FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🎀

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「それじゃあ帰りましょうか」
南がそう言うと、それを合図にみんなは立ち上がって、ぞろぞろとリビングを後にする。
「あらあら、もうお帰り? なんのおもてなしもできなくてごめんなさいね」
 大人の女性の声に、みんなが振り返る。
 アイボリーでフォーマルなノーカラーのスーツを着た母親が部屋から出てきて、浅く丁寧に会釈した。短い髪を後ろで束ねていて、キャリアウーマンといった装い。
 ぺこりとした奈緒は、玄関で左足を靴に入れてわきの壁に寄りかかって、
「うんとこしょーのどっこいしょ、うんとこしょーのどっこいしょ、あいよ、あいよ、あいよ」
 と、掛け声をかけながら前屈して、マジックテープをはがして不器用に履いた。続けて今度は、右足を左足の膝の上に乗せる形で交差させて持ち上げ、靴をかぶせてからマジックテープをはがして履く。
「あれ、リュックどこだっけ?」
「背負ってるじゃん」
 慌てた奈緒に、南が教える。
 帰宅の準備を終えた奈緒は、何事もなかったかのように振り返って杏奈を見つめてから母親に視線を移し、笑みを浮かべて大きく口を開いた。
「それで は、ご め ん く だ さいっ」
 うやうやしくお辞儀をしながら丁寧にあいさつをすると、杏奈に「ばいばい」、と手を振って廣飯の邸宅をあとにし、大岡山駅について務と別れた後、旗の台駅で車両から降りた南と春樹に見送られながら言った。
「はい、いってらっしゃい。じゃないね、ごめんください……じゃなくて、  なんだろうねぇ、もういいよね、ばいばい」
 ちょうどそこでドアが閉まった。奈緒は、最後に目的の言葉を一言言えたことにも気がつかない様子で、窓越しに手を振って、離れていくホームに最後まで笑顔を振りまいた。
 この少女は、高校に入学してから初めて、女子高生らしい青春の日曜日を過ごした。中三の冬に病気で倒れてからみても、初めての出来事だった。




 
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