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一年生の二学期
第三十四話 奈緒の実力
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淀みのないひんやりとした空気に満たされた七階の廊下は、人に汚されたことのないバージンロードがごとく伸びていた。黒い窓枠に囲まれたガラス張りの廊下は静まり返っていて、鍵を開ける小さな音すら大きく響く。
「あーあ、どうしてこういうことになるかなぁ」
魚子が背伸びをしながら言うと、暖乃が、迷いもなく窓際へと向かうかおりの背中を目で追いながら答える。
「わたしたちだけでいいのに、なにも動けない人混ぜなくても。うちらがやってるのブレイクダンスだよ。お遊戯じゃないんだからさ」
「まだ幼稚園児のほうがましだよ。トップロック教えればすぐできると思うし、六歩とかだってすぐだよね。それに対して――」
言葉を間延びさせた魚子が、四番目に入ってきて生徒用の机と椅子が並ぶ何もない大スパンな書道教室を見渡す奈緒を見る。そして続けた。
「――それ、右足動いてんの?」
「動 きっ ませんっ」
この子が、やじろべえみたいに振り向いて言った。
大きなため息をついてブレイズを旋回させた彼女が、黒板横に置かれた教師用の机にリュックを置いて、振り向く。
「なんで、小沢までいんの?」
「奈緒がいじめられないか見てようと思って」いがぐりが鼻先を向けた。
「だからいじめてないって言ってるじゃん」暖乃が肩のアイソレーションをしながら答える。
「そんなに気になるんだったら、小沢がする?」魚子が腕を組んで首を傾け、「あたしら別にいいよ、変わってあげても。小沢と成瀬でやんなよ」と突き放した。
南がムッとしながら言い返す。
「なに言ってるの。ダンスやってるあんたたちの仕事でしょ。引き受けたからには最後までやんなさいよ」
「引き受けてないよ。無理やりそうなったんだから。成瀬がいなければ別だけど」
「先生の話聞いていて、まだそんなこと言うの?」
「成瀬を排除しようって言うんじゃないよ。あたしらが抜けるって話。教えてはあげるから、二人でやれば?」
「ほんと、それがいいかも」暖乃が手を叩いて三人を見た。「だって童謡だよ。しかも一つアニメソング入ってるし、幼児向けのやつ。成瀬可愛いから、小沢と二人並んで2ビートで揺れながら歌えばいいんじゃん」
「あーあ、どうしてこういうことになるかなぁ」
魚子が背伸びをしながら言うと、暖乃が、迷いもなく窓際へと向かうかおりの背中を目で追いながら答える。
「わたしたちだけでいいのに、なにも動けない人混ぜなくても。うちらがやってるのブレイクダンスだよ。お遊戯じゃないんだからさ」
「まだ幼稚園児のほうがましだよ。トップロック教えればすぐできると思うし、六歩とかだってすぐだよね。それに対して――」
言葉を間延びさせた魚子が、四番目に入ってきて生徒用の机と椅子が並ぶ何もない大スパンな書道教室を見渡す奈緒を見る。そして続けた。
「――それ、右足動いてんの?」
「動 きっ ませんっ」
この子が、やじろべえみたいに振り向いて言った。
大きなため息をついてブレイズを旋回させた彼女が、黒板横に置かれた教師用の机にリュックを置いて、振り向く。
「なんで、小沢までいんの?」
「奈緒がいじめられないか見てようと思って」いがぐりが鼻先を向けた。
「だからいじめてないって言ってるじゃん」暖乃が肩のアイソレーションをしながら答える。
「そんなに気になるんだったら、小沢がする?」魚子が腕を組んで首を傾け、「あたしら別にいいよ、変わってあげても。小沢と成瀬でやんなよ」と突き放した。
南がムッとしながら言い返す。
「なに言ってるの。ダンスやってるあんたたちの仕事でしょ。引き受けたからには最後までやんなさいよ」
「引き受けてないよ。無理やりそうなったんだから。成瀬がいなければ別だけど」
「先生の話聞いていて、まだそんなこと言うの?」
「成瀬を排除しようって言うんじゃないよ。あたしらが抜けるって話。教えてはあげるから、二人でやれば?」
「ほんと、それがいいかも」暖乃が手を叩いて三人を見た。「だって童謡だよ。しかも一つアニメソング入ってるし、幼児向けのやつ。成瀬可愛いから、小沢と二人並んで2ビートで揺れながら歌えばいいんじゃん」
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