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一年生の二学期
第十六話 母親との会話
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奈緒が、多くの読み違いや意味不明な発音を挟みつつ独り言をさし入れて読み進めていると、階段を上ってくる音がしてノックが鳴った。
「はーあーいー」
この子が返事をすると母親が入って、どことなく切なげな微笑みを浮かべる。
「あら、お勉強しているのね。今日は学校どうだったの?」
「うん。杏奈ちゃんと遊んだ。あるふぁべっどが むず か しくて、声を出して読んだら、みんなが笑ったから、楽しかった」
「なんて読んだの?」
「ええっと、えー、びー、とぅー、ゆー、いー、あい、しー……あとなんだっけ?」
母親が笑う。そして気がついて言った。
「あら、靴下履いていないじゃない。どうしたの?」
「あ、汚したの。水たまりに落ちた。だからせ ん た く き」
「水たまり? 雨も降ってないのに」
「あった」間髪入れずに答える。
「どこに?」
母親にそう問われて、奈緒は目を泳がせて答える。
「なんか、ここ、こうやって、こうだったから、あったの」
「そう、気をつけなさいね」
「うん、わかった」
母親は、奈緒が開いていた古典のページを見やって膝をつき、この子と目の高さを合わせる。
「難しかったらやめてもいいのよ。無理しないでね。先生が補習もしてくれているし、センターでだってやっているんだから」
「うん、でもいいの。 声を出さずに読む レンシュウ だから」
きょとんとした母親が訊く。
「声出てたけど」
「そうかぁ、もうだめだぁ、やんなっちゃう。出して な い の に、気が つか なかったぁ」
母親が笑う。
「ずっと音読の練習だったものね。だって黙読できないじゃない。集中力が続かなくて、なにかをいじったり、鉛筆や消しゴム転がして遊んでしまって、すぐリハビリにならなくなっちゃうんだから」
奈緒も笑った。
「はーあーいー」
この子が返事をすると母親が入って、どことなく切なげな微笑みを浮かべる。
「あら、お勉強しているのね。今日は学校どうだったの?」
「うん。杏奈ちゃんと遊んだ。あるふぁべっどが むず か しくて、声を出して読んだら、みんなが笑ったから、楽しかった」
「なんて読んだの?」
「ええっと、えー、びー、とぅー、ゆー、いー、あい、しー……あとなんだっけ?」
母親が笑う。そして気がついて言った。
「あら、靴下履いていないじゃない。どうしたの?」
「あ、汚したの。水たまりに落ちた。だからせ ん た く き」
「水たまり? 雨も降ってないのに」
「あった」間髪入れずに答える。
「どこに?」
母親にそう問われて、奈緒は目を泳がせて答える。
「なんか、ここ、こうやって、こうだったから、あったの」
「そう、気をつけなさいね」
「うん、わかった」
母親は、奈緒が開いていた古典のページを見やって膝をつき、この子と目の高さを合わせる。
「難しかったらやめてもいいのよ。無理しないでね。先生が補習もしてくれているし、センターでだってやっているんだから」
「うん、でもいいの。 声を出さずに読む レンシュウ だから」
きょとんとした母親が訊く。
「声出てたけど」
「そうかぁ、もうだめだぁ、やんなっちゃう。出して な い の に、気が つか なかったぁ」
母親が笑う。
「ずっと音読の練習だったものね。だって黙読できないじゃない。集中力が続かなくて、なにかをいじったり、鉛筆や消しゴム転がして遊んでしまって、すぐリハビリにならなくなっちゃうんだから」
奈緒も笑った。
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