FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第五十三話 カフェのひととき

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 穴倉みたいな北千束駅の改札を出た南は、道路の前に仁王立ちになると左右を見渡す。目の前は二車線道路で、すぐ左にある高架が道路に影を落としていたが、反対に右側の道路は燦燦とした日差しに照らされていて、同じ場所なのにずいぶんとはっきりした光と影のコントラストがついていた。
 しばらくして満足した様子で身体ごと後ろに振り返って、奈緒に話しかける。
「ここが奈緒の街かぁ。なんかのどかな感じでいいね」
「うん。でもなにもない。プチバスケットとナチュラルハイソンがあるだけで、大きなスーパーは隣の駅に行かないとない」
「隣っていったら、杏奈んちがある大岡山か」
「あと、せんぞく。あず急ストアがある」
 高架下へと歩み始めた奈緒に続いて、南も歩き始める。すぐに視界が開けて、雲が散見されるばかりの広い空が広がった。上り坂の長い一本道の左側が民家で右側が小学校だったので高い建物がなく、駅の右に見えたのどかな街並みと同じ風景が広がる。
 しばらくして奈緒が言った。
「ここ」
「どこ?」
 奈緒の見やるほうには、くすんだ木板の塀があって、目隠し代わりに植えられた観葉樹が並ぶ。南が見上げると、打ちっぱなしで、ベランダの手すりに白いスモークの板をはったシンプルでおしゃれなマンションが聳えている。
 観葉樹のわきに立つA型看板を眺めるために、南が腰を曲げて、膝に両手をついた。
「へぇ、隠れ家的。よく見ないと、ぱっと見で気がつかないよ。そばまで来てようやく入り口が見えるほどだし。一瞬マンションのエントランスが奥ばったところにあるんだと思っちゃう。でも扉の左右のガラスから見える店内が、なんとかカフェだって気づかせてくれるかも」
 敷地の端から入口に向かって続く緩やかなスロープを行き、ウッドバルコニーのテラス席を通って、二人は扉の前まできた。そこに設置されたうまく色がなじんだ廃茶色の木製丸テーブルを見やる南を待って、奈緒がドアを開ける。途端、オーソドックスなR&Bが流れてきて、彼女がこっちに振り向く。
 奈緒は、南が手伝って支えたドアをくぐって、店内に入った。
「へぇ、すてき」南が呟く。
 後ろから聞こえる声を聞いて満足げに微笑むこの子は、壁際に並んでいる黄緑色のソファに腰かけて、正方形の茶色いテーブル越しに南を見上げて視線で招く。だが、彼女は、ケーキが展示されたショーケースの奥に視線を走らせてから、天井を見上げて立ち止まる。

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