FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第八話 提案

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「成瀬」
 急に後ろから声をかけられた奈緒は、ビクンと身を震わせた。振り返ると、野球部部室と表札の出たプレハブ小屋と倉庫の間に、魚子と暖乃がいる。逃げようとして校舎を振り返るが、もう一度魚子に呼ばれて、動けなくなった。固まっていると、またも名前を呼ばれて、おずおずと建物の隙間に歩みだす。奥にはかおりもいた。
 二メートル程度の間隔をあけた倉庫と部室の隙間は、校庭側からも校舎裏からも陰になる。線路に面した敷地の端には植え込みがあって、車窓やその向こうの民家からはほとんど見えない。唯一、校舎の窓から丸見えであったが、その窓は階段の踊り場にある窓で、生徒の身長では外をのぞくことは不可能だったから、事実上ここは陸の孤島であった。
 暖乃の声が木霊する。
「ちょっと早くしてよ。お昼休み、1時間しかないんだよ。わたしたち、まだおべんと食べてないんだから。それに、助けを探したって無駄。すぐに教室に戻らなくても、あんたのことなんて、どうせ一時半まで誰も気がついてくれないんだからさ」
 奈緒の表情は不安でいっぱいになる。右足を引きながら完全に建物の陰に入ると、腕を組んで倉庫の壁に寄りかかっていた魚子が言った。
「杏奈になに言ったの?」
「なにも言って ないよ」奈緒が探るように答える。
「なにも言っていないことないでしょ。あれだけ長いこと話していたのに」
「わたしは、 しんたい しょうがいしゃだ か ら、いろいろたすけに なってください ます」
 急に暖乃の顔が険しくなった。
「あー、やだなぁ、弱者づらして、ほんといやになる」
 それを聞き流して魚子が口を開く。
「あのさ、あたしたちがいじめてるって勘違いしてない?」
 そう言われた奈緒は口ごもるが、ブレイズを揺らしてまくしたてる。
「あたし、注意してるだけじゃん。よだれ垂らしているよ、とか、杏奈に迷惑だよ、とか。なにかされたって言うなら言ってみてよ」
 暖乃が頷く。
「これ以上言われたら、涙出ちゃうよ。こっちがいじめられてるみたい。だってさ、わたしたち手を出したわけでもないし、なにか盗ったわけでもないし、本当になんにもしてないよね?」
 
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