FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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 一削りするたびに、奈緒の口から愚痴が漏れる。
「いいじゃない。だって。右手。使えないん。だから。ふんだ。かすが。出るわよ。削ったら」
 先週までこの子は、鉛筆が折られるたびに教室で削っていたが、削りかすが出ることをあまりにも繰り返しなじられるので削れなくなっていた。
 削り終わるとジップペンケースをひっくり返す。机に転がり出た消しゴムは二つにむしられていたので、大きいほうだけを中に戻して、小さいほうは引き出しに入れた。
 いじめの痕跡を消せるだけ消し終えると、ベッドに仰向けに寝転がって、大きなため息をついてから、どこを見るわけでもないような虚ろな瞳で宙を見やる。顔は、焼いている途中で熱から遠ざけられたおもちのように弛緩していて、表情はない。
 ふと我に返って呟く。
「だいじょうぶだよ、わたし。ね、わたし」
 嫌なことを何もかも忘れるには短すぎるほんの少しの時間。たとえそれが無意味な時間であったとしても、奈緒は微かな希望の色を頬に浮かばせながら、しばしの眠りにつく。
 微かに聞こえる鳥のさえずる声で目を覚ますと、「勉強しなくちゃ」と呟いて、机へと戻った。そして、今日の授業で習った個所を、しどろもどろながら音読していく。
 水曜日の今日は、体育が一時間目にあったから、教室へ戻ってくる合間に鉛筆は折られていて、二時間目以降の授業でノートはとっていなかった。そこで奈緒は、思い出すように首を何度も傾げるそぶりを見せて、ノートに何やら書き出していく。先生が黒板に書いたものとはだいぶ違ったが、自分なりに要点をまとめたメモだった。
「よし、うまくできたぞぅ。この調子だ もんね、頑張るぞぅ」
 可愛く片手でガッツポーズをとって、満足げに微笑む。
 明るくも悲しい声が響く部屋は、優しく少女を見守っていた。
 




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