、俺……、僕、みんなにいじめられてたんだ」
短くも長く感じられる沈黙が流れた。
「僕、なよなよしていて女の子みたいでしょ? それで、みんなにからかわれてたの。
みんな、僕のこと変態だって言って、……実際は別の差別的な言葉だったんだけど、いつも言葉で責めんられていたの」
淡々と話すが、内容は壮絶なものだった。トイレの水を飲まされたり、雑巾で顔を拭かれたり、本当にひどい内容だ。
「みんな、イジメに加担するか、知らんぷりするかのどちらかだったんだけど、陸君だけは普通に話してくれたんだ」
有紀子にとって、陸は想像通りの陸だった。
0
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
某国王家の結婚事情
小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。
侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。
王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。
しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。
幸せな番が微笑みながら願うこと
矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。
まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。
だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。
竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる