FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第四十三話 諦めと憧れ

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 突然、なんの前触れもなく書道教室の扉が開いた。
「やめて、成瀬さん」
 務が慌てて駆け入り、奈緒の両手を掴んで魚子から引きはがした。
「どうしたの?」杏奈が南に訊く。
「いや、奈緒が鳥羽に襲い掛かった。面白かったよ、その瞬間。見せてやりたかったな」
「塾行く前に見に来てみたら、なんてこと? いったいなにしているのよ、小沢さん、どうして止めないの?」
「いいじゃん、べつに。たまには奈緒もこのくらいのことしたほうがいいよ」
 杏奈に叱られて、ムスッとした様子の南が反駁するのを聞いて、魚子が割って入った。
「いいわけないでしょ。あたしの柔肌が台無しだよ」
 猫のようにフーフー唸って悶える奈緒が喘鳴の合間を縫って、寄り添って肌をさすってくれる杏奈にしゃべり始めた。
「聞いて、杏奈ちゃん。このナナちゃんがひどい。せっかくのダンスのレッスンだったのに、台無しにした。わたしは 一生懸命 やりました。なにを、ダンスを。教えてもらった通りにしたら上手くなれるものだと 思って いました。それ から わたしは、発表会で上手に踊って みんなに褒めてもらうことを 夢 見て いました。だからこそ、ナナちゃんたちのする す ぱ る た にも 耐えれた なのに。なのに騙された。ナナちゃんは、わたしが上手くならないから教えないと 言うの。杏奈ちゃんが、わたしがヒロインになれると言ったから頑張った。でも本当は無理なのでしょうか」
 砕けたガラスが溶けゆくように、震わせる瞳を大粒の涙でいっぱいして、杏奈を見る。
 揺蕩う瞳の先の少女が言った。
「ううん、そんなことないよ。すごい上達してる。それはわたしが保証する」
「でも、だって……でも、だって……」
 嗚咽を繰り返して言葉が出ないのか、奈緒は息を止めて歯を食いしばる。杏奈は、務が用意した椅子に抱擁したこの子を座らせて後ろを振り返った。
「ナナ、なにがあったか説明して」
「成瀬が急にフロアやりたいって言いだして、あたしら、右半身が動かないんだから危ないからよしたほうがいいよって言っただけ。だって失敗して受け身とれない右側から床にたたきつけられたら大変でしょ。脳の病気だっていうのに、頭ぶつけたらシャレにならないじゃない。あたしら責任取れないし」
「ねぇ」と魚子から同意を求められて、暖乃とかおりが頷く。







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