193 / 838
一年生の二学期
第六十一話 絶滅危惧種
しおりを挟む
翌日の月曜日、南と下校した奈緒は中延駅で降りて、アーケードのある長い商店街の、なかのぶスキップロードを散策しつつ、荏原中延駅側に抜けた。
その間に繰り広げられたこの子の行動を精査して、南が苦言を呈する。
「それにしても、かりんとうに人形焼き買うことないじゃん。一昨日羽鳥たちから散々お菓子もらってたでしょ。そこでもかりんとう食べてたし、わたしからのちょこっとチョコも食べたし、昨日は昨日でショートケーキ食べて、シュークリームまで食べてたじゃない。しかもちゃっかり自分のクッキーまで買ってたでしょ。わたしらと別れたあと、すぐに食べちゃったんじゃないの?」
「いいの。べつばらだから、それに、これは魚の形だから大丈夫」
「変わんないよ」南が、弧を描いて反る鮎の人形焼きを見やって、眉頭を微かに寄せた。
奈緒は、躊躇なく頭をかじって咀嚼開始。
「これから少し歩くから、エネルギー補給。踊った疲れがどっと出たから、食べなきゃいけないの」
「じゃあ、なにも今日、センターの友達のところに行って報告しなくてもいいじゃん」
「友達じゃないよ、六十超えてるから。それにお土産渡す」
「食べちゃったじゃん。
「小分けだから、大丈夫」
「それ口実にして、食べたかっただけじゃん」
「違うからいいの」
二人が昭和通り商店街から住宅街に入って、西中延公園の手前を仲通り方面に向けて楽しくおしゃべりをしながら歩いていた時、公園の出入り口付近に差し掛かったところで、ぎょっと目を見開いた奈緒が絶句して、一瞬強張った。
この子の視線の先には、微笑みかけてくる南の頭の他、その向こうに、二人の女が映っている。おもむろに俯いた片目しか見えないこの少女は、話しかけてくる南の声も聞こえない様子でそわそわしだした。視界に入れたくないのか、体ごと顔を左にそむける。
気がつかない様子の南に、奈緒が小声で注意を促す。
((南ちゃん、静かに。黙って。急ごう))
「は? なんで?」南は普通の声で答える。
いくら言っても南は気がつかない。ああでもない、こうでもない、とかみ合わない二人に、ラウンドフォルムのスクーターにまたがる女と立ち話していた一人が気づいて、顔を上げる。そしてすぐに、ふたえで笹の葉のように鋭い目尻を丸くして声を上げた。
「南? うそマジ、南じゃん」
あからさまにはしゃいで、肩から手首に向かって太くなっていく袖の黒いパーカーがぱたぱた音を立てるほど、激しく両手を振るった。
その間に繰り広げられたこの子の行動を精査して、南が苦言を呈する。
「それにしても、かりんとうに人形焼き買うことないじゃん。一昨日羽鳥たちから散々お菓子もらってたでしょ。そこでもかりんとう食べてたし、わたしからのちょこっとチョコも食べたし、昨日は昨日でショートケーキ食べて、シュークリームまで食べてたじゃない。しかもちゃっかり自分のクッキーまで買ってたでしょ。わたしらと別れたあと、すぐに食べちゃったんじゃないの?」
「いいの。べつばらだから、それに、これは魚の形だから大丈夫」
「変わんないよ」南が、弧を描いて反る鮎の人形焼きを見やって、眉頭を微かに寄せた。
奈緒は、躊躇なく頭をかじって咀嚼開始。
「これから少し歩くから、エネルギー補給。踊った疲れがどっと出たから、食べなきゃいけないの」
「じゃあ、なにも今日、センターの友達のところに行って報告しなくてもいいじゃん」
「友達じゃないよ、六十超えてるから。それにお土産渡す」
「食べちゃったじゃん。
「小分けだから、大丈夫」
「それ口実にして、食べたかっただけじゃん」
「違うからいいの」
二人が昭和通り商店街から住宅街に入って、西中延公園の手前を仲通り方面に向けて楽しくおしゃべりをしながら歩いていた時、公園の出入り口付近に差し掛かったところで、ぎょっと目を見開いた奈緒が絶句して、一瞬強張った。
この子の視線の先には、微笑みかけてくる南の頭の他、その向こうに、二人の女が映っている。おもむろに俯いた片目しか見えないこの少女は、話しかけてくる南の声も聞こえない様子でそわそわしだした。視界に入れたくないのか、体ごと顔を左にそむける。
気がつかない様子の南に、奈緒が小声で注意を促す。
((南ちゃん、静かに。黙って。急ごう))
「は? なんで?」南は普通の声で答える。
いくら言っても南は気がつかない。ああでもない、こうでもない、とかみ合わない二人に、ラウンドフォルムのスクーターにまたがる女と立ち話していた一人が気づいて、顔を上げる。そしてすぐに、ふたえで笹の葉のように鋭い目尻を丸くして声を上げた。
「南? うそマジ、南じゃん」
あからさまにはしゃいで、肩から手首に向かって太くなっていく袖の黒いパーカーがぱたぱた音を立てるほど、激しく両手を振るった。
0
あなたにおすすめの小説
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる