FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第四十八話 開演 

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 闇夜に響く微かな虫の音のように囁いていた観客が、一気に静まり返る。そして幕が上がった。体育館前方にあるステージの上に視線が集まる。三本のスポットライトの光の筋が舞台の中央で交わっている。
 そこには、中央にマイクスタンドが一本だけあって、奈緒一人が立っていた。深々とお辞儀をすると、ゆっくりとしゃべり始める。
「令和三年一月、わたしは旗の台の病院で、脳梗塞、くも膜下出血、そ し て 生まれつき動脈と生脈の間に 異常な直接連絡 の ある、動静脈奇形から、出血で、十五時間の手術を受け、十日間、意識 不明 でした。先生が危ないと言ったので、お母さんは三日間病院に泊まりましたと言います。それからわたしは、養育院と清瀬の病院で、一年と三ヵ月入院していました。
 脳梗塞は、脳の血管が詰まります。くも膜下 出血は、脳と膜の間で出血が 起こり ます。そして、動静脈奇形 は、動脈と静脈とが毛細管を へること なく、直接に結びついてしまっている、出来損ないの 一種 です。動脈は、血液を心臓から、からだじゅうに運ぶ 血管です。静脈は、からだの各 部から、血液を心臓に 運ぶ血管です。これは、手足の運動を支配する中枢のある脳の表面に多く、このため痙攣がおこったり、手足の動きが悪くなったり し ま す。時には出血して、脳出血と同じ症状を 示します。
 一年と三カ月入院して、今度は通院です。そして済むと、板橋の病院で、そして近所の“病院クリニック”でおせわになっております。
 なんど、つまづいたか、わからないけれど、転び ました。だんだん足も丈夫になってきて いるの ですが、また転び、骨折しました。そしてまた転び、骨折はなかったけれど、とてもとても いたかったです。ここ最近はゆっくり歩いて、つまずきがあっても転びません。
 わたしは意識が戻っても 声が 出ません。やっと声が出るようになっても、言葉が、ぜんぜんわからなかったけれど、先生が 言葉で 教えてくださったです。あと、右ききだったのが、“タメ”になったので、左ききになりました。退院しても、ひらがなを れんしゅうして、本を 読まなきゃなりませんけれど、まだよめません。日本の昔話のたった一ページからだけれど、はじめ ました」
 しんと静まり返った会場を奈緒が見渡すと、誰かが手を振った。舞台から見て前面左側は一年A組の列だから、たぶん南だったのだろう。奈緒が頷いて更に続ける。
「清瀬の病院から 板橋区の 病院、そして 近所の 病院、今は クリ ニックになりました に います。クリニックで一年に一度くらいCTをとらせていただくことになっておりますけれど、令和四年五月二十二日、頭がなんびょうか痛くて、六月 三十日も頭がなん びょうか痛かった。なので、旗の台で見て 頂き ました。CTは、異常なかったのですが、脳波は異常があるのだけれど、今までに、けいれんなどなにもなかったので、異常なしでした。――


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